家づくりにおける資金計画は、マイホーム購入後の家族のライフプランに大きな影響を与えます。
ただ、住宅を購入する際は、不測の事態が起こった場合の回避策、子どもの教育、自分たちの老後、など、家づくりの資金計画の他にも考えるべきことが山積みです。また、家づくりにおける資金計画は、時間と労力を多く費やしてしまうのが一般的です。
そのためか、ほとんどの方は念入りに資金計画をしません。
しかしながら、これを「確実に行う人」と「人任せにしてしまう人」では雲泥の差が生じます。資金計画は理想のライフプランを実現するための道しるべになるため、これを決めなければ住宅ローンの支払いで悩んでしまうことになるからです。
実際に、住宅ローンの返済に苦しんでいたり、途中で支払えなくなって破産したりする人のほぼ全員が、資金計画を念入りにしていないのが原因です。
そこでこのページでは、家づくりにおける資金計画について、基本的な部分から具体的な資金計画の立て方まで幅広く解説していきます。本記事を参考にしていただき、理想のライフプランを実現してください。
目次
1.なぜ、家づくりの資金計画が必要なのか
家づくりの資金計画が必要なのは、「家族の人生に影響を及ぼすから」に尽きると考えます。
まずは、実際にあった事例を下に、家づくりの資金計画の必要性について再認識していただければと思います。
1-1.家づくりの資金計画が失敗した事例
ここでは、実際に私の知り合い(Aさん)が資金計画で失敗した実例を紹介します。
Aさん一家は、パートをしている妻と共働きをしながら3人の子どもを育てる仲睦まじい家庭です。Aさんは、妻と悩みに悩んで、平成22年6月に念願のマイホームを新築で購入しました。
当時、不動産会社からの資金計画を受け、マイホーム購入をしたAさんは、結果として不動産会社から背中を押される形となりました。
それから6年の月日が経過したある日、Aさんは体調不良が原因で急きょ入院することに。幸いにも命に別状はありませんでしたが、職場に復帰するのは難しい状態に陥ってしまいました。
妻のパート代だけでは、住宅ローンの返済をしていくのが困難だったこともあり、結果、6年後の平成28年11月にマイホームを手離し引っ越しした家族5人は、現在、新たにアパートを借りて生活をしています。
もし、Aさんが資金計画をしっかりと行なっていれば、このような事態を避けることができたでしょう。資金計画では、いかなる不測の事態にも対応できるように対策をしておくことが重要です。
1-2.家づくりの資金計画で重要なこと
家づくりの資金計画で重要なことは、「何が起きても家を守ること」です。Aさんの例ですと、病気で働けなくなった場合の資金計画に落ち度があったことになります。
家づくりの資金計画には、家計に無理のない範囲内で住宅ローンの返済を続けていけることだけではありません。たとえ何が起きたとしても、家を手離さなくて済む対策を取っておかなければ結果としてマイホームを失うことになってしまうからです。
つまり、住宅ローンの申し込み前に自分たちで住宅ローンの返済リスクを確認し、その危険性を念頭に入れた資金計画を立てていかなくてはならないのです。
2.家づくりに必要な資金を学ぶ
家づくりに必要な資金を知るためには、あなたが希望している住宅の種類をあらかじめ決めておく必要があります。住宅の種類とは、注文住宅や中古住宅、建売住宅、分譲マンション、中古マンションなどのことをいい、どれを選ぶかによって必要な資金は異なります。
以下、家づくりに必要な資金を表にまとめてみました。
- 「〇」は、必ず必要な資金
- 「▲」は、ケース・バイ・ケースで必要な資金
- 「-」は、資金不要
資金内容 | 注文住宅 | 中古住宅 中古マンション | 建売住宅 分譲マンション |
---|---|---|---|
仲介手数料 | ▲ | ▲ | ▲ |
固定資産税 都市計画税 | ▲ | ▲ | 〇 |
消費税 | 〇 | 〇 | 〇 |
設計料 | ▲ | - | ▲ |
地盤改良費 | ▲ | - | - |
水道・ガス・電気などの引き込み工事 | ▲ | - | ▲ |
外構工事 | 〇 | ▲ | ▲ |
追加工事 | ▲ | ▲ | ▲ |
検査費用 | 〇 | ▲ | ▲ |
事務手数料 | 〇 | 〇 | 〇 |
つなぎ融資 | ▲ | - | ▲ |
火災保険料 | 〇 | 〇 | 〇 |
登記費用 | 〇 | 〇 | 〇 |
引っ越し費用 | 〇 | 〇 | 〇 |
仮住まい費用 | ▲ | ▲ | ▲ |
家電家具購入費用 | ▲ | ▲ | ▲ |
