住宅購入をする際、多くの方が金融機関から住宅ローンの融資を受ける場合が多いと思います。
住宅ローンを申し込まれる方の中には、両親などから多少なりとも住宅を購入するための資金援助を受ける方もおられるのかもしれません。
一方で現金一括で住宅購入をされる方は、住宅購入した方の全体から考えても、ほんの一握りと言っても決して過言ではないと思われます。
そこで本記事では、「仮に住宅ローンを申し込んで住宅購入した場合と現金一括払いで住宅購入をした場合のどちらがお得なのか?」合理的に比較して見ていきましょう。
目次
1.住宅ローンと現金一括払いどっちがお得なのかに関するQ&A
はじめに、本記事の核心に迫っていきたいと思います。
本項では、住宅ローンと現金一括払いどっちがお得なのかに関する質問事例を参考に、平成30年1月現在で有効な各種法令を加味して合理的な比較検討をしていきます。
質問事例
「住宅ローン」と「現金一括払い」どっちがお得か? 現在、新築一戸建ての設計段階です。 土地はすでにあり、上物だけで総額約4000万程度を一括で支払うか?もしくは、ローンで支払うかを検討中です。
過去のQAなども見ましたが、住宅ローン減税にしても大した金額が戻ってくるわけではないので、手続きが面倒なら一括にしようと思っております。
ただ、最近、嫁が第一子を妊娠したこともわかり、私に何かあっても、当分、生活に困らないくらいの資金(可能なら一生ですが、)を残してあげられないかなども少し考慮する必要が出てきました。
最近の住宅ローンは、私が死亡したり、ガンになったりしたら、ローン支払わなくてもいいというものもあるので、どうすべきか考え始めました。
なお、我が家の資産管理を依頼しているメインバンクは、お金借りたほうが得ですと言ってきておりますが、向こうも商売なので正直どうかなと思っております。
【条件】
・一括で支払っても特に手元の現金がなくなって困るということはありません。
(無収入でも自分の残り現金だけでも、20年くらいは生活できると思います。)
・年収は給料で1000万弱+100万(利息や配当など)です。
・年齢40歳
・嫁は専業主婦
・子供生まれた際には、教育遺産贈与を私の両親が満額してくれます。出典:ヤフー不動産 教えて!住まいの先生より引用
質問に対する見解
上記の条件を加味しながら、住宅を以下の4つの条件を比較できるように表にまとめて紹介していきます。
- 現金一括払い
- 頭金を1000万円入れて返済期間は20年で購入する
- 頭金を1000万円入れて返済期間は35年で購入する
- 頭金なしですべてローンを組む
なお、住宅ローンのシミュレーション条件は、以下の通りとし、それ以外の条件については加味しないものとします。
- 「長期認定優良住宅」を建築するものとします
- 住宅購入諸費用は、計算の便宜上、現金一括払いは150万円、住宅ローンの場合は300万円とします
- 後述する金利は、完済まで続くものとします
- 固定金利(以下、比較表の通り、平成29年9月の住信SBIネット銀行金利を参考
)
- 返済方法 元利均等返済(ボーナス払いなし)
- 返済期間 比較表の通りとします
比較内容 | 現金一括払い | 頭金を1000万円 入れて返済期間は 20年で住宅ローンを申込 | 頭金を1000万円 入れて返済期間35年で 住宅ローンを申込 | 頭金なしで フルローンを組む |
---|---|---|---|---|
借入金額 | - | 3,000万円 | 3,000万円 | 4,000万円 |
固定金利 | - | 0.72% | 0.78% | 1.22% |
返済方法 | - | 元利均等返済(ボーナス払いなし) | ||
返済期間 | - | 20年 | 35年 | 35年 |
1ヶ月の 返済金額 | - | 134,253円 | 81,644円 | 117,061円 |
完済までの 総返済金額 | - | 32,220,805円 | 34,290,780円 | 49,165,948円 |
住宅購入諸費用 | 150万円 | 300万円 | ||
合計 | 1,500,000円 | 35,220,805円 | 37,290,780円 | 52,165,948円 |
