住宅ローンの融資を受けるためには、申し込みをした金融機関の住宅ローン審査に無事通過しなければなりませんが、審査を無事に通過した後の手続きの1つとして「火災保険に加入する」ことが融資実行のための条件になっています。
つまり、住宅ローンの審査が通過したことによって実質的には融資が確定しているものの、融資が実行されお金が指定口座に入金されるためには、審査を無事に通過した後の所定の手続きを行わなければならないことを意味します。
「火災保険に加入すること」は所定の手続きに該当する1つとなりますが、本記事では、購入した住宅に対して加入する火災保険に焦点をあてて、住宅ローンと火災保険の関係から火災保険の選び方まで詳しく解説を進めていきます。
目次
1.住宅ローンの融資を受けるには、火災保険の加入が必須
火災保険とは、火災をはじめとする住宅の様々な損害に対して補償をする損害保険のことをいいますが、どこの金融機関におきましても、住宅ローンの融資実行を受けるためには、火災保険の加入が必須条件となっています。
この理由は、たとえば購入した住宅が火災によって焼失してしまった場合、住宅は無くなってしまいますが、返済中の住宅ローンが無くなることはありません。
住宅ローンを融資する金融機関側としますと、万が一、住宅ローンの返済が滞ってしまったことによって貸したお金が返ってこなかった場合は、担保として抵当権設定した土地や建物を競売にかけて貸付したお金に充当します。
火災によって建物が焼失してしまうということは、住宅ローンの担保が無くなってしまうことを意味し、新たな担保や貸し倒れ防止のための対策として、火災保険への加入を必須条件としているわけです。
火災保険から支払われる保険金が金融機関に渡ることによって、住宅ローンを貸付した金融機関からしますと、貸したお金が回収できないといった最悪のリスクが避けられることに繋がることになります。
なお、日本には「失火責任法」という昔ながらの法律がいまだに有効になっており、たとえば、隣家で火災が発生し、もらい火によって自宅が全焼してしまった場合におきましても、出火元に重大な過失がない限り、損害賠償請求はできないこととされています。
とてもおかしな法律ではありますが、これを踏まえて1つはっきりと言えることは、火災保険とは、自分の住宅などの財産を守るための保険であるのと同時に、他人から受けた損害から自分の財産を守るための保険でもある、極めて重要な保険だということです。
1-1.住宅に対して加入する火災保険の保険期間は「最長10年間」
従来の住宅ローンに対する火災保険は、住宅ローンの完済まで有効なもので最長35年間という長期の保険期間でした。
しかし、2015年9月より、この制度が廃止され、現在では、火災保険の最長加入期間は、10年に短縮されています。
火災保険の最長加入期間が35年から10年に短縮されたことによって、総合的に考えますと火災保険料の負担が増加する結果となりましたが、詳しい影響につきましては、以下、同サイト内の関連記事から確認されてみることをおすすめ致します。
なお、住宅ローンを完済した後におきましても、加入している火災保険の補償が消滅することはなく、あくまでも契約した保険期間に準ずることになります。
このほか、住宅ローンの融資実行から10年ごとに「継続契約」などの手続きが必要となり、その際に支払う火災保険料も準備しておかなくてはならないことは、しっかりと押さえておく必要があるでしょう。
1-2.住宅ローンの火災保険料の相場
住宅ローンの融資実行が成されるための火災保険の加入について、火災保険料の相場といったものは基本的に存在しません。
この理由は、皆さんが購入する住宅が、
- どのような住宅であるのか
- お住いの地域はどこなのか
- 住宅の価値はどれくらいなのか
などといった条件がすべて異なっているためです。
ただし、火災保険に加入する上で、補償される保険金額の設定をしなければならず、何かしらの計算根拠や基準といったものが必要であることも確かです。
そのため、こちらにつきましては、「3-2.保険金額(契約金額)は、借入金額ではなく、住宅の100%の評価額にする」で詳しく解説を進めていきますので、そちらを参考にされてみることをおすすめ致します。
1-3.質権設定がある場合、火災保険料の受け取りは金融機関になる
火災保険の質権設定とは、住宅ローンの担保として、火災保険の保険金を請求する権利(保険金請求権)について、住宅ローンを融資した金融機関が得ることをいいます。
すでに解説をさせていただきましたように、住宅ローンを融資する金融機関に対して火災保険の質権設定をすることで、万が一、火災等で焼失した後の住宅ローン債務と相殺できることに繋がることから、融資をする金融機関側とすればお金を貸しやすくなることは確かです。
