親子二世帯で同居生活をする場合、二世帯住宅の購入を検討されるはずです。
ただ、両親と一緒に住宅ローン返済をするとなると、いまいち仕組みがわかりづらいかと思われます。
この場合の親子で返済する「リレー返済(以下、リレーローンとします)」という住宅ローン商品があります。
そこで本記事では、フラット35におけるリレーローンの解説を下に申し込み条件やメリット、デメリットなどを幅広く解説していきます。
リレーローンには、大きな注意点もあるため、これから二世帯住宅を建てられる予定のある皆さま(特に子)は、しっかりとお目通しいただくことをおすすめ致します。
1.住宅ローン「親子リレーローン」とは
親子リレーローンとは、親の住宅ローンを将来、子どもが引き継ぐといった形式の住宅ローンのことです。借入時の年齢は、当初の債務者である親の年齢ではなく、子供の年齢で借入条件を設定できるローンになります。

お申込みご本人の年齢にかかわらず、後継者のお申込時の年齢をもとにお借入期間をお選びいただけます。
1-1.親子リレーローンの特徴
親子リレーローンの特徴は、何と言っても「親の債務を子が引き継ぐ」ところにあります。
ただ、核家族化が進んでいる現代におきましては、あまり利用されることが少ない住宅ローンの返済の仕方であることが分かります。
実際のところ、親子リレーローンの取り扱いを行っていない金融機関があることから、その需要がいかに少ないかを物語っていると考えることもできると思われます。
1-2.親子ペアローンとの違いや収入合算について
親子リレーローンは、親の住宅ローンを将来、子どもが引き継ぐ住宅ローンになります。
一方、親子ペアローンとは、親と子がそれぞれの名義で1つずつ住宅ローンの契約をする住宅ローンのことです。

そのため、それぞれの年齢に応じた返済期間で住宅ローンの返済をする必要があります。
なお、収入合算につきましては、親子リレーローンも親子ペアローンもいずれも可能です。
1-3.親から子に住宅ローンのバトンを渡すタイミング
親子リレーローンは、それぞれの共有持分に応じた債務を返済していきます。それと同時に、親か子のいずれかが債務の返済が滞ってしまった場合、連帯して返済する義務を負っている住宅ローンです。
形式では親が最初に住宅ローンを返済し、節目で子が住宅ローンを返済していくといった返済の流れになります。
たとえ子供の返済が始まったとしても、支払いが滞った場合、親がお金を返す責任があるということです。
実際は、親も子もそれぞれ個々に独立して、住宅ローンの返済を行うことになります。定年退職など、1つの節目で抱えている住宅ローンを完済するなどが、オーソドックスな返済パターンと言えそうです。
このように考えたとき、親から子に対して住宅ローンのバトンを渡すタイミングというものは存在しないと考えられます。極端な話、いつでもバトンタッチできてしまうからです。
また、子の抱えている債務を代わりに弁済(べんさい:代わりに支払ってあげること)することによる「贈与」には細心の注意が必要です。わかりやすく言うと、子供の住宅ローンを親が代わりに支払ってあげる際のことです。
一般に親子間であれば、お互いに助け合うのがあたりまえであると考えます。
しかし、このような場合、仮に親子間であったとしても、利益供与(財産上の利益を与えること)があったものとみなされてしまうからです。
つまり、親から子に対する贈与と見られてしまう懸念が生じます。
このような場合、親の利益供与を受けた子に対して、贈与税がかかってしまう懸念が生じる恐れがあります。そのため、住宅ローンを完済する際は、事前に税理士やFPへ相談してから実行することを強くおすすめ致します。
1-4.親子リレーローンの住宅ローン控除について
親子リレーローンは、住宅ローンを引き継ぐ子が連帯債務者になります。連帯責務者とは、親・子両者とも責務、つまりお金を返済する義務があるということです。

そのため、住宅ローン控除は、主債務者である「親」および連帯債務者である「子」のいずれも適用が可能です。
ただし、親子間の共有持分などによって、適用額が異なる点にあらかじめ注意が必要と言えます。
2.親子リレーローンの審査・申し込むための条件
親子リレーローンを申し込むための条件は、細かく設定されているほか、金融機関によって条件が異なります。
親子リレーローンを検討されている方は、はじめに事前確認を忘れないように努めることをおすすめします。
これを踏まえたうえで、この項では、親子リレーローンに申し込むための条件について、詳しく解説させていただきます。
2-1.親子リレーローンを申し込める年齢に制限はあるのか
Q:申込者の年齢に制限はありますか。
A:年齢は申込時現在、70歳未満の方となります。
なお、親子リレー返済をご利用いただく場合は、70歳以上の方でもお申込みいただくことができます。フラット35:ご利用条件についてより引用
親子リレーローンの場合、親の年齢が70歳以上であったとしても申し込みが可能となっています。
ただし、融資が通る、通らないといった本質は年齢条件も含めて別問題になります。
2-2.住宅ローンを支払う後継者に条件はあるのか