頭金による 支払い分 | 4,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | - |
総支払金額 | 41,500,000円 | 45,220,805円 | 47,290,780円 | 52,165,948円 |
上記表の試算結果より、住宅購入諸費用の違いが生じたとしても、やはり「現金一括払い」が最も得策な住宅購入方法であると思われます。
質問者さんは、将来家族に財産を残してあげたい希望をお持ちのようですが、現金で住宅を一括購入したとしても十分な資産が残っていることが質問文面から推測できます。
そのため、むしろ余っているお金の範囲で投資などの有効な資産運用をする方が望ましいでしょう。
仮に、1000万円の頭金を入れて20年間で返済するとしても、現金一括払いで支払う方法に比べて約372万円も無駄なお金を支出してしまうのです。
このことを踏まえますと、このお金をより多く増やすための資産運用に活用する方が効率的かつ効果的と考えるのが自然です。
併せて、質問の文面より、万が一、病気や事故などといった不測の事態に対する懸念が大きいことも伺えることから、この辺をしっかりと備えた保障は生命保険などで確実に確保しておきたいものです。
2.現金一括で住宅を購入するメリットとは
先に紹介した比較表からお分かりのように、現金一括で住宅を購入するメリットとは、住宅ローンを組むことによって生じる支払利息や多くかかってしまう住宅購入諸費用を支払わなくてもよいところにあります。
ざっくり言うと、無駄なお金を支出しなくて済むということです。
そのため、貯蓄やその他にかかる必要な支出にお金を充てられることは大きなメリットになります。
また、住宅ローンの返済中に不慮の事故や偶発的な出来事が発生するなどによって、住宅ローンの返済が遅延するといった懸念も心配する必要がありません。
そのため、気持ち的に大きなゆとりが持てることもあるでしょう。
3.現金一括で住宅を購入するデメリットとは
実際に支払うお金が最も少ないことに越したことはないと前置きしつつ、現金一括で住宅を購入するデメリットについて主なものを3つ解説していきます。
3-1.住宅ローン控除(住宅ローン減税)を利用できない
住宅ローン控除(住宅ローン減税)は、正式名称が「住宅借入金等特別控除」です。
住宅ローンの借入初年度から10年間において、住宅ローン借入残高に応じた税金の負担軽減が大きく受けられる制度になります。
これがあるのとないのでは、大きな違いが生じる程です。
ただし、この減税にかかる効果というものは、個々の年収や所得などによって異なります。
また、そもそも住宅ローンなどの「住宅購入にかかる借入」が無ければ適用されないことから、現金一括払いで住宅を購入した場合、この制度が適用されることはありません。
条件によっては、住宅ローン控除を受ける方が得策といった情報もあるようです。
しかしながら、こちらにつきましては100%ないとは言い切れないのは確かであるものの、ほとんどの場合で現金一括払いに軍配が上がる場合が多いです。
そのため、あえてロスを減らすといった意味合いも込めて、現金一括払いで住宅購入される方は、第三者にあたるFPや住宅ローンアドバイザーに総合的な比較判定をしてもらうことをおすすめ致します。
3-2.団体信用生命保険を利用できない
現金一括払いで住宅購入をすると団体信用生命保険に加入することができないといったデメリットも生じます。
団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者が「死亡」、あるいは「高度障害状態」になったときに、保険会社が残ローンをあなたに代わって全額支払ってくれる保険のことを指します。
つまり、生命保険金と住宅ローンを相殺して、支払い義務を無くする効果があるということです。
これにより、残された遺族が引き続き住宅ローンを返済する負担がなくなることになります。
より詳しく知りたい場合、以下のコンテンツをご覧ください。
民間の金融機関から住宅ローンの融資を受ける場合、そのほとんどが、団体信用生命保険を「無料」で加入できるメリットが得られます。
一方、金一括払いで住宅購入するということは、死亡や高度障害になった時の担保がないこととイコールです。
