住宅ローンの融資条件を調べる時にインターネットを利用して調べる方がほとんどだと思いますが、その中で多くの皆さまは、「住宅ローンの手数料が無料」といった文言を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
住宅ローンにかかる諸費用は、それなりに多くの金額が必要となることから、手数料なしといったものに魅力を感じてしまうのは誰でも当然のことであります。
その一方で、はたして本当に手数料がかからないのか、何か他にからくりがあるのではないだろうかと思ってしまう方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、住宅ローンの手数料や住宅購入諸費用に焦点をあてて、住宅ローンの手数料がないといったことはどのようなことなのか、多くの皆さまが抱えている疑問について解説をしていきます。
目次
1.住宅ローンの借り入れで手数料なし(無料)は存在するのか
住宅ローンの借り入れで手数料なし(無料)は存在するのか?といった質問があった場合、この手数料とは、何のことを指しているのか?という部分を明確にしておく必要があります。
一般に、住宅ローンの借り入れで手数料なし(無料)としているのは、住宅ローンにかかる「事務手数料」である場合が多く見られます。
しかし一方で、住宅ローンの保証料が割高である場合やどこか他の諸費用に事務手数料分の埋め合わせをしているというのが通常です。
そのため、住宅ローンの借り入れで手数料なし(無料)は存在するのか?といった答えとしては、「事務手数料が無料の住宅ローンはありますが、事務手数料と保証料が無料の住宅ローンはありません」となります。
つまり、住宅ローンの借り入れで手数料なし(無料)の住宅ローンを選んだからといって必ずしも得をするわけではありません。
総合的に住宅ローンを比較検討した場合にかえって高くなってしまう可能性も否めませんので要注意です。
2.住宅ローンの借入や返済にかかる手数料(諸費用)とは
住宅購入には様々な手数料が付きものですが、ここでは、住宅ローンの借入や返済に関係する手数料や諸費用について表にまとめて紹介します。
手数料等 | 内容 |
---|---|
事務手数料 | 住宅ローンの手続きにかかる事務的な作業に対して支払う手数料(金融機関に対して支払う手間賃) |
保証料 | 住宅ローンが支払えなくなった場合に、代わりに金融機関に対して代位弁済する保証会社に対して支払う保証料 |
印紙税 | 住宅ローンの契約をする時に貼付する収入印紙 |
登記費用 | 購入した住宅や土地の登記手続きのために司法書士に対して支払う報酬 |
登録免許税 | 購入した住宅や土地の登記手続きのために支払う税金(収入印紙を貼付するのが一般的) |
団体信用生命保険料(特約を付加する場合) | 3大疾病保障など特約を付加する場合にかかる(適用金利に上乗せされるのが一般的) |
繰上返済手数料(必ずかかるとは限らない) | 住宅ローンの返済期間中にまとまったお金を一時的に返済する場合に金融機関に対して支払う手数料 |
2-1.住宅購入諸費用は、住宅購入費用の2割かかるのって本当?
前述した住宅ローンの借入や返済にかかる手数料(諸費用)は、住宅購入諸費用にかかるほんの一部ですが、よく「住宅購入諸費用は、住宅購入費用の2割かかる」といった話を見聞きしたことがないでしょうか?
実際に住宅を購入する際にかかる諸費用というものは、「新築」「中古」「建売」といった住宅の違いから、住宅ローンの融資を受ける金融機関・購入した住宅の価格・依頼した司法書士・団体信用生命保険の特約の有無など、様々な条件によって算出されるものになります。
したがいまして「住宅購入諸費用は、住宅購入費用の2割かかる」とは一概に言い切ることはできません。
しかし少なくとも、司法書士へ支払う報酬や登録免許税や印紙税などのほか、加入義務とされている火災保険料は、手持ちの資金から支出されることが一般的です。
これを踏まえますと、100万円や200万円などある程度まとまったお金を用意できていることが望ましいと考えられます。
3.住宅ローン手数料で節約しやすい3つの手数料(諸費用)
住宅ローンの手数料や諸費用とされるものとして、主に節約できると考えられるものについて、ここでは3つ紹介し、参考までに団体信用生命保険料と火災保険料についても併せて解説を進めていきます。
3-1.事務手数料
事務手数料は、住宅ローンの手続きにかかる事務的な作業に対して支払う手数料(金融機関に対して支払う手間賃)のことをいいます。
住宅ローンを取り扱っている金融機関によって事務手数料が無料のところもあれば、「定額制」と「定率制」のように、ご自身の状況に合わせて選べるタイプのものもあります。
参考例となりますが、借入金額が3000万円・金利は表の通り・元利均等返済・ボーナス払いなしといった条件で、総支払金額の違いを見ていきましょう。
内容 | 定額制 | 定率制 |
---|---|---|
金利 | 1.53% | 1.37% |
毎月返済金額 | 92,296円 | 89,956円 |
総返済金額 | 38,764,668円 | 37,781,907円 |
事務手数料 | 32,400円 | 496,886円 |
総支払金額 | 38,797,068円 | 38,278,793円 |
事務手数料の定額制とは、たとえば、3万円プラス消費税と安く済ませることができる一方で適用金利が高めといった特徴があり、定率制は、適用金利が低いものの事務手数料が高いといった特徴があります。
目に見える金額では「定額制」を選んでしまいそうになりますが、総返済金額で考えた場合、定率制の方が少なくて済んでいることが確認できます。
このようなからくりが「手数料なし」といった住宅ローンには含まれているわけです。
3-2.保証料
保証料とは、住宅ローンが支払えなくなった場合に、代わりに金融機関に対して代位弁済する保証会社に対して支払うお金のことをいいます。
