土地を購入して、そこに家を建てることを「注文住宅を建てる」といいます。
家の種類には、注文住宅のほか、建売住宅や中古住宅、マンションなど、さらに細かく分けられる特徴があります。実は、これら家の種類によって購入するための手続きやかかる費用をはじめ、お金の支払いタイミングなども異なります。
このとき、あなたの希望をすべて家に反映させるためには、注文住宅を建てる必要があります。
ただ、注文住宅を購入する際の手続きやお金の支払いタイミングなどを事前に知っておかなければ、打ち合わせや契約がスムーズに進みづらいです。最悪の場合、資金調達ができずに、良い土地にめぐりあえても購入できない可能性が高いです。
このような事態に陥らないために、このページでは、これから注文住宅の購入を検討している方むけに、土地と家を購入する際の手続きや支払いのタイミングについて幅広く解説していきます。この内容を前もって知っておくことで、家づくりをストレスなくスムーズに進められるようになるでしょう。
1.土地購入時に支払う費用とスケジュール
はじめに、希望する土地が見つかり、その土地を購入する際の流れについて解説していきます。
少しおせっかいなお話ですが、これから先に進むまでに「資金計画を立てる」「予算を立てる」「金融機関などの情報収集をする」「値引き交渉をする」などについて問題がないかどうかを確認した後、手続きに進むよう心掛けるようにしましょう。
1-1.土地の売買契約を行う際に10パーセント程度の「手付金」を支払う
注文住宅を建てるためには、家の土台となる土地を購入しなければなりません。そして、土地の売買契約を行う際に10%程度の手付金を支払う流れになるのが一般的です。
ただし、ハウスメーカーや工務店が所有している土地の場合、「建築条件付き」であることが多いです、この場合は、必ずしも手付金の10%程度のお金を求められるとは限りません。
つまり、それぞれの業者によって土地の手付金に対する取り扱いが異なるということです。そのため、手付金の目安はあくまでも参考程度にしつつ、取引予定のある業者に直接問い合わせる方が確実です。
1-1-1.土地の売買契約と同時に支払う諸費用
印紙税
土地の売買契約をした場合、売買契約書を作成し、売主と買主の双方が署名、捺印します。そして、この売買契約書には、土地の代金に応じた収入印紙を貼付し割印をしなければなりません。
なお、国税庁では、土地の売買のように不動産の譲渡にかかる契約書に貼付する印紙税について、記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成される契約書において軽減税率を認めております。
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参考:国税庁 土地売買契約書より
たとえば、土地代金が1,000万円だった場合、「500万円を超え1,000万円以下のもの」に該当することから印紙税は1万円必要といった見方になります。
印紙税についてさらに詳しく知りたい場合、以下の記事(コンテンツ)を参考にしてください。
仲介手数料
土地の売主が不動産業者に販売を依頼していた場合、土地の売買にかかる仲介手数料を不動産業者に対して支払わなくてはなりません。
なお、土地の所有者がハウスメーカーや工務店などの場合で、同じ業者で家を建てる時は仲介手数料がかかることはありません。
仲介手数料は、家を建てるための諸費用として大きな金額がかかる場合があります。
そのため、注文住宅を建てる上で土地を所有している同じ業者を選択することで、仲介手数料の削減メリットが得られることも確かです。
1-2.土地の残金の支払いを行う際に、手付金を差し引いた残金を支払う
土地と建物を別々の業者と契約した場合は、すでに土地の売買契約時に支払った手付金が売買代金から差し引かれて充当されることになります。
たとえば、土地の売買代金が1,000万円だったと仮定します。
このとき、売買契約時に手付金として100万円を支払っていた場合、この手付金100万円が売買代金に充当され、残りの900万円を支払うイメージです。
なお、土地の所有者がハウスメーカーや工務店の場合で、建築条件付きの土地を購入した時は、業者と交わした契約書の内容に準じて代金を支払う必要があります。
一般的に家を注文住宅で建てる場合、土地の代金を先に支払う必要があることから、手持資金や金融機関からのつなぎ融資を利用して土地代金を決済する流れとなります。
1-2-1.土地の残金決済時に必要となる諸費用一覧