家づくりにかかる必要な資金をまとめましたが、個人の考え方や契約内容、お住いの地域などによって違いの生じる場合があります。あくまでも目安としてお役立てください。
2-1.家づくりで用意する2つの資金
家づくりで用意する資金は、大きく2つに分けられ、「自己資金」と「借入」があります。本項では、この2つの資金に関するポイントについて解説していきます。
2-1-1.住宅ローンの自己資金(両親や祖父母などからの支援を含む)とは
自己資金とは、家づくりにかかる費用の内、借入をしないお金のことをいいます。よく聞く「頭金」は、自己資金にあたり、自己資金が多い程、望ましいとされています。
また、家づくりにおいて両親や祖父母などから金銭支援を受ける場合もありますが、このような場合は、国で特別な税軽減のルールを設けています。
たとえば、平成29年2月にマイホーム購入のため、父親から500万円の資金援助を受けたとします。このとき、本来ならば、資金援助を受けた500万円は、贈与税がかかる対象になってしまいます。
しかし、「マイホーム購入のため」「父親」などといった一定の条件が揃っていることで、贈与税を納めなくともフルにマイホーム購入に充てられるという大きなメリットが得られます。
ただし、この贈与税の非課税制度を適用するためには、「条件」「順番」「手続き」などといった細かなものをすべて満たしている必要があります。そのため、専門家である税理士や税に詳しいFP(ファイナンシャルプランナー)などへ相談してみることを強くおすすめ致します。
2-1-2.住宅ローンによる借り入れ
家づくりにかかる費用の内、自己資金以外のお金が借入にあたります。いわゆる住宅ローンのことを指し、金融機関によって住宅ローンのサービスが異なる特徴があります。
また、住宅ローンの返済条件によって返済金額がまったく異なる特性もあわせ持っていることから、住宅ローンについて詳しく知っておくことはとても重要になります。詳しくは、以下のコンテンツを熟読してください。住宅ローンの重要なポイントを全て把握することができます。
3.資金計画前の重要な確認事項
家づくりの資金計画の時間や労力を無駄にしないために、資金計画前の重要な確認事項についてここでは詳しく解説します。
まずは、単刀直入に「金融事故履歴がある人は住宅ローンの審査が通らない」ことをご存知でしょうか。これがあると、そもそも資金計画を立てること自体が無駄な作業になってしまうことをあらかじめ知っておく必要があります。
金融事故履歴とは、たとえば、借金をたくさんしたことによる債務整理の履歴や代金の支払いが遅延したことによる信用上の問題のことをいいます。この履歴があるのか、ないのかといったところから確認していかなければなりません。
具体的な確認方法として、信用情報機関(JICC・CIC・全銀協)に対して個人信用情報を取り寄せることで、履歴の有無を確認できます。書類の見方もありますので、心当たりのある人は、住宅購入や住宅ローンに強いFPへ一度相談してみることをおすすめ致します。
なお、夫婦合算でマイホームの購入を検討している場合、夫婦いずれかに個人信用情報の問題が発覚した場合、収入合算ができません。そのため、そちらもあわせて知っておくべきポイントといえるでしょう。
住宅ローンの審査について心配な場合、次の記事をごらんください。基準や審査に通らない人の特徴を把握することができます。
4.家づくりに必要な資金計画の具体的手順
家づくりには資金計画を立てることが重要であることは、すでにご理解できていると思います。ここからは、家づくりに必要な資金計画の具体的な手順について紹介していきます。
4-1.家づくりの大まかな予算を立てる
はじめに、家づくりの大まかな予算を立てるところから始めていきます。
- 新築なのか中古なのか
- 注文住宅なのか建売住宅なのかマンションなのか
- いくらまでなら余裕を持った返済ができそうなのか
上記3つのポイントは、大まかで結構ですので、決めておきたい項目になります。特に「いくらまでなら余裕を持った返済ができそうなのか」といったことを確認しておくだけでも、大まかな予算ができると思って良いでしょう。
たとえば、余裕を持った返済が1ヶ月60,000円だったとして、それを35年間で返したいとなれば、単純計算で2,520万円(60,000円×12ヶ月×35年)といったイメージになります。
4-2.家づくりにかかる「総額」を大まかに把握する
家づくりにかかる「総額」を大まかに把握するには、不動産業者に対して価格を聞いたり、大まかな相場を聞いたり、見積書を作成してもらうなどが効果的でしょう。