住宅ローンを融資する金融機関からすると、返済が滞ってしまうリスク回避をするために、融資をする顧客に対して保証会社の保証が受けられることを条件としています。
かつ、保証料負担は融資を受ける私たちが負担することを必須条件として定めています。
なお、保証料にも前述した事務手数料のように、「外払い方式」と「内払い方式」といった保証料の算出方法があり、保証料が適用金利に上乗せになる内払い方式の方が、外払い方式よりも負担金額が大きくなります。
保証料の算出基準はそれぞれの金融機関によって異なることから、直接問い合わせてみることが確実です。
ちなみに、住宅金融支援機構が取り扱っている長期固定金利の住宅ローン「フラット35」では、この保証料が無料であるといった特徴があり、ネット銀行でも保証料が無料の住宅ローンが増えてきていることから、比較検討する選択肢が幅広くなっていることは言うまでもありません。
保証料も事務手数料と同じように50万円から100万円程度が必要となる場合もあることから決して疎かにすることができない手数料(諸費用)になります。
3-3.繰上返済手数料
繰上返済手数料とは、住宅ローンの返済期間中にまとまったお金を一時的に返済する場合に金融機関に対して支払う手数料のことをいいます。
この繰上返済をする場合に、金融機関の中には繰上返済手数料としてお金を徴収する場合があることから、住宅ローンの検討段階でどのような取り扱いになっているのか確認しておくことが大切です。
なお、フラット35の繰上返済手数料は無料です。
なおかつ、インターネットから繰上返済をする場合は「最低10万円から」と非常に安くなっていることから、100万円単位のお金を用意しなくても少しずつ繰上返済できる点は大きな魅力だと言えるでしょう。
参考:フラット35・住・My Note でできること
参考:住宅ローン控除:借り換えや繰上返済する際の2つの注意点
3-4.参考:団体信用生命保険
団体信用生命保険は、住宅ローンにかかる諸費用とは言えませんが、死亡や高度障害以外の大きな病気でも保障がされたいと望んでおられる方は、別途、適用金利に上乗せされる方法で保障の厚い団体信用生命保険に加入することができます。
昨今では、金融機関によって団体信用生命保険に差別化や金利差が生じていることから、金融機関を比較検討する上で避けて通ることはできない項目と言えるでしょう。
3-5.参考:火災保険料
住宅ローンの融資が確定した場合、融資の実行を受けるまでに、購入した住宅に対して火災保険を掛けておかなければなりません。
これは、住宅ローンを融資する上での必須項目とされていることから、損害保険会社等が取り扱っている火災保険契約を締結しておかなければ融資が実際になされるまで時間を要することになってしまいます。
現在(平成29年12月)、火災保険は最長の契約期間が10年と定められています。
かつ、損害保険会社等によって取り扱っている火災保険の保険料には大きな差があることから、適当に決めてしまうことは、住宅ローンの諸費用を削減するための機会を逃してしまうことに繋がります。
したがいまして、できる限り早い内から火災保険を比較検討して、おおよその火災保険料を見積もっておくことが望ましいと思われます。
4.おおよその相場が決まっていて、節約が難しい手数料(諸費用)
ここからは、住宅購入においておおよその相場が決まっていて、節約が難しい手数料(諸費用)について紹介し解説を進めていきます。
4-1.登記費用
住宅購入にかかる登記手続きには、建物表題登記・所有権保存登記・所有権移転登記・抵当権設定登記といった様々な登記の種類があり、新築住宅・建売住宅・中古住宅のどれなのかによって手続きをしなければならない登記の数が異なります。
たとえば、土地を購入してその上に建物を建てるといった注文住宅(新築)の場合ですと、前述した登記手続きをすべて行う必要があり、土地家屋調査士や司法書士といった専門家の力を借りなければなりません。
これらの専門家に対して支払う報酬には、おおよその相場があるほか、どのような大きさの住宅なのかなどによっても金額が変わってくるため、一概に金額を提示することは難しいですが、基本的に諸費用を節約するのは難しいものとなります。
4-2.印紙税・登録免許税
印紙税は、住宅ローンの金銭消費貸借契約書に貼付する収入印紙をはじめ、司法書士に登記手続きを依頼する際にかかる登録免許税(通常は収入印紙で納めるのが一般的)などにかかるもので、借入の金額、住宅や土地の固定資産税評価額によってあらかじめ金額が決まっています。
これは、それぞれの法律に則った金額になりますので、基本的に節約をすることはできませんが、特例などによって、軽減税率が適用されることもあるため、ケース・バイ・ケースとなります。
4-3.不動産取得税
不動産取得税とは、住宅や土地を購入した場合に1回限り、納めなければならない税金のことをいいます。
不動産取得税の金額は、新築なのか中古なのかによって計算の仕方が異なるほか、購入した住宅や土地の「固定資産税評価額」といった金額によって、納めるべき不動産取得税額が異なるため、基本的に相場といったものはありません。
広い土地に大きな住宅を建築すれば、当然、不動産取得税が高くなります。
このほか、築年数が古い中古住宅を購入したとしても、土地の固定資産税評価額が非常に高価である場合などは、不動産取得税がかえって高くなるといったことも時には考えられるため、住宅ローンの融資を受ける前にどの程度の税金額になるのか予測しておくことが大切です。
まとめ
住宅ローンは、融資条件や住宅購入諸費用を総合的に比較検討して決めることが重要であるのは言うまでもありません。
そのため、住宅ローンの手数料が無料といったことだけでは、目に見える部分だけで判断していることに繋がり、大変危険な住宅ローンの検討の仕方と言わざるを得ません。
あくまでも、総合的に皆さまに合っているかどうかが重要となりますので、時には、専門家にあたるFPや住宅ローンアドバイザーへ相談したりアドバイスをいただいたりしながら無駄のない住宅ローンを検討されることをおすすめ致します。