親子リレーローンにおける後継者の条件は以下の通りです。
【親子リレー返済の後継者の要件(次の1から3までのすべての要件にあてはまる方】
- お申込みご本人の子・孫等(お申込みご本人の直系卑属)またはその配偶者で定期的収入のある方
- お申込時の年齢が満70歳未満の方
- 連帯債務者になる方(1名のみとなります。)
フラット35:ご利用条件についてより引用
あくまでも参考程度に留めていただき、融資の申し込みを検討している金融機関で詳細を確認するようにして下さい。
2-3.親子リレーローンの返済期間はどのように決めるのか
親子リレーローンの返済期間は、以下のイメージ図を見ると分かりやすいでしょう。
〈例〉お申込時に、お申込みご本人が60歳3か月、後継者が30歳3か月の場合
- 親子リレー返済を利用しない場合のお借入期間:80歳-61歳=19年
- 親子リレー返済を利用する場合のお借入期間:80歳-31歳=49年
→ 35年(最長)フラット35:ご利用条件についてより引用
そもそも、親子リレーローンを利用せず61歳で住宅ローンを借りるということは、無謀(ほぼ不可)であることは言うまでもありません。
子を住宅ローン債務の後継者とすることで、子供の年齢を基準として、返済期間が決定される仕組みとなっています。
2-4.親子リレーローンはいくらまで収入合算できるのか
フラット35の場合は、親子リレーローンにおける収入合算は、年収を限度とした全額となっております。
ただし、融資の申し込みを検討している金融機関によって、収入合算できる金額の範囲が異なります。そのため、こちらも詳細を確認するようにして下さい。
3.親子リレーローンのメリット
親子リレーローンのメリットとして、以下、3つの内容について紹介していきます。
3-1.契約者(親)が高齢であっても住宅ローンを申し込める
親子リレーローン特有のメリットとして、親が高齢であったとしても住宅ローンを申し込めることがあげられます。
実際のところ、親にある程度の資力があることや子が将来において安定した収入を確保することができる見込みが立っていることが前提でしょう。
3-2.長期(最大35年)の住宅ローンを組めるため、返済期間の短縮が防げる
親子リレーローンを利用すると、返済期間が子の年齢を基準として返済できます。これにより、長期、最大35年の住宅ローンを組めます。
そのため、親の年齢を基準とする場合に比べて、期間に余裕を持って返済を行うことができます。
考えてみればわかりますが、「19年」で返済するか「35年」で返済するかの差はかなり大きいです。35年で返済する方が、月々の返済金額が少なくて済むため、住宅ローンの返済負担も「19年」に比べ格段に軽くなります。
3-3.借入額を増やすことができる
親子リレーローンは、親と子の収入を合算することができるため、結果として借入額を増やすことができます。
親子の二世帯住宅を建築することを踏まえると、建築費用がそれなりにかかります。そのため、収入合算で借入金額を増やすことができるメリットは、大きいと考えることができます。
4.親子リレーローンのデメリット
親子ローンの仕組み上、1つの家「親」と「子」で1つの住宅(二世帯住宅)を建てるための住宅ローンであると言えます。
そのため、当たり前ではありますが、完済し終わるまで新しい住宅ローンを組めません。
たとえば、親が10年、子供が25年、計35年で完済する返済計画をしているとします。もし、「やっぱり両親とは別で住みたい」「マンションが欲しい」と思ったところで、借入できないということです。
ペアローンを組んでしまった以上、返済義務があるからです。
とはいえ、親子リレーローンを承諾している子供からすると、このパターンは考えづらいかと思われます。
しかし、もし、親子ゲンカをしたり心変わりしたりしても、完済し終わるまで新たな住宅ローンの借入は不可能であることは覚えておきましょう。
これを踏まえた上で、親子リレーローンのデメリットとして、以下、3つの内容について紹介していきます。
4-1.相続トラブルやその他のトラブルが生じる懸念がある
親子リレーローンは、あらかじめ親と子の共有持分を決めることになります。
ただ、仮に兄弟姉妹がいる場合、時として相続時の公平性が保たれなくなってしまう可能性も生じることから、相続トラブルに発展してしまう懸念が生じます。

このほか、親が退職をしたことによる収入減や、親子リレーローン中の親子間でのトラブルがあった場合も同様です。
何かしらの問題が生じる懸念があることを、あらかじめ考慮しておく必要性があります。
4-2.住宅ローンの借り換えが難しい
仮に前述したような親子間でのトラブルがあった場合、どこか別のところに家を購入しようと考えるかもしれません。
しかし、すでに親子リレーローンで住宅ローンの債務を抱えているだけでなく、連帯債務者という立場になっています。
ことを踏まえますと、住宅ローンの借り換えをするのは実質的に難しいと推測されます。
抱えている債務の状況によっては、他のローン(車など)ですら申し込みができない場合も懸念されます。そのため、1人の信用で住宅ローンを申し込む単独ローンよりも、親子リレーローンは注意が必要と言えます。
