住宅ローンの金利の内、「固定金利期間選択型(期間選択型固定金利)」と呼ばれるものがあります。
固定金利期間選択型とは、あらかじめ選択した一定期間は固定金利で、期間終了後の金利を再度選べるといった特徴を持つ金利のことです。
ただ、期間選択型固定金利に関して、期間以外の詳細を理解している人は少ないです。
そここのページでは、固定金利期間選択型について、基本からメリットデメリットに至るまで解説させていただきます。
住宅ローンの金利は、選び方1つでトータルの支払うべき金額が大幅に変わります。そのため、金利を選ぶ際における選択肢の1つとして、その特徴をしっかりと押さえておくことが大切です。
期間選択型固定金利は特殊な金利だけに、なかなか選びにくい側面があります。
しかし、将来がある程度予測できる場合、有利な金利になる可能性もあります。本記事の解説でポイントをしっかりと押さえていきましょう。
目次
1.固定金利期間選択型とは

冒頭で解説した通り、固定金利期間選択型とは、住宅ローンの借入当初に選んだ固定金利期間は、金利が変わらない特徴を持った金利になります。
そして、選択した固定金利期間が終了した後に再度、その時の状況に合わせて「変動金利」か「固定金利」のいずれかを選ぶといった仕組みが固定金利期間選択型の大きな特徴です。
たとえば、固定金利期間5年で固定金利期間選択型の金利を選択したとします。この場合、5年間の金利は変わらず、6年目に「変動金利」か「固定金利」のいずれかを選ぶといったイメージになります。
変動金利と全期間固定金利の詳細を知りたい方は、以下のコンテンツもあわせて読んでおきましょう。
2.固定金利期間選択型の特徴
固定金利期間選択型の特徴は、あらかじめ選んだ固定金利期間が終わってからは、変動金利か固定金利のいずれかを再度選択することがあげられます。
しかし、実際はこの他にもあります。
本項では、これ以外の特徴について解説をしていきます。
2-1.固定金利期間を2年・3年・7年・10年・15年・20年・25年などから選べる
固定金利選択型で選べる期間は、2年・3年・7年・10年・15年・20年・25年など、複数の選択肢から自分の希望にあったものを選ぶことができます。
家族のライフイベントに合わせて、固定金利期間をあらかじめ選べるところがポイントです。
2-2.固定金利期間が短いほど、金利が安くなる「キャンペーン金利」が多い
ほとんどの金融機関では、固定金利期間選択型の固定金利期間が短いほど、金利が安くなる「キャンペーン金利 = 優遇金利」を適用しています。
特に、2年固定金利期間選択型、3年固定金利期間選択型などは、変動金利と利率がさほど変わらない金融機関も多く見られます。
ただし、固定金利期間が短いといった理由だけで、住宅ローンの総返済金額が少なくなるとは言い切れません。
総合的に考えると、「必ずしもお得になるとは限らない」ところがポイントです。
3.固定金利期間選択型のメリット
固定金利期間選択型のメリットは、選んだ固定期間によって低い金利が適用される所でしょう。
また、あらかじめ選んだ固定金利期間が満了した後に、その時々の金利情勢や家計のお金の流れに合わせた金利を選ぶことができることがあげられます。
たとえば、借入当初、固定金利選択型の住宅ローンを申し込んで10年間の固定金利が年1.30%であったとします。
それから10年後、金利が上昇し、10年固定金利が年1.45%になった時、引き続き固定金利を選ぶことができるのです。
逆に、金利が低くなっていれば、より金利の低い変動金利に切り替えることもできるといったイメージになります。
仮に変動金利に切り替えて年0.80%になったとすれば、10年経過した後の返済金額を今までよりも抑えることが可能になります。
家計の将来の支出と照らし合わせながら柔軟な返済計画を組むことができる点は、期間選択型固定金利の大きなメリットであるといえます。
4.固定金利期間選択型のデメリット
もちろん、固定金利期間選択型にもデメリットがあります。これを知らずに期間選択型固定金利を選ぶのはリスクが高すぎるため、必ず確認しておきましょう。
ここでは、2つのデメリットについて解説していきます。
いずれのデメリットも非常に重要な内容のため、確実に押さえておきたいものであると思われます。
4-1.金利相場が変わらなくても固定金利期間終了後に金利が上がる可能性がある