そのため、しっかりとした保障の生命保険に加入して残された遺族を守るための備えが必要になると考えられます。
「保障を付けて安心したい」という方の場合、保障が無料で手厚い住宅ローンの方がリスクなく返済できるのでオススメです。
3-3 無駄な諸費用と利息がかかる
比較内容 | 現金一括払い | 頭金を1000万円 入れて返済期間は 20年で住宅ローンを申込 | 頭金を1000万円 入れて返済期間35年で 住宅ローンを申込 | 頭金なしで フルローンを組む |
---|---|---|---|---|
借入金額 | - | 3,000万円 | 3,000万円 | 4,000万円 |
固定金利 | - | 0.72% | 0.78% | 1.22% |
返済方法 | - | 元利均等返済(ボーナス払いなし) | ||
返済期間 | - | 20年 | 35年 | 35年 |
1ヶ月の 返済金額 | - | 134,253円 | 81,644円 | 117,061円 |
完済までの 総返済金額 | - | 32,220,805円 | 34,290,780円 | 49,165,948円 |
総返済金額の うち、 支払利息相当額 | - | 2,220,805円 | 4,290,780円 | 9,165,948円 |
住宅購入諸費用 | 150万円 | 300万円 | ||
合計 | 1,500,000円 | 35,220,805円 | 37,290,780円 | 52,165,948円 |
頭金による 支払い分 | 4,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | - |
総支払金額 | 41,500,000円 | 45,220,805円 | 47,290,780円 | 52,165,948円 |
仮に、現金一括払いで住宅購入をしましても、最低限の住宅購入諸費用の負担は避けて通ることができません。
たとえば、司法書士へ依頼する登記手続きにかかる費用や火災保険料などです。
住宅ローンを申し込むということは、これらの諸費用に加えて、以下の費用を負担しなければいけない場合があります。
- 金融機関に対して支払う「事務手数料」
- 保証会社に対して支払う「保証料」
- フラット35を選択してかつ機構団信に加入した場合にかかる「団体信用生命保険料」など
そのため、現金一括払いで住宅を購入するよりも、多くの諸費用負担が必要となります。
さらに、表を見てすぐに確認できるように支払利息相当額を掲載させていただきましたが、この数百万円単位の支払利息は、すべて住宅ローンを融資した金融機関側の儲けとなり、私たちにとってはロス以外の何ものでもありません。
そのため、現金一括払いで住宅購入ができる状態であるのにも関わらず、住宅ローンを申し込むということは、無駄な諸費用と支払利息がかかる大きな原因になってしまうわけです。
無駄な費用を抑えるためにも、各種手数料が無料、あるいは低価格の「住信SBIネット銀行」などを利用するようにしましょう。
4.これまでの解説から住宅ローンの申し込みに活かせる3つのこと
本記事の最後に、これまでの解説から住宅ローンの申し込みに活かせる3つのことについて解説をしていきます。
いずれも、住宅ローンの返済や支払利息に大きく関わることですので、しっかりと確認されることをおすすめ致します。
4-1.一定の返済期間を1つの堺として金利が変化する
一般に、住宅ローンの返済期間は最長で35年とされますが、返済期間が短ければ、その分、融資金利が低くなることが一般的です。
フラット35の場合ですと、20年を1つの堺として、20年以下、20年超で融資金利が異なる特徴があります。
4-2.建築する住宅が長期認定優良住宅の場合、金利が低くなる
一般に、建築する住宅は大きく「一般住宅」と「長期認定優良住宅」の2つに分けられます。
後者の優良住宅の場合、住宅ローンの融資金利が低くなる取り扱いが多くの金融機関でなされています。
ただ、実際に建築する際の費用は割高です。
建てた後の将来において、どのような利用のされ方になるのか考えながら、検討してみるのも良いでしょう。
4-3.頭金(自己資金)が多い場合、金利が低くなる
住宅ローンを申し込む際、住宅購入の自己資金にあたる頭金が多いことによって金利を低く借りられる特徴があります。
