消費税の増税における住宅購入の経過措置が分かる5項目

住宅購入は高額であるため、消費税が増税になる影響はとても大きいです。そのため、「消費税が上がる前に住宅を購入したい」と考える人はたくさんいます。

しかしながら、消費税が上がるといった理由だけで住宅を購入することは大変危険です。住宅ローンを借り入れるということは、長期間に渡って数千万円といった多額の借金を抱えることになるからです。

つまり、消費税の増税分に捉われすぎるあまりに、住宅ローンの返済が滞ってしまっては本末転倒になってしまいます。

実は、住宅購入は数千万円を借り入れる高額な買い物になるため、増税による負担を少しでも小さくするために、経過措置(けいかそち)と呼ばれる制度が設けられています。経過措置の要件を満たすことで、たとえ家に住むタイミングが消費税が上がった後であったとしても、今の税率が適用されます。

ただ、経過措置はどのようなケースが適用されて、結果的にどれだけの恩恵があるのかを理解している人は少ないです。

そこで本記事では、消費税の経過措置について図解を交えて分かりやすく解説していきます。これを読むことで、住宅購入の仕方や検討時期を再確認することができるはずです。そして、「あなたにとって家を買う最適なタイミングはいつなのか」を見つけることができるようになります。

1. 消費税の経過措置とは

まず、消費税の経過措置について説明します。経過措置とは、増税する日にいきなり税率が変わるのではなく、不利益や不都合などを極力減らすために取られる一時的な措置や対応などのことを幅広く指す表現です。

たとえば、住宅の購入であれば税率が1%変わるだけで数十万円以上の負担を強いられることになります。このとき、経過措置を取らなければ、「税率が上がる前に家を買いたい」と考える駆け込み需要など、多くの混乱を招いてしまうことになりかねません。

その他にも、消費税率が増税することよって、多くの人が突然損をしてしまうことが考えられます。

そこで、消費税の経過措置を導入により、増税の影響を「極端」ではなく「緩やか」にさせる効果があります。これによって、損をする人を少なくさせるといった一石二鳥の効果が認められるのです。

住宅購入の経過措置であれば、以下の図を見るだけで税率の適用を理解できます。

経過措置のイメージ

1-1.前回の消費税が5%から8パーセントになった際の経過措置

上記図のような経過措置は、2014年4月1日に税率が5%から8%になった際も実行されました。従って0、今後10%に増税される場合における経過措置も前回と同様の仕組みと考えて差し支えないでしょう。

1-2.増税によって、どの程度の負担額が増えるのか

住宅購入を例にあげて消費税の増税を考えた場合、おおまかなところで、「土地は非課税」、「建物は課税」といったルールが消費税法といった法律で定められております。

たとえば、消費税が8%の状態で土地が1,000万円、建物が2,000万円の注文住宅を購入したと仮定します。このとき、課税対象は建物代金の2,000万円のみであり、土地代金1,000万円に対して消費税は課税されません。

つまり、「2,000万円の建物に対してのみ課税される」ため、結果として消費税額は、2,000万円 × 8% = 160万円ということになります。

消費税が10%に増税した場合も同様の計算になるため、2,000万円 × 10% = 200万円ということになり、8%から10%の増税の影響は40万円生じていることがわかります。

消費税の増税で特に注意しなければならないのは、「住宅購入諸費用」です。住宅購入諸費用も金額が高いことに加え、消費税がかかるものとそうでないものが存在します。

こちらについては、「4.増税して負担額が増えるもの」でより詳しく解説していきます。

2.増税前に家を買う際のタイミング

消費税の経過措置によって、「いつまでに契約をすれば、今の税率が適用されるのか」といった点はやはり気になるところだと思います。ここでは、イメージ図を掲載しながら消費税の経過措置について具体的に解説していきます。

2-1.指定日より前に契約をすれば、増税前の消費税が適用

増税の指定日より前に契約をした場合のイメージ

上記図のように、適用期限である平成28年9月末までに住宅購入の契約を交わすことで、消費税の適用税率は「8%」になります。仮に消費税の増税が平成29年4月に行われ、住宅の引き渡しが「10%」の増税以降であったとしても、10%の消費税が適用されることはありません。