固定金利期間選択型の1つ目のデメリットは、金利相場が変わらなくても固定金利期間終了後に金利が上がる可能性があることです。
実際のところ、多くの銀行では、固定金利期間選択型に優遇金利を適用しております。
しかし、固定金利期間終了後の優遇金利は、借入当初の優遇金利よりも小さい場合がほとんどです。そのため、結果として固定期間終了後に返済金額が増加してしまうといった「落とし穴」が潜んでいます。
4-2.変動金利のようなルールが適用されない
固定金利期間選択型の2つ目のデメリットは、変動金利のようなルールが適用されないことです。
変動金利には、「5年ルール」や「125%ルール(1.25倍ルール)」といった返済金額に対するルールが設けられています。そのため、急激な金利上昇に対する救済措置が取られておりますが、固定金利期間選択型にはこのルールがありません。
たとえば、3年固定金利期間選択型を選んだと仮定し、固定金利が1.0%であったとします。
仮に3年後の金利が上昇し2.0%になったとした場合、原則としてこの金利が適用されることになるのです。そのため、返済金額が大幅に増加し負担が重くのしかかってしまいます。
残念ながら、金利の推移は誰にも予測することはできません。
固定金利期間が長くなればなる程、このようなリスクが大きくなってしまうところが固定金利期間選択型のデメリットと言えます。
5.固定金利選択型を選ぶ際のポイント
これまで固定金利選択型の特徴をはじめ、メリットやデメリットについて解説してきました。
ただ、「どのような場合に選べば良いのかいまいちわからない」といったユーザー様も多いのかもしれません。
そこで本項では、3年や5年といった短期間で固定金利期間選択型を選ぶ際のポイントをいくつかあげて以下、解説を続けていきます。
5-1.将来のライフプランを指標として選ぶ
固定金利期間選択型は、将来のライフプランやライフイベントを指標として選ぶのに適した金利になります。
たとえば、子どもの教育費のピークや、3年から5年後に奥さんが仕事に出る予定があるなどの場合です。
当初の固定金利期間は、「安定した住宅ローンの返済を続け、固定金利が終了した後は夫婦で一気にまとめて返していく」といったイメージが理想の返済例の1つとして考えることができます。
5-2.金利の予測を指標として選ぶ
金利の動向は、予測することが難しいです。むしろ、誰にもわかりません。
そのため、「その時々にあった適切な金利で。住宅ローンの返済を続けたい」と考えている方には、3年や5年といった短期間で固定金利期間選択型を選ぶ良きポイントになると考えることができます。
もちろん、短い期間で都度、金利を選ぶ手間がかかります。
しかし、「ロスを徹底的に少なくしたい」といった完璧主義のような考え方をお持ちの方には、適した金利と考えることもできるでしょう。
なお、固定金利期間を長く設定した場合の参考記事として、仮に固定期間を20年に設定したものもありますので、以下の記事もあわせてその違いを確認してみることもおすすめ致します。
6.不動産業者の営業マンが変動金利や固定金利期間選択型を勧めてくる理由
一般に「変動金利」や「固定金利期間が短い選択型」は、金利が低い特徴があります。そのため、月々に返済する住宅ローンの金額を「少なく見せかける」ことが簡単にできます。
あくまでも語弊(ごへい)の無いように申し添えておきますが、変動金利や固定金利期間選択型の金利が悪いといったことではありません。
しかし、これらの金利を選んだ場合、時の経過における金利上昇によって、将来の住宅ローンの返済金額が増加する危険性が含まれていることになります。
このリスクを十分に説明しないまま「住宅ローンの返済例」として提示する、自己利益主義の営業マンや不動産業者が多いことが非常に残念でなりません。
たとえば、チラシやテイクフリーの雑誌などへ広告を載せる場合は、当然に限られた枠でしか自社をPRすることができません。そのため、支払金額が安く見えるようなテクニックが駆使されています。
とはいえ、せめて「固定金利期間選択型」と「固定金利」の返済例を一緒に載せて、お客様に選択させるくらいの余力や良心的な対応を見せてもらいたいものだと思ってしまいます。
住宅ローンの借り入れを検討する際は、金利の高い低いだけではなく、「無理なく最後まで返済できるかどうか」を考えて選択するようにしましょう。
7.固定金利期間選択型を選んで問題のない人とは?