たとえば、フラット35の場合は、融資金額が9割以下、9割超といった基準を設けており、具体的なイメージを下記へ紹介します。
4000万円の住宅を購入する場合、融資金額が9割以下にあたる3,600万円以下で住宅ローンを申し込めば、金利の優遇が受けられるといった意味になります。
すでに解説した「3-3 無駄な諸費用と利息がかかる」で掲載している表を、もう一度見て見ましょう。
比較内容 | 現金一括払い | 頭金を1000万円 入れて返済期間は 20年で住宅ローンを申込 | 頭金を1000万円 入れて返済期間35年で 住宅ローンを申込 | 頭金なしで フルローンを組む |
---|---|---|---|---|
借入金額 | - | 3,000万円 | 3,000万円 | 4,000万円 |
固定金利 | - | 0.72% | 0.78% | 1.22% |
返済方法 | - | 元利均等返済(ボーナス払いなし) | ||
返済期間 | - | 20年 | 35年 | 35年 |
1ヶ月の 返済金額 | - | 134,253円 | 81,644円 | 117,061円 |
完済までの 総返済金額 | - | 32,220,805円 | 34,290,780円 | 49,165,948円 |
総返済金額の うち、 支払利息相当額 | - | 2,220,805円 | 4,290,780円 | 9,165,948円 |
住宅購入諸費用 | 150万円 | 300万円 | ||
合計 | 1,500,000円 | 35,220,805円 | 37,290,780円 | 52,165,948円 |
頭金による 支払い分 | 4,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | - |
総支払金額 | 41,500,000円 | 45,220,805円 | 47,290,780円 | 52,165,948円 |
上記表を確認すると、融資金額が9割以下で0.78%の金利に対して、9割超ですと1.22%となっていることがわかります。
0.44%の金利差は大きいことが確認でき、これは一定金額以上の頭金があるか、なしかといった理由で大きく異なることになります。
自己資金が多いことで、誰でも受けられる金利優遇となりますので、この辺を理解した上で計画的な貯蓄も心掛けたいものです。
4-3-1.フラット35人気No.1のARUHIなら頭金1割以上でさらにお得に!
さらに、現金に余裕のある方は、フラット35(全期間固定金利)において9年連続シェアNo.1のARUHI(アルヒ)のスーパーフラット7、8、9がおすすめです。
ARUHIでは、頭金が1割以上ある場合、その割合に応じて通常のフラット35よりもさらに金利が優遇される(ARUHIスーパーフラット)よう設定されています。
- 頭金1割以上で金利がさらに-0.05%
- 頭金2割以上で金利がさらに-0.1%
- 頭金3割以上で金利がさらに-0.15%
低金利時代の現在だからこそ、「低金利の恩恵を長期に渡って受けることができる」フラット35を選択することのメリットは、非常に大きいと言えます。
頭金が1割以上ある場合には、お得なARUHIのスーパーフラットを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では、住宅購入をする際、住宅ローンと現金一括払いのどっちがお得なのか合理的にシミュレーションして比較検討してみました。
結論として、ほぼ「現金一括払い」の方がお得であることに間違いがないと推測されます。
一方、年収や所得などの条件によっては、住宅ローンを組んだ方が得な場合もごく稀にあり得ることもあらかじめ念頭に入れておく必要があります。
ただし、冒頭でも触れさせていただきましたように、住宅購入を現金一括払いで行える方はほんのわずかです。
「4.これまでの解説から住宅ローンの申し込みに活かせる3つのこと」を理解した上で、計画的な住宅ローンを組むことが大切だと管理人は考えます。
実際に紹介した3つの方法は、どれも決して難しいものではありませんので、自分たちでできそうなものから順次考えてみることをおすすめ致します。