住宅購入をこれから検討されている皆様にとって、住宅ローンを無理なく賢く借りるための手順を1から10まですべて知りたい方は多いと思います。
しかしながら、法律や制度が毎年変わることを踏まえますと、住宅ローンを無理なく賢く借りる手順は一筋縄でいかないのが現状です。
その一方で、いつの時代であったとしても住宅ローンを無理なく賢く借りるための共通した手順があることも確かです。
そこで本記事では、いつの時代であったとしても住宅ローンを無理なく賢く借りるための全5手順を専門家がわかりやすく紹介していきます。
なお、手順の紹介にあたりまして、同サイト内で公開している記事も合わせて紹介していきますので、ご自身のステップに合わせて読み進めていただくことを推奨致します。
目次
1.住宅ローンを無理なく賢く借りるためには、資金計画からスタートする
住宅ローンを無理なく賢く借りるためには、まずは、資金計画を立てるところからスタートする必要があります。
これが1つ目の手順となりますが、具体的な流れは次項の通りです。
1-1.住宅購入の予算を決めてから業者の見学に行く
住宅購入する上で最も大切なことは、購入予算を決めておくことです。
ここで言う予算というのは、「いくらならば住宅ローンを借りられるのか」ではありません。「いくらならば無理なく住宅ローンを返済していけるのかどうか」といった、返済可能額を明確にしておくことになります。
1-2.住宅購入にかかるお金にはどのようなものがあるのかを知る
住宅購入をするには、土地や建物の購入代金(注文住宅の場合)のほか、住宅購入にかかる諸費用が必ずかかります。
そのため、たとえば、土地と建物を合わせて3,000万円の住宅を購入する場合、3,000万円では足りないのです。
これに付随する住宅購入諸費用がかかることを知っておく必要があります。
1-3.住宅購入をする場合における支払いの流れを知る
住宅購入をする際、住宅ローンを金融機関から借入される方がほとんどだと思います。
たとえば、土地と建物を取得する注文住宅の場合は、代金を複数回に分けて支払うことが一般的です。
この時、手持資金が十分でない場合は、一般に「つなぎ融資」を活用して住宅ローンを借入することになります。
この時、つなぎ融資にかかる事務手数料やつなぎ融資利息も立派な住宅購入諸費用にあたります。
住宅ローンの融資は、原則として建物が完成して引き渡しがなされる時に融資が実行されることになるため、つなぎ融資を活用することによって多くの諸費用がかかることを知っておくことはとても大切です。
1-4.住宅購入後の資金計画をあらかじめ考えておく
住宅ローンの審査が通過して融資が実行されますと、晴れて夢のマイホームが手に入ることになりますよね。
以後は、住宅ローンの返済・固定資産税・都市計画税の納付を期日までに行っていかなくてはなりません。
加えて、購入した土地や建物によっては不動産取得税も1回限り納めなければならない可能性もあります。
このため、これらの資金計画をあらかじめ考えておくことはとても大切です。
2.頭金をいくらにするか決定する
住宅購入のための資金計画を一通り立て終わりましたら、今度は頭金をいくらにするか決定していく必要があります。
これが2つ目の手順となり、具体的な流れは次項の通りです。
2-1.頭金とは、自己資金のこと
住宅購入される方の中には「頭金についてよくわからない」といった方も多いです。
頭金とは、住宅購入をするための自己資金のことを言います。
たとえば、土地と建物を合わせて3,000万円がかかるものと仮定し、自己資金が500万円あるとしましょう。
この場合、
- 頭金を500万円あてて2,500万円を借入する方法
- 頭金を300万円充てて2,700万円を借入する方法
など、さまざまなローンの組み方が実現できます。
なお、現在は頭金が無くても住宅ローンの申し込みや審査に通過することもでき、いわゆるフルローンで住宅ローンを借入することも十分可能です。
ただし、すでに紹介した住宅購入の資金計画がしっかりと立てられていることが大前提となりますので、この部分に注意が必要と言えます。
2-2.余裕を持った緊急予備資金を必ず残しておく
住宅購入のための頭金をあてることは、住宅ローンの審査に通過しやすくなるだけでなく、毎月の返済金額や完済までの総返済金額を大きく減少させられる効果が期待できます。