これまでの固定金利期間選択型の特徴や、メリットおよびデメリットを踏まえた上で、「固定金利期間選択型を選んでも問題のない人」について考えていきたいと思います。
これに当てはまる場合、期間選択型固定金利を選択枠に入れてみてもよいでしょう。
7-1.固定金利期間終了までに収入が増える人
会社員や公務員などのように、固定金利期間が終了するまでに給与のベースアップなどで収入が増える見込みのある人であれば、固定金利期間選択型を選んでも問題がない人と言えます。
逆に、自営業者など事業の収支が不安定であり、「返済金額の増加をできる限り避けたい」と考えている人には、おすすめできない金利とも言えます。これは、ケース・バイ・ケースです。
7-2.固定金利期間終了後に借入残高を大きく減らせる人
固定金利期間終了後に、抱えている住宅ローンを大きく減らせる見込みがある人であれば、金利選びの選択肢の1つとして考えても良いと思われます。
たとえば、妻が外に出て、夫婦共働きになる場合などが、最もイメージしやすいパターンと言えます。
8.気になる固定金利期間選択型の返済イメージを紹介
仮に固定金利期間選択型を選んだ場合、住宅ローンの返済イメージがどのようになるのか気になる方は多いと思います。
そこで、ここでは「3年固定金利期間選択型」を選んだものとして以下のシミュレーション条件の下、返済金額や総返済金額における概算金額を紹介していきたいと思います。
8-1.シミュレーション条件
- 借入金額:3,000万円
- 当初金利:0.7%
- 固定金利終了後の金利:表を参照
- 返済期間:35年
- 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし)
概算計算の便宜上、3年固定金利期間終了後の選択金利は、引き続き固定金利を選択したものとし、完済までの金利が変わらなかったものとします。
8-2.3年固定金利期間終了までのシミュレーション結果
1ヶ月の返済金額 | 3年後の住宅ローン残高 | 3年間の総返済金額 |
---|---|---|
80,556円 | 27,706,648円 | 2,900,016円 |
8-3.3年固定金利期間終了後のシミュレーション結果
4年目から完済までの金利 | 0.8% (金利水準がほぼ同等に 推移した場合) | 1.7% (金利水準が上昇して 推移した場合) |
1ヶ月の返済金額 | 81,805円 | 93,598円 |
32年間の総返済金額 | 31,413,433円 | 35,941,937円 |
完済までの総返済金額 | 34,313,449円 | 38,841,953円 |
シミュレーションの結果を踏まえた総括は、以下「まとめ」で記述します。
まとめ
3年や5年といった固定金利期間選択型は、将来の金利水準がどのように推移するのかによって完済までの総返済金額は変わってきます。
仮にシミュレーション条件と同じ前提で、35年間の固定金利1.5%で完済した場合は以下のようになります。
借入金額 | 金利 | 1ヶ月の返済金額 | 35年間の総返済金額 |
---|---|---|---|
30,000,000円 | 1.5% | 91,855円 | 38,579,239円 |
以下、金利の推移がどのように変化するのかによって総返済金額の違いが一目瞭然です。
3年固定金利当初0.7% 4年目以降の金利 | 0.8% (金利水準がほぼ同等に 推移した場合) | 1.7% (金利水準が上昇して 推移した場合) |
---|---|---|
完済までの総返済金額 | 34,313,449円 | 38,841,953円 |
不確定要素となりますが、金利が上昇しなければ総返済金額が少なくてすみます。
一方、金利が大きく上昇してしまうと、当初から固定金利にするよりもかえって総返済金額が多くなってしまいます。
このことからわかる通り、住宅ローンの金利選びがいかに重要な項目であるかをご理解できたと思います。先に解説した通り、金利の高い低いだけではなく、「無理なく最後まで返済できるかどうか」を考えて選択するようにしましょう。