モデルハウスに設置している設備などは、かなりグレードの高いものであることが多いです。そのため、同じような家を建てるのに、現実価格を知ってしまう人もこの時点でかなり多いと思われます。
4-3.自己資金の資金計画を立てる
理想の家をお金の余裕を持って建てるためには、どこをどのようにして改善、対策していく必要があるのかこの時点で考えていく流れとなります。
- 手持ちにあるお金でマイホーム購入に充てることができるお金はいくらなのか
- 両親や祖父母からマイホーム購入のための資金援助を受けられそうか
- 両親や祖父母からマイホーム購入のための資金融資が受けられるのか
上記の項目が大まかに定まっていることで、自己資金の資金計画を立てられていることにつながります。同時に、具体的に住宅ローンの融資条件をどのようにしたら良いのか導き出すことができます。
4-4.住宅ローンによる借り入れの資金計画を立てる
最後に住宅ローンによる借り入れの資金計画を立てていきます。「いくらまでなら余裕を持った返済ができそうなのか」といった考え方が住宅ローンの返済で重要になることから、住宅ローンもそのような考え方に合致するような条件で選んでいく必要があります。
一般的に、インターネットを利用したシミュレーションを自分で行う方法もあります。
ただ、不安な場合やわからない場合は、やはりFPや金融機関からシミュレーションしてもらった方が確実だといえるでしょう。
5.資金計画はFPに相談するのが最も正確で効率的
家づくりにかかる資金計画は、FPや金融機関、不動産業者など、今ではどこでも行ってくれます。
このとき、FPは有料、金融機関や不動産業者は無料である場合が多いです。
ただし、誰でも無料の方がよいと考えるのが一般的ですが、「無料は無料なりのサービス」しか受けられない可能性が高いことをあらかじめ留意しておかなければなりません。
住宅ローンは、長期に渡って多額の借金を抱えていくことになります。そのため、家計や将来のことを考えた資金計画と住宅ローンの返済のみを考えた資金計画では、どちらの方がよいか言うまでもありません。
資金計画における「有料」、「無料」の差は、正にこの部分にあります。
そして、「住宅ローンの返済ができなくなって家を手離している事例」が、正にこの部分を証明していると言っても過言ではありません。
たしかに、FPへ有料相談をしたからといって、家を手離さない保証は絶対ではありません。しかし、その可能性が極めて低くなることは確かでしょう。
なお、家づくりにかかる資金計画において必要な書類は、シミュレーションする業者等によって違いがあります。源泉徴収票や確定申告書といった収入を確認できるものをはじめ、前もって資金計画に必要な書類を問い合わせて確認しておくことが大切です。
FPについてさらに詳しく知りたい場合、以下のコンテンツをお読みください。ファイナンシャルプランナーの必要性が手に取るようにわかるようになります。
資金計画の要点とまとめ
家づくりにかかる資金計画が、いかに重要なのか本記事で改めてご理解できたと思います。
できることならば、資金計画の失敗事例を再度見直していただきたいと考えます。「人の振り見て我が振り直せ」ということわざがあるように、家づくりの資金計画を行う上で、これは肝に銘じておきたい重要なポイントの1つになります。
また、「いくらまでなら余裕を持って返済できるのか」といった、返済可能金額を決めておくことも忘れないようにしましょう。
断定的な言い方は避けなければなりませんが、おそらく年収金額から住宅ローンのシミュレーションを算出している金融機関や不動産業者では、「借入可能金額の提示」を「無料サービス」として行っているものと推測されます。
借入可能金額とは、「年収からいくらまでならお金を借りることができるのか?」といった意味合いがあるものです。これは、余裕を持った住宅ローンの返済には「まったく関係のない金額」です。
「借りることのできる金額」と「返していける金額」は、まったくの別物であることを確実に理解しておく必要があります。
家づくりの資金計画は、個人の考え方が反映されることになりますが、安心で余裕を持った住宅ローンの返済をしたい思いは、すべての人に共通していることだと思います。
だからこそ、自分(あなた)は今後どのような選択をすればよいのかを考える資金計画が重要なのです。
本記事の内容がこれからマイホームの購入を検討されているあなたのお役に立ち、充実した人生を送ることができるきっかけになっていただければ幸いです。