ただし、住宅ローンの返済途中で突発的な事情によってお金を支出しなければならない場合に、緊急予備資金がないことはとても危険なことです。
そのため、頭金を考える上では、必ず余裕を持った緊急予備資金を残しておきましょう。
可能であれば、職業を問わず生活費の1年分は手元に残しておきたいものです。
3.住宅ローンの借入金額を決定する
住宅購入のための資金計画を一通り立て終わり頭金をいくらにするか決定しましたら、いよいよ住宅ローンの借入金額を決定していきます。
これが3つ目の手順となり、具体的な流れは次項の通りです。
3-1.借入可能額のシミュレーションを真に受けてはいけない
住宅ローンを取り扱っている多くの金融機関では、年収を基に借入可能額を大まかにシミュレーションできるようになっています。
ただし、住宅ローンの借入可能額の通りに満額で借入してしまいますと、一般にローンの返済がとても苦しくなってしまうのです。
このほか、そもそも住宅ローンの審査に通過しにくくなってしまう矛盾が生じます。
3-2.毎月の住宅ローン返済金額を決定する
毎月の住宅ローン返済金額は、すでに解説をしましたように「無理なく住宅ローンを返済していけるのかどうか」といった返済可能額を明確にしておくことになります。
この時、以下のように将来にかかるお金のことを考えて返済可能額を決定しなければなりません。
- 毎年納めることになる固定資産税および都市計画税
- 子供の教育費やご自身の老後資金
- 毎月の貯蓄
- 将来かかる火災保険料や修繕費用などの積立金
上記のお金を考慮した上で余裕のある返済可能額となりますと、かなり金額が制限されてしまいますが、すでに解説した頭金(自己資金)が、いかに重要なのかもわかります。
3-3.住宅ローンの金利と返済期間、返済方法など、返済条件を決定する
この時点で、住宅ローンの希望借入金額(予算)が明確になっており、かつ返済可能額が決定しています。
そのため、後は、住宅ローンの金利・返済期間・返済方法などといった返済条件を決定すれば、住宅ローンを無理なく賢く借りるための土台は完成することになります。
3-3-1.住宅ローンの金利
住宅ローンの金利には、変動金利・固定金利・固定金利選択型(期間選択型固定金利)などの種類があります。
そして、どの金利を選ぶのかによって毎月の返済金額や完済までの総返済金額が大きく変わってきます。
それぞれの金利の特徴を事前に知った上で選ぶことは、住宅ローンを考える上で極めて重要です。
3-3-2.住宅ローンの返済期間
住宅ローンの返済期間とは、完済までにかかる年数のことをいいます。
たとえば、返済期間35年であれば、「35年で住宅ローンを完済する」といった意味です。
返済期間を短くすればするほど完済までに返済しなければならない総返済金額は少なくて済む一方、毎月の返済金額は多くなります。
後ほど紹介するシミュレーターを活用して、さまざまなパターンをシミュレーションしてみることがとても大切です。
3-3-3.住宅ローンの返済方法
住宅ローンの返済方法には、おもに元利均等返済と元金均等返済の2つがあります。
- 元利均等返済:毎月の返済金額が同額になる返済方法
- 元金均等返済:毎月返済する元金が同額となる返済方法
返済方法 | 元利均等返済 | 元金均等返済 |
1回目返済金額 | 91,855 | 108,927 返済元金 71,428 支払利息 37,499 |
2回目返済金額 | 91,855 | 108,838 返済元金 71,428 支払利息 37,410 |
3回目返済金額 | 91,855 | 108,749 返済元金 71,428 支払利息 37,321 |
仮に、住宅ローンの金利で固定金利を選んだ場合で考えてみましょう。
元利均等返済の場合、毎月の返済金額が一定金額になり、住宅ローンの返済計画が立てやすいメリットがあります。
その一方で、元金均等返済に比べて完済までの総返済金額は多くなるデメリットがあります。
これに対し元金均等返済は、毎月の返済元金が均等である一方、返済当初は返済金額が大きくなってしまうことが特徴的です。
ただし、毎月の返済金額が徐々に減っていくことになるため、元利均等返済に比べて完済までの総返済金額は少なくて済むメリットが得られます。
