住宅ローンの完済まで、ずっと金利が変わらない「フラット35」は、住宅ローンを長期に渡って計画的かつ安全に返済したいと思われている方にとって最適な住宅ローンと言えます。
一方、フラット35は、民間の金融機関が取り扱っている住宅ローンと比較すると、特殊な部分も多く併せ持っている住宅ローンであることも確かです。
たとえば、本記事で主に解説していくフラット35における「収入合算」におきましても、民間の金融機関では「ペアローン」が使える場合があります。
それに対してフラット35では、ペアローンが使えないとされています。
少々、特殊なフラット35ですが、本記事は、フラット35について情報公開している住宅金融支援機構のホームページを下に、フラット35における取り扱いについて詳しく解説していきます。
目次
1.フラット35ではペアローンが使えない
そもそもペアローンとは、同居予定の親子や夫婦が、1つの住宅を購入する際にそれぞれ別々に住宅ローンを組むことを言います。


ペアローンの特徴としては、住宅ローンの契約が2つに分かれ、親子や夫婦がそれぞれの名義で1つずつ住宅ローンを組むことになります。
一方、フラット35では、ペアローンで住宅ローンの申し込みをすることができません。
そのため、1人の収入では住宅ローンの融資が通過しづらい場合でフラット35を利用するには「連帯債務」を設定する必要があることも合わせて確認することができます。
1-1.フラット35は、ペアローン以外の「連帯債務」なら収入合算可能
住宅ローンで収入合算をする方法には、ペアローンのほか、「連帯債務」「連帯保証」という方法があります。
そもそも収入合算とは、住宅ローンの審査基準を通過するのに1人の収入では厳しいと判断される場合に使います。
具体的には、配偶者や同居をする予定の両親と、収入を合わせてローンの申し込みを行うことを言います。
一般に収入合算をすると、1人の収入で住宅ローンを組む単独ローンよりも、借入可能額が大きくなるメリットが得られます。
また、住宅ローンの審査に通過しやすくなる、希望の融資金額が借りやすくなるなどのメリットもあわせて得られることになります。
連帯保証 | 連帯債務 | |
---|---|---|
用語の説明 | ●ローンの主たる債務者(実際に借りる人)と連帯して債務を負う保証のことです。 ●その連帯保証債務を負う人を連帯保証人といいます。 | ●同一の債務について、複数の債務者が債務の全部を各自独立して負担する債務のことです。 ●その連帯債務を負う人を連帯債務者といいます。 |
特徴 | ●連帯保証人・連帯債務者は催告・検索の抗弁権がありません。 ●債権者から支払いの請求を受けたら「先に債務者本人に請求せよ」などと、主張する権利(催告の抗弁権)を持ちません。 ●主債務者に財産があるにもかかわらず、債権者から競売等の執行を受けたときに、「先に債務者の財産から執行せよ」などと主張する権利(検索の抗弁権)を持ちません。 |
出典:フラット35:〈ポイント2〉「連帯保証」、「連帯債務」とは?より引用
「連帯保証人」・「連帯債務者」は、単なる「保証人」などと違い、主たる債務者と同じ責任を負うものです。
連帯債務と連帯保証の違いにつきましては、同サイト内で解説している記事の方が非常にわかりやすくなっているため、以下の記事を参考になされることをおすすめ致します。
2.フラット35を収入合算で申し込むための条件
フラット35で収入合算をするための条件は、以下の通りとなっています。
申込者の直系親族または配偶者(イメージ図のグレーの範囲であれば可能)

出典:フラット35【参考】 親族の範囲を参考に著者作成
- 申込時の年齢が70歳未満
- 申込者と同居する方
- 連帯債務者となる方(1名のみ)
上記の条件にすべて該当される方が、フラット35で収入合算することが可能になります。
2-1.フラット35で収入合算できる金額はいくらなのか
フラット35で収入合算できる金額は、「収入合算者の年収の全額まで」が可能となっています。
たとえば、夫婦共働きであったと仮定し、夫の年収が400万円、妻の年収が200万円であったとします。
このとき、収入合算者である「妻」の年収の全額「200万円」までが合算可能と読み取ることができます。そのため、結果として世帯年収600万円(400万円+200万円)として、フラット35の審査が受けられるといったイメージとなります。
2-2.フラット35で収入合算した場合のお金の上限はあるのか