4-3.団体信用生命保険の加入は親か子のいずれか1名のみ
親子リレーローンの場合、団体信用生命保険の加入は、親か子のいずれか1名のみしか加入することはできない決まりになっています。
住宅ローンのご契約者(債務者)が2人いる場合 (親子リレー返済を含みます。)
どちらか1人が加入することができます。
万一のときには、ご加入された方の住宅の持分、返済額等にかかわらず、残りの住宅ローンが全額弁済されます。どちらの方が加入するか次の点を考えて慎重にご検討ください。
- 保障は満80歳の誕生日の属する月の末日までであること
- 住宅ローンのご契約者(債務者)のうち加入していない方が死亡または所定の高度障害状態になられても債務弁済されないこと
- 返済途中でのご加入者の変更および3大疾病付機構団信への加入変更はできないこと
たとえば、親子の内、親が団体信用生命保険に加入した場合、子は団体信用生命保険へ加入することができないことになります。
また、親の年齢が80歳に到達すると、親が加入していた団体信用生命保険の保障が消滅してしまいます。
そして、仮に親が死亡した場合や高度障害に陥ってしまった場合の保障は、「親の住宅ローン債務に限定」されてしまう点も注意が必要です。
4-3-1.親子リレーローンにおける子の保障対策方法
親子リレーローンにおいて、親が団体信用生命保険に加入している場合、子に対しても何らかの保障対策をしておく必要があります。
一例として、80歳になった親の団体信用生命保険の保障が消滅してしまった場合を考えてみましょう。
このとき、実は新たに子が団体信用生命保険へ加入することができるため、その制度を利用して保障を確保しておくといった方法もあります。
Q:連帯債務で住宅ローンを利用しており、うちひとりが機構団信に加入しています。住宅ローンの返済がまだ残っているのですが、その機構団信の加入者がまもなく80歳になるため、機構団信の保障が終了します。保障終了に伴って、連帯債務者である私が機構団信特約制度に加入することはできますか?
A:加入申込みすることができます。機構団信、3大疾病付機構団信のいずれかを選択できますが、それぞれの加入要件を満たしている必要があります。なお、健康状態等によってはご加入いただけない場合があります。
団体信用生命保険は、生命保険であることから、健康状態などの問題が生じた場合に加入することができません。
そのため、子が持病を抱えていたり直近に入院履歴があったりする場合、または大病を発症したことがある人は注意が必要です。
団体信用生命保険の加入条件を満たさなければ、この方法が利用できない可能性が含んでいることをあらかじめ知っておく必要があります。
このように考えた時、最も確実な方法は、親子リレーローンが決まった際に「子を対象にした収入保障保険や定期保険」に加入することでしょう。
収入保障保険や定期保険は、保険の対象となる人(被保険者と言います)が死亡や高度障害に陥ったときに、保険金が支払われる死亡保険のことです。
少ない保険料で、大きな保障が得られる特徴があります。
支払保険料は掛け捨てですが、団体信用生命保険と同じ効果が期待できます。さらに、子の年齢が若ければ若い程、支払保険料は安く済みます。契約の仕方によっては、団体信用生命保険の保険料よりも格安で済ませられるメリットが得られます。
そして、すでに解説したように、親が80歳に到達した後における子の新たな団体信用生命保険の加入におきまして、「諸事情により加入することができない」といった最悪のリスクをあらかじめ避けることもできます。
何事も事前に対策をしておくことで、リスク回避できるのです。
親子リレーローンの最大の弱点は、親が退職や年金生活で収入減になってしまうことによる「子の負担増」と考えられます。子が二世帯を養うことになるからです。
しかしながら、子供に頼り切ってしまうことは大きなリスクです。
もし仮に、親の住宅ローンの債務を引き継ぐ子が先に亡くなった場合、親が完済できる資力を持ち合わせているのかが問題となります。
子を亡くしただけでなく、家まで無くする最悪な事態が想定できることを踏まえますと、対策は必須です。
子が加入する収入保障保険や定期保険の保障額は「親子が抱えている住宅ローン債務をすべて完済できる金額」に設定しておく必要性があると考えることができます。
まとめ
本記事ではフラット35のホームページを参考に、親子リレーローンの解説やメリット、デメリットなどについて幅広く解説させていただきました。
親子リレーローンは、「特殊」な住宅ローンの返済方法です。そのため、特にデメリットをよく理解した上で活用することが大きなポイントになると言えます。
事実として、親子間、兄弟姉妹間でのちょっとした問題が大きな問題に発展することが十分に予測できます。そのため、親子リレーローンが決まった場合は、まずは思い浮かぶことの対策を早急に実行するべきだと思われます。
そのためには、税理士やFPといった専門家のアドバイスを参考にして、円滑かつ円満な親子リレーローンを申し込んでいくための事前対策が重要であると考えられます。