2-1-1.指定日前に契約をしたが、それ以降に契約変更があった場合

増税の指定日以降に変更契約をした場合のイメージ

こちらの例はあまり見られないパターンですが、一つのパターンとして触れておきます。仮に適用期限である平成28年9月末までに住宅購入契約を交わした後に、契約変更をした場合には、結果として適用期限後の契約となるため「10%」の消費税率が適用されることになります。

ただ、途中の契約変更は、売り主・買い主、双方の負担が大きくなるため、実際のところあまり一般的ではありません。

2-1-2.駆け込み契約が増加すると、引渡しまでに時間がかかる

建売住宅や分譲マンションの売買の場合は、基本的に早い者勝ちといったこともあり、駆け込み需要といった問題に発展しにくいと考えられます。

一方、注文住宅を消費税の経過措置を意識して購入することは、結果として駆け込み契約につながることになります。

それぞれの不動産業者は、着工から引き渡しまでの工期に早くとも3~4ヶ月程度の日数を要することが考えられます。さらに、住宅ローンの申し込み手続きなどを考慮すると、1年程度の期間が必要なこともしばしば見受けられます。

注文住宅の入居期間

余裕のない駆け込み契約は、消費税の経過措置の優遇が確実に受けられる保証がない上に、業者とのトラブルの元になってしまう可能性があります。このようなリスクを防ぐために、できる限り、駆け込み契約は避けるべきでしょう。

2-2.契約が適用期限を過ぎても、増税より前に引渡を受ければ税率はそのまま

適用期限が過ぎても、増税前に引渡しがあれば税率は変わらないイメージ

上記図のように、平成28年9月末日を超えてから契約が成立したとしても、物件の引き渡しが平成29年4月前、いわゆる10%への引き上げ前の場合においては、消費税率が8%のままになります。建売住宅の売買といった早期契約や早期引渡の場合、上記図のパターンにあてはまることが多いと考えられます。

実際に、以下の図を見て分かる通り、建売住宅は契約から引渡し・入居までの期間が短いです。建売住宅はマンションと同じように、間取りやデザインが決まっているため、気に入った物件があればすぐに契約できます。

建売住宅の入居期間

一方、以下の図は、物件の引き渡しが10%へ増税した後になっているのがわかります。

適用期限の後に契約をして税率が10%になってしまう際のイメージ

この場合、10%の消費税率が適用されるため、増税前に物件の引き渡しを受けるのが大きなポイントになります。

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2-3.建売住宅や分譲マンションの場合

建売住宅や分譲マンションの場合の経過措置

上記図から見てもわかる通り、建売住宅や分譲マンションにおいても、注文住宅と消費税の経過措置の取り扱いは変わりません。

そのため、建売住宅や分譲マンションを購入する場合、物件の引き渡しを10%の増税前に行なわれるような売買契約を締結するのが望ましいと考えられます。

なお、注文住宅と建売住宅の違いが分からない場合、「建売住宅と注文住宅の価格や特徴を6つの項目別で徹底比較」で詳しく解説していますので、確認しておきましょう。

3.増税前に家を買うべきか

「消費税が8%から10%へ増税される前に住宅を購入してしまいたい」という考えは多くの方がお持ちだと思います。こちらにつきましては、本記事のまとめで解説していきますが、ここでは引き続き解説文を読みながら自身の考えをまとめていただければと思います。

なお、これから新築住宅の購入を検討している人であれば、「新築一戸建てを買う前に知らなければならない3つのポイント」を必ず確認しておきましょう。

3-1.注文住宅の場合、早くても1年程度の時間がかかる可能性がある

不動産業者によって異なりはあるものの、注文住宅を建築する場合、見積もりや打ち合わせのほか、住宅ローンの申し込みなどさまざまな手続きを経て、ようやく着工に至ることになります。そのため、総合的な時間を考慮すると、早くても1年程度の期間を要することになる可能性があります。