フラット35で収入合算する場合において収入合算者の年収上限は設定されておりません。
ただし、合算額が収入合算者の年収の50%を超える場合には、返済期間が短くなる場合がある点には注意が必要です。
以下、フラット35公式ホームページより引用です。
2. 収入合算できる金額
収入合算できる金額は、収入合算者の年収の全額まで可能です。ただし、合算額が収入合算者の年収の50%を超える場合には、返済期間が短くなる場合があります。詳しくは下記の例を参照ください。
3. 収入合算した場合のお借入期間の上限
親子リレー返済を利用される場合は、下記にかかわらず後継者の年齢を基に計算します。
最長返済期間=80歳-「次の1または2のうち年齢が高い方のお申込時の年齢(1年未満切上げ)」
- 申込本人
- 合算額が収入合算者の年収の50%を超える場合の収入合算者
例 お申込みご本人(30歳)の収入が400万円、収入合算者(55歳)の年収が600万円の場合1 収入合算者の年収(600万円)を全額合算することができます。この場合、収入合算者の年齢(56歳(1歳未満切上げ))が基準となりますので、お借入期間は24年が最長となります。
2 合算額を300万円(600万円の50%)以下とする場合には、お申込みご本人の年齢(31歳(1歳未満切上げ))が基準となりますので、お借入期間は35年が最長となります。
ざっくり解説してしまいますと、フラット35で収入合算をする場合において返済期間が短くなってしまう恐れがある場合とは、「収入合算者の年齢が45歳以上の場合」と上記の解説から読み取ることができます。
このように読み取れる理由として、フラット35における完済時年齢が「80歳」であることがあげられます。
また、フラット35における最長返済期間は「35年」であることから、80歳から35年を差し引いた45歳が単純に最長返済期間である「35年」のボーダー年齢になると考えることができます。
ただし、45歳1ヶ月といったように1ヶ月は1年として切り上げ計算することを考慮します。
つまり、厳密には「45歳になるまで」と考えるのが自然です。
したがいまして、20代・30代・40代前半の夫婦がフラット35を収入合算で申し込む場合におきましては、年収金額の全額を合算できると推測されます。
このことから、フラット35の審査に通過しやすくなるだけでなく希望の融資が実行されやすくなるメリットが得られると考えることができるわけです。
3.フラット35を単独と収入合算で申し込んだ際の違いを検証
ここからは、フラット35で住宅ローンを単独で組んだ場合と収入合算で組んだ場合における違いについて比較して検証していきます。
シミュレーション条件は以下の通りです。
- 借入金額:3,000万円
- 金利:固定金利1.5%
- 返済期間:35年
- 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし)
- 収入合算における夫婦の持分:夫3分の2・妻3分の1
- 返済月:1月から開始
比較項目 | 単独ローン(夫のみ) | 収入合算(夫) | 収入合算(妻) |
---|---|---|---|
年末住宅ローン残高 | 29,343,233円 | 19,562,155円 | 9,781,078円 |
1ヶ月の返済金額 | 91,855円 | 61,236円 | 30,618円 |
初年度 住宅ローン控除額 | 293,400円 | 195,600円 | 97,800円 |
結論から申し上げますと、フラット35で住宅ローンを単独で組んだ場合も、収入合算で組んだ場合も世帯の負担金額は全く変わりません。
1ヶ月の返済金額につきましては、端数処理の関係上1円の誤差が生じておりますが、初年度住宅ローン控除額におきましては単独ローン、収入合算共に世帯で同額となっていることが分かります。
- 単独ローン 91,855 ≒ 収入合算61,236(夫)+30,618(妻)(端数処理で1円の誤差)
- 初年度住宅ローン控除 293,400 = 195,600(夫)+97,800(妻)
住宅ローンの返済金額は、「金利」「返済期間」「返済方法」の3つの要素によって決定される仕組みになっています。
そのため、単独ローンであっても収入合算であっても負担するべき金額や住宅ローン控除といった制度の適用が世帯によって変わることはありません。
そのため、それぞれの世帯にとって単独ローンが有利なのか収入合算が有利なのか比較検討して決めることが大切になります。