3-3-4.返済可能額に沿っているのかご自身でシミュレーションしてみる
住宅ローンの金利・返済期間・返済方法が決まりましたら、実際にシミュレーターを活用して「ご自身の返済可能額に沿っているのか」を確認してみることが大切です。


(出典:知るぽると)
数字や金額を打ち込むだけでシミュレーションが簡単にできますので、さまざまなパターンを試してみましょう。
4.住宅ローンをどのように借入するのか決定する
住宅ローンのシミュレーションまで終わりましたら、今度は「住宅ローンをどのように借入するのか」を決定していきます。
これが4つ目の手順となり、具体的な流れは次項の通りです。
4-1.住宅ローンの債務者を決定する
住宅ローンを借入する方法には、1人の信用で借入する「単独借入」のほか、夫婦や親子の収入を合わせて借入する「収入合算」があります。
いずれの方法で借入を行った場合であったとしても、住宅ローンの審査は必ずなされます。
単独借入の場合は、申し込みをした本人のみ審査対象となりますが、収入合算の場合は、収入合算をする双方がどちらも審査されることになるのです。

(出典:平成29年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書)
住宅ローンの審査項目は、上記のような項目がおもな審査項目としてそれぞれ審査されることになりますが、1つずつ審査対策を施していけば問題なく住宅ローンを借入できます。
5.住宅ローンをどこの金融機関からどのような商品で借入するのか決定する
住宅ローンのシミュレーションや審査対策が終わりましたら、最後に「どこの金融機関からどのような商品で借入するのか」を決定して終了となります。
これが5つ目の手順であり、具体的な流れは次項の通りです。
5-1.まずは固定金利で住宅ローンを借入することを検討しよう
住宅ローンでは、固定金利よりも、変動金利や固定金利選択型の金利の方が低い金利となっています。
このため多くの方は、当初から低い金利でシミュレーションしがちです。
しかしながら、固定金利の安定性や変動金利のリスクを考慮しますと、住宅ローンの頭金に余裕がない方や、自営業者をはじめとした収入や貯蓄額が少ない方こそ固定金利が向いていることを理解しておく必要があります。
長期固定金利の住宅ローンにあたるフラット35は、上記の方々にとって、住宅ローンの審査に通過しやすいメリットがあります。
このほか、民間金融機関に比べて審査が甘いことも特徴的です。
5-2.変動金利を選ぶ場合で資金に余裕がある方はネット銀行も検討
変動金利は、対面型の金融機関やネット銀行のいずれであっても金利が低い特徴があります。
しかし特にネット銀行では、対面型の金融機関に比べてさらに金利が低い特徴があるのです。
そのため、変動金利を選ぶ場合で資金に余裕がある方は、ネット銀行を検討される方が得策になる場合が十分に考えられます。
6.金融機関に対して住宅ローンの申し込みを行う
これまで解説した5手順で、住宅ローンを無理なく賢く借りるためのステップは完了です。
後は、希望の金融機関に対して住宅ローンの申し込みを行うことになります。
この時、住宅ローンの申し込みから融資が実行されて入金されるまでの一通りの流れや注意点を必ず押さえておきましょう。
特に、住宅ローンの審査途中の転職や新たな借入、クレジットカードの新規契約など、せっかくの対策が自ら水の泡にしてしまうことも多々ある点には本当に注意が必要です。
7.住宅ローンの本審査が通過したら関係業者と契約を交わす
これまで解説した手順通りにこなすことで、住宅ローンの本審査が無事通過できることでしょう。
ここでの重要なポイントは、不動産業者と先に契約をするのではなく、住宅ローンの本審査に通過してから不動産業者と正式な契約を交わすところにあります。
契約の仕方を間違えますと、取り返しのつかない無駄なお金を支払わなければならない場合もあるため注意が必要です。
正式な契約を交わす前に必要な書類等を不動産業者に準備してもらうことで足りるため、業者にそそのかされて契約を交わさないようにしましょう。
8.住宅ローンの返済がもっと楽になるポイントも知っておこう
住宅ローンを無理なく賢く借りるための全手順を紹介してきましたが、最後に、住宅ローンの返済がもっと楽になるポイントも紹介しておきます。