印紙税
土地の残金決済時に、印紙税は必要ありません。
登記費用
土地を購入した際に必要となる登記手続きには、「所有権移転登記」や「抵当権設定登記」などがあります。
所有権移転登記とは、売主から自分に土地の所有する権利が移転したことを証するために、必要な権利手続きになります。
一方、抵当権設定登記とは、住宅ローンの融資を実行した金融機関などが土地を担保として設定するために必要な権利手続きになります。金融機関から住宅ローンの融資を受けるためには、抵当権設定登記の手続きが必須です。
これらの登記手続きにかかる司法書士報酬のほか、登記に必要な登録免許税などの諸費用を登記費用として併せて支払う必要があります。
ローン借入費用
ローン借入費用として、事務手数料や融資手数料と呼ばれる金融機関に支払うお金は、融資されるローンから差し引かれます。
仲介手数料
土地の購入が「仲介」であった場合には、不動産業者に対して仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料の支払いは、土地代金と共にローンに組み入れる人、現金や預金など手持資金から決済する人などによって、そのタイミングが異なります。
これに関しては、仲介手数料を支払う不動産業者に聞くのが確実です。
税金などの清算金(固定資産税や都市計画税など)
土地には固定資産税や都市計画税といった税金が課されますが、売買の際、不動産業者から所有権が移転することになります。そのため、所有期間によって按分するのが一般的です。
そして、税金の納付トラブルを防止する上でも、未納の固定資産税や都市計画税について先に清算するのが一般的です。
1-3.土地には消費税は課税されない
消費税法という法律では、土地に対して消費税を課さないこととしています。そのため、別途、多額の消費税を負担する必要がありません。
たとえば、土地を所有しているハウスメーカーと3,000万円の注文住宅の契約を結んだと仮定します。このとき、土地の価格が1,000万円、建物の価格が2,000万円だとすると、2,000万円の建物に対してのみ消費税が課されるイメージです。
結果、土地と建物の合計価格は、消費税込3,160万円(1,000万円+2,000万円×1.08)となり、この価格のほか、先に解説した住宅購入諸費用が別途かかることになります。
2.建物の建築時に支払う費用とスケジュール
本項では、注文住宅を建てる際にかかる建物部分についての費用や、支払いスケジュールなどについて解説していきます。
特に、注文住宅を建てる場合の支払いスケジュールは、不動産業者等と交わす「工事請負契約書」で決められた回数で支払うのが基本的な流れです。具体的には、「3回」もしくは「4回」に分けて支払う流れが一般的です。
また、不動産業者等に支払う工事代金におきましても、2つのパターンがあります。
- 自分の口座に住宅ローンの資金が入金され、自分で業者に対して振込手続きを行う場合
- 金融機関から直接、不動産会社等に工事代金を振り込む場合
上記2つのパターンは自分で選択できるのではなく、あくまでも融資を受ける金融機関側の対応によって異なることになります。
ここでは、一例として工事請負契約書で決められた支払回数を4回であるものとし、金融機関から直接、不動産会社等に工事代金が振り込まれるものとして解説をしていきます。
2-1.請負契約時(着手金:工事費用の約10%程度)
工事請負契約を結ぶと、着手金として工事費用の約10%程度の支払いを求められます。
一般的には、すでに住宅ローンの融資が確約されていることから、金融機関が不動産業者などに対して、工事請負契約書に定められた金額を決められた日に振り込む流れとなります。
2-2.着工時(着工金:工事費用の約30%)
建物の建築をするために、工事を始めることを「着工」といいます。この着工する際に、工事費用の約30%程度の支払いを求められます。
こちらも、金融機関を通じて不動産業者等に代金が振り込まれることになります。
2-3.上棟時(中間金:工事費用の約30%)

上棟(じょうとう)とは、建築した建物の屋根に棟木を取り付けることをいいます。上棟まで建築工事が完了すると建物全体の構造が完成したといえます。
なお、上棟時も金融機関を通じて不動産業者等に代金が振り込まれることになります。
2-4.引き渡し時(残金の支払い:約30%)
建物が完成すると残った残債を支払いすることで、不動産業者等に対する支払いがすべて完了することになります。