ただし、最近では、火災保険の質権設定を求めない金融機関も増えてきているため、質権設定が必要かどうかは、住宅ローン借入時に確認されることをおすすめ致します。
2.住宅ローンの火災保険で補償される場合と補償されない場合とは
ここでは、火災保険に加入することによって補償される損害内容と補償されない損害内容について紹介をしていきます。
なお、火災保険も生命保険と同じように、主契約と特約が存在し、以下で紹介する補償の中には、特約を追加することで補償が得られるものも含んでおりますので注意するようにして下さい。
2-1.火災保険で補償されるもの
リスク | 補償内容 | 保険金が支払われる場合 |
---|---|---|
火災リスク | 火災・落雷・破裂・爆発 | 火災・落雷・破裂・爆発などによって建物や家財が損害を受けた場合 |
日常生活におけるリスク | 水ぬれ | 給排水設備の事故や他の部屋で起きた事故によって生じた水漏れなどで建物や家財が損害を受けた場合 |
偶然の事故による破損および汚損 | 偶然の事故や不注意などによって建物や家財が損害を受けた場合 | |
物体の落下・飛来・衝突 | 石が飛んできてガラスが割れた場合や車が塀に衝突して当て逃げされた場合など外部からの飛来や衝突によって損害を受けた場合 | |
盗難および盗難によって生じた破損・汚損 | 強盗や窃盗などによって建物や家財が損傷した場合 家財の補償が付加されている場合は、現金なども一定の範囲内で補償 |
|
騒じょう・集団行動などによる破壊 | デモや労働争議などの集団行動によって建物や家財が損害を受けた場合 | |
風災・ひょう災・雪災 | 風災・ひょう災・雪災などによって建物や家財が損害を受けた場合 | |
自然災害リスク | 水災 | 台風や豪雨などで洪水・高潮・土砂災害で建物や家財が損害を受けた場合 |
2-2.火災保険で補償されない場合とは
火災保険に加入しているのにも関わらず、保険金が支払われない(補償されない)場合には、以下のようなものがあります。
- 故意や重大な過失によって生じた損害
- 戦争・革命・内乱などによって生じた損害
- 地震によって生じた損害
- 核燃料などによって生じた損害
- 偶然な事故によって生じた損害で保険約款に列挙されている損害 など
特に注意が必要なのは、やはり「地震によって生じた損害」でしょう。
詳しい解説につきましては、「3-4.火災保険だけでは、地震による火災は補償されない」を参考にしてみて下さい。こちらは、地震保険に加入していなければ補償の対象となりません。
3.住宅ローンの火災保険における注意点
火災保険の概要や補償内容などについてご理解いただいたところで、今度は、火災保険に加入する際の注意点について確認していきましょう。
3-1.住宅会社に勧められた保険にそのまま加入すると無駄な費用が多い
住宅購入の際、住宅会社が一例プランとして紹介する火災保険の内容は、そのまま加入すると無駄な補償が付いている可能性も非常に多いことがある場合もあるため、自分で確認することはもちろん、時には、第三者の専門家(FPなど)に相談してみることを強くおすすめ致します。
特に、火災保険選びは、補償内容や条件を決めて複数社に見積り依頼するのが基本です。
たとえば、火災保険の一括見積もりサイトを利用して、どの保険会社の火災保険料が安くて補償が優れているのか比較検討して確認してみることが重要です。
こちらにつきましては、具体的な方法について、同サイト内の「住宅ローン火災保険の35年がなくなった今、10年契約が最長に 3-4.火災保険選びは、補償内容や条件を決めて複数社に見積り依頼するのが基本」にて、解説しておりますので参考にされることをおすすめ致します。
3-2.保険金額(契約金額)は、借入金額ではなく、住宅の100%の評価額にする
火災保険の支払保険料は、できる限り安いことに越したことはありませんが、万一の際、十分な補償が受けられないことだけは避けなければなりません。
実際のところ、火災保険で補償される保険金額は、必ずしも自分が選んだ保険金額で決めることはできず、たとえば、再建築費や再取得費用が3,000万円のものに対して、倍の6,000万円で加入することや500万円しか加入しないなどといったこともできません。
このような理由から、火災保険に加入する上で購入した住宅(建物)の価値がどの程度あるのかを算出することになりますが、具体的には、再調達価額もしくは時価のいずれかで評価します。
こちらは、専門的な内容となりますので、できる限り、専門家にあたるFPや保険会社、保険代理店から算出してもらうことをおすすめ致します。
なお、実務上、建物の評価額を間便にする方法としては、新築住宅、中古住宅を問わず、購入した建物価格(消費税込)を保険金額とする方法があります。
この方法であれば、広く多くの皆さまが簡単に金額を把握することができるだけでなく、実際の実務でも広く利用されている方法になりますのでおすすめです。