8-1.すまい給付金の申請をして補助金を受け取る
すまい給付金とは、消費税率引き上げによる住宅購入者の負担を軽減するための制度のことを言います。
ただし、すまい給付金には支給要件が設けられており、以下を現金給付する制度になっています。
- 消費税率8%時:収入額の目安が「510万円以下」の方を対象に最大30万円
- 増税後の10%時:収入額の目安が「775万円以下」の方を対象に最大50万円
8-2.住宅ローン控除の申告をする
住宅ローン控除とは、年末(12月31日)時点の住宅ローン残高に一定割合を掛けた金額が所得税と住民税から直接控除される制度のことをいいます。
これによって、最大で10年間に渡って税金の優遇が受けられ、消費税が10%に増税されてからの契約および引き渡しの場合は、最大減税期間が10年から13年に3年間広がります。
そのため、これから住宅購入予定のある方は、すまい給付金や住宅ローン控除のことを考慮した住宅購入がお金や節税の面で大きなメリットが受けられる場合も十分に考えられるのです。
多くの不動産業者では、住宅ローンを無理なく賢く借りるための全手順をはじめ、すまい給付金や住宅ローン控除まで詳しく説明するところはほとんどないでしょう。
このような理由から、FPや住宅ローンアドバイザーといった専門家のアドバイスや意見を取り入れながら住宅購入されるのも得策な選択だと言えます。
8-3.両親からの資金援助を活用する
一般に、住宅購入するために他人から資金援助を受けた場合は、贈与税が課される対象となります。
ただし、直系尊属(血のつながった両親や祖父母)から住宅購入のための資金援助を受けた場合は、所定の書類や手続きを行って贈与税の申告をすることによって、贈与税が一定金額までかからない取り扱いがあります。
8-4.住宅購入諸費用を抑える
住宅購入諸費用には、事務手数料や保証料をはじめ、火災保険料・仲介手数料・つなぎ融資費用・登記費用などさまざまな付随費用があります。
これらの諸費用は、申し込みをする不動産業者・金融機関・選んだ住宅ローン商品などによって大きく変わってきます。
ざっくりした紹介となってしまいますが、融資事務手数料では50万円、火災保険料では100万円程度の開きがある場合も見られ、ポイントは、ご自身で選択して選べるということです。
つまり、業者の言うとおりにする必要がなく、ご自身で安くて質の高いものを選ぶことによって、住宅購入諸費用は大きく抑えられるのです。
8-5.団体信用生命保険の加入の仕方を検討しておく
こちらはフラット35で借入する場合の紹介となりますが、フラット35では団体信用生命保険の加入が任意となっています。
このため、定期保険や収入保障保険を団体信用生命保険の代わりにしても差し支えありません。
健康体の方やたばこを吸わない方などの場合は、機構団信に加入して住宅ローンの金利が高くなるよりも生命保険に加入した方が得策な場合も十分に考えられます。
また、年齢が若いほど生命保険料は安くなりますから、住宅ローンの申し込みが若い年齢であるほど、この効果は大きくなるのです。
まとめ
本記事は、これから住宅購入予定の方を対象に、住宅ローンを無理なく賢く借りるための全手順について同サイト内で公開されているものをまとめてご紹介しました。
1つずつステップを踏んで記事を読み進めていくことによって、住宅ローンの審査も無事通過し、かつお得に住宅ローンを借入できる結果につながることでしょう。
同サイト内では、住宅購入に役立つ情報が細かく網羅されております。
その中でも本記事は、筆者自身が住宅ローンや住宅購入相談の経験をもとに、特に必要とされるものを厳選して案内している記事であることもご理解いただければ幸いです。
手順通りに対策を進めていくことを心がけ、決して読み飛ばしたり自分たちの都合の良い解釈で事を進めていったりしないようにしていただくことをおすすめします。
住宅購入や住宅ローンの審査で失敗する方の多くは、「知識の不足と自分たちの理想を追い求めた結果が残念なものになっている」場合が多い傾向にあると経験上感じています。
これから住宅購入される方の一助になる案内記事であることは確かであると思いますので、大いに役立てていただきまして、住宅ローンの本審査を無事通過されることを望みます。