そしてその後、建物の引き渡しが必要書類等と共になされる流れです。
2-5.必要な諸費用と支払い時期を把握して、いつでも引き出せるようにしておく
注文住宅を建てるためにかかる必要な諸費用は、先に解説した「請負契約時」「着工時」「上棟時」「引き渡し時」といった、その時々によって異なります。以下、それぞれの状況時にかかる諸費用を表にまとめて紹介します。
建物工事の進捗状況 | 必要な諸費用 |
---|---|
請負契約時 | 印紙税 手付金 つなぎ融資費用 |
着工時 | 着工金 地鎮祭費用 解体工事費用 つなぎ融資費用 |
上棟時 | 中間金 上棟式費用 つなぎ融資費用 |
引き渡し時 | 残金支払 融資事務手数料 登記費用 団体信用生命保険 火災保険 地震保険 |
3.住宅の引き渡し後に支払う必要な費用
住宅の引き渡しを受けると、今後は住宅ローンの返済を続けながら固定資産税や都市計画税、火災保険料、団体信用生命保険料、などのような、いわゆる「ランニングコスト」と呼ばれるものが費用としてかかることになります。
ランニングコストの中でも固定資産税は、毎年確実にかかる費用です。
ただし、都市計画税は、実のところ注文住宅を建てた地域や場所によって必ずしもかかるとは限りません。
また、火災保険料は、平成29年2月現在、最長で10年間までしか加入することができない決まりがあるほか、地震保険の加入は任意となっています。団体信用生命保険料は、住宅ローンの金利に上乗せされている場合や、1ヶ月や1年ごとに団体信用生命保険料を支払うタイプのものもあります。
このように、人によってランニングコストのかかり方や金額が、実はまったく異なるのです。
ただ1つだけはっきりと言い切れることは、住宅ローンの資金計画を立てる時点でランニングコストが大まかにどの程度かかるのか確認してください。
そして、住宅ローンの返済と併せて負担していくことができるのかを、事前に把握しておくことが大切です。
3-1.不動産取得税が住宅の引き渡し後にかかる
注文住宅を建てた場合、土地と建物といった不動産を取得することになります。
実際のところ、不動産業者などから「売買」という形でこれらの不動産を取得することになるため、原則として不動産取得税が不動産を取得した人に対して課される決まりになっています。
不動産取得税は、おもに固定資産税評価額という指標に対して課される特徴があるほか、取得した住宅が「新築」「中古」といった態様による違いもあります。
また、1回限りかかる税金であることも大きな特徴の1つといえます。
なお、不動産取得税は地方税であることから、住宅の引き渡しを終えてから数ヶ月という間をおいた後、お住いの市町村から納付書が届く流れです。納付書が届く時期は、市区町村によってばらつきがあり、早い所では3ヶ月、遅い所では1年後といったところもあります。
実際に納付する不動産取得税の金額は、土地や建物の固定資産税評価額によって全く異なることから、一概に申し上げることはできません。
とはいえ、この納付する資金もあらかじめよせておく必要があります。
こちらは重要な余談となりますが、不動産取得税には「軽減措置」が設けられているため、すべての人が必ずしも不動産取得税を納めなければならないものではありません。
以下、不動産取得税について詳しい情報を掲載しておりますので、本記事のまとめを振り返りつつ、あわせて一度、目通ししてみることをおすすめ致します。
まとめ
本記事では、注文住宅を建てる際の手続きや支払いのタイミングについて幅広く解説させていただきました。
注文住宅を建てる際に優先する項目は人それぞれ異なりますが、主に「希望の土地」が見つかったタイミングが注文住宅のベストな購入時期だと思われます。
希望の土地は、探せば探すほど、なぜかなかなか出てきてくれないという経験をされているユーザー様もきっと多いと思います。希望の土地は、いわば「めぐりあい」です。
めぐりあった土地を確実に手に入れるためには、あらかじめ十分な資金を用意しておき、いつでも住宅ローンを組めるような状態を保っておくことなどが求められます。
現在は、頭金がなくともフルローンでマイホームを購入する方も増えてきています。このとき、注文住宅を建てるための大切なことの1つとして、住宅ローンの審査から振るい落とされないようにすることも求められます。
安定した収入がある、抱えている借金がない、もしくは少ない、など、いつ「希望の土地」にめぐりあったとしても、注文住宅を購入できる準備はしておくよう心掛けたいものです。