仮に、とにかく細かな部分まで突き詰めて火災保険料を算出したいといった方は、重複致しますが、専門家にあたるFPや保険会社、保険代理店から算出してもらうことをおすすめ致します。
3-3.生活必需品等は、家財にも保険をかけておかなければ、補償されない
火災保険の補償対象は、大きく「建物」と「家財」の2つです。
仮に「建物」のみの火災保険に加入し、「家財」が補償対象外である場合、電化製品や衣服といった生活必需品に対する補償がないことを意味します。
仮に、火災によって住宅が全焼するということは、建物のみならず生活必需品も含めたすべてのものを買い替える必要があります。
あくまでも加入は任意ですが、できる限り「家財」の補償も追加しておくべきでしょう。
3-4.火災保険だけでは、地震による火災は補償されない
すでに解説をさせていただきましたように、火災保険だけに加入している状態では、地震による火災やそれに関連する損害に対して補償されることはなく、これが補償されるためには、「地震保険」に加入する必要があります。
そのため、火災保険の加入手続きをする時は、できる限り「地震保険」もセットで加入することを忘れないようにしましょう。
地震保険は、地震保険のみの単独で加入することができず、必ず火災保険とセットでなければ加入することができないことになっています。
火災保険は、通常の火災は補償対象であるものの、地震による火災は、同じ火災でも補償の対象外です。これは、確実に押さえておかなければならないポイントと言えます。
4.住宅ローンの火災保険の上手な選び方
一般に、火災保険料を少なくしたいのであれば「長期契約」が基本となります。
火災保険料は、長期前払いをすることによって、トータルの保険料負担は軽くなるのです。
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出典:価格.COM:保険期間の条件はある?より引用
上記イメージ図の女性のように、最長10年間加入することができる火災保険を長期で加入する方が、支払保険料の割引が受けられ負担保険料は少なくて済みます。
しかし、10年間分の火災保険料を一度にまとめて前払いするということは、時には、30万円以上のお金が一度に支出されることに繋がりますので、火災保険の契約が切れるまでに計画的に貯めておくことが大切なポイントになります。
まとめ
本記事では、購入した住宅に対して加入する火災保険に焦点をあてて、住宅ローンと火災保険の関係から火災保険の選び方まで詳しく解説をさせていただきました。
本記事の要点について以下、それぞれ再度、おさらいしていきます。
- 住宅会社に勧められた保険にそのまま加入すると無駄な費用が多い可能性が高くなるため、ご自身で複数社から見積もりをとって比較してみること
- 建物の評価額を間便にする方法としては、新築住宅、中古住宅を問わず、購入した建物価格(消費税込)を保険金額とする方法で見積もりをとって比較してみること
- 生活必需品等は、家財にも保険をかけておかなければ、補償されないため、家財の補償を忘れないこと
- 火災保険だけでは、地震による火災は補償されないため、火災保険だけではなく地震保険にも加入するのを忘れないこと
- 火災保険料を少なくしたいのであれば、長期契約が基本となるため、最長10年間の契約で保険契約を締結し、更新も最長10年間で行うこと
これまでの解説を1つずつ確実に確認し、まずはご自身で情報集めをすることが、火災保険料を少なく抑え、かつ、無駄のない火災保険へ加入できることは確かです。
火災保険の比較検討・見直しが家計の節約に直結します
火災保険の支払いスパンが短くなったとはいえ、10年に一度の支払いになります。
まとめ支払う必要があるため、大きな支出があると家計を圧迫してしてしまいます。子供の教育費もありますし、家族で旅行や趣味に使うお金が少なくなってしまっては嫌ですよね。
また先に解説させていただいた通り、住宅会社や不動産会社が一例プランとして紹介する火災保険の内容は、そのまま加入すると無駄な補償が付いている可能性も非常に多いです。
一緒に提案して販売することで利益を上げることが目的なので、これでは、いざというときに必要な補償内容が含まれていない可能性が高いです。
火災保険に入っているのに、保険が適用されなければ本末転倒ですよね。
こういった後悔を未然に防ぐために、火災保険はしっかりと比較して充実した内容の商品を選ぶようにしましょう。同じ補償内容でも金額が安い会社もあるので、比べて家計を節約していきましょう。
「火災保険一括見積もり依頼サイト」なら、一度の入力で10社以上の保険会社の中から保険を選べます。無料で利用できるため、保障内容をしっかりと比較して不要な補償は排除して保険料を大幅に減らすことも可能です。
家計の節約と補償内容の強化に有効利用しましょう。