4.夫婦で住宅ローンを返済していく場合、はたしてペアローンが良いのか?(追加)
フラット35ではペアローンが利用できない旨をすでに解説致しました。
実のところ、夫婦でペアローンを組む場合も夫婦が連帯債務で住宅ローンを組む場合も「要所のメリットに変わりはない」のです。
ここで言う「要所のメリット」とは、収入合算をすることで単独ローンよりも、借入可能額が大きくなるメリットが得られることです。
また、住宅ローンの審査に通過しやすくなる、希望の融資金額が借りやすくなるなどのメリットもあわせて得られることがまずはあげられます。
上記2つのメリットは、ペアローンおよび連帯債務いずれも得られる共通メリットになります。
また、夫婦それぞれが適用できる住宅ローン控除におきましても、ペアローンおよび連帯債務のいずれの方法でも適用可能な共通メリットになります。
このように考えますと、ペアローンや連帯債務のメリットではなくデメリットを比較するなどして、どちらの返済方法が自分たちに適しているのか判断する必要性があることになると思われます。
内容 | ペアローン | 連帯債務 |
---|---|---|
夫婦の連帯保証の有無 | 無し | 有り |
たとえば、3,000万円の住宅ローンをペアローンで夫婦がそれぞれ1,500万円ずつ借りたとします。
仮に数年後に夫が自分の1,500万円の住宅ローンをすべて完済した場合、妻の抱えている住宅ローンを返済する義務はありません。
しかし、一般的に考えますと何か違和感を覚えてしまわないでしょうか。
夫婦間であれば、「自分の住宅ローンはすべて返したから後は知らない」といったことには、通常、ならないですよね。
ペアローンよりも連帯債務の方が夫婦間で適している返済方法と言える可能性はあると思われます。
また、ペアローンは、住宅ローンの契約が夫と妻の2つになることから、ローンの契約にかかる諸費用などが連帯債務に比べて多くなってしまうデメリットがあります。
夫婦間で余程の考え方がない限り、住宅ローンの契約が1つで同じメリットが受けられる連帯債務の方が夫婦で住宅ローンを返済していくには有利な可能性が高いと推測されます。
まとめ
フラット35でペアローンは利用できないとしても、夫婦が連帯債務で返済していくことでペアローンと同じメリットが得られることを本記事からご理解できたと思います。
また、併せてペアローンと連帯債務の大きなデメリットによる違いも紹介しました。
時にペアローンよりも連帯債務の方が有利な可能性が高いということが確認できました。
フラット35は、民間の金融機関が取り扱っている住宅ローンよりも審査が通りやすく融資が実行されやすい住宅ローンであることは間違いありません。
そのため、金融機関の住宅ローンの審査に仮に通過できなかったとしてもフラット35であれば審査が通過し融資が実行されることもしばしばあります。
現状、自社(金融機関)の住宅ローン審査に通過しなかったとしても、フラット35であれば融資が実行されるかもしれないといった「含み」ですら教えてくれない金融機関が残念ながらおそらくほとんどでしょう。
つまり、住宅ローンの申し込みをする前にあらかじめ幅広く正しい知識を身に付けておかなければ、自分たちにとって最適な住宅ローンは組めないことにつながります。
審査が甘いフラット35を選ぶなら超低金利の今がチャンス
全期間固定金利であるフラット35を選ぶなら、間違いなく今がチャンスです。歴史的な超低金利が今も続いているものの、一生続くことは考えられないからです。
今後、少しずつ金利は上がっていくことが予想されるため、固定金利(当初10年など)や変動金利は金利上昇のリスクがあります。
その点、フラット35であれば契約とともに総支払額が確定します。
仮に金利が急激に上がっても、安定した支払いが可能です。
金利の変動で住宅ローンの支払いで破産する人は多いですが、フラット35なら家賃と同じように支出が見えるので家計のやりくりが簡単になります。
また、審査が緩いため、「年収が低い」「転職したばかりで勤続年数が少ない」などでも融資してもらえる可能性が高いです。
これらは融資条件に含まれていないからです。また、「自営業の方」や「派遣社員(パート・アルバイトを含む)」であっても審査が通りやすいのはフラット35だけになります。
「低金利のまま、最後まで安定した支払いを希望される方」や「審査に不安があるという方」はフラット35を選ぶようにしましょう。

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