もし、注文住宅の購入を検討しているのであれば、増税を見越してすぐにでも動き出す必要があります。

ただし、消費税の増税によって住宅購入にかかる負担が増加するのは間違いありませんが、そのための軽減措置として、後述する「すまい給付金」や「住宅ローン控除(減税)」といったものがあるのです。これらは、増税による負担を少しでも少なくするために、お金をもらえたり、支払う税金を控除したりできる制度です。

このことから、消費税が増税になるといった理由だけで、大きな借金を抱えることは危険な判断であることを、理解できるかと思います。後で後悔してしまう可能性が極めて高くなることを、決して忘れてはなりません。

3-2.住宅購入費用を安く抑えたい場合、建売住宅を検討する

「住宅購入費用を安く抑えたいと」考えている人であれば、建売住宅の購入を検討してみるのも良いでしょう。

そもそも建売住宅とは、既に出来上がっている、あるいは間取りやデザインが決まっていて、これから建てられる住宅のことを指します。マンションの一室を購入する場合と同じように、完成している家を選んで買うといったイメージです。同じ分譲地内に、似たような家が並んでいるのが典型的な建売住宅です。

建売住宅のイメージ

また、建売住宅は注文住宅と違い、住宅諸費用など価格が抑えられているだけでなく、時が経つほど物件の価格が安くなるといった特徴があります。

基本的には、早い者勝ちではあるものの、安くなったタイミングで購入することができます。また、間取りや設備が自分たちの希望に合致していれば、検討してみるのも良いかもしれません。

特に、不動産業者が「モデルハウス」として建てた家が売りに出された時は、1つの狙い目であると思います。モデルハウスという名であるように、不動産業者は見に来てくれたお客様に「良い物を見せたい」と考えるのが一般的です。

そのためモデルハウスに設置している設備等のグレードは、かなり上位の物であると言ってまず間違いありません。

建売住宅のメリット・デメリットについてさらに詳しく知りたい場合、「建売住宅の5つのメリットと4つのデメリット・注意点」で分かりやすく解説しています。

3-2-1.消費税の内訳は見積書で確認できる

土地に対して消費税がかからないことは、先に解説した通りです。このとき、不動産業者から提示された見積書を確認することで正確な消費税額が把握できます。

また、8%から10%へ消費税が増税されることによる負担増は免れることはできないものの、これを軽減するための制度として、後述する「すまい給付金」があります。

要するに、増税による負担を減らすために、国がお金を出してくれたり税金を控除してくれたりするということです。これにより、増税後であっても、住宅を購入しやすいような仕組みになっています。

駆け込み契約のように、消費税の増税で住宅購入を先急ぐことは、かえってあなたの首を絞めてしまうことになりかねないため、慎重に検討してから契約をすることが大切です。

4.消費税が増税することで負担額が増えるもの

住宅購入において消費税がかかるものは、建物の他にも以下で紹介するようなものがあります。消費税が8%から10%に増税されることで、負担も増加するものをここでは解説していきます。

4-1.住宅の価格(建築費用)

先に解説しましたように、住宅の建物部分は消費税がかかります。

4-2.建物以外の負担額(外構、諸費用など)

敷地駐車場の砂利を舗装する外構工事費用や地盤改良費用をはじめ、登記をするための司法書士への報酬といった、いわゆる住宅購入諸費用は消費税がかかります。

4-3.その他費用(家具、家電、引越し代、ローン手数料など)

新しい新居に引っ越すための費用、家具や家電の新調、住宅ローンを組むために金融機関へ支払う事務手数料などは、すべて消費税がかかります。

4-4.消費税がかからない諸費用についても解説

土地の購入代金をはじめ、建物に対して加入する火災保険料、銀行とのローン契約に必要な収入印紙や保証料といったものは、消費税法といった法律で「非課税」とされているため、税金を支払う必要はありません。

5.増税以降の負担を軽減する制度

住宅購入における代表的な負担軽減制度には、「住宅ローン減税」と「すまい給付金」の2つがあります。どちらの制度も住宅購入者および、住宅購入検討者のみなさまには無くてはならない制度です。

これらの制度については、同サイト内で詳しく解説している記事が掲載されているため、本記事では制度の概要のみを紹介していきます。

5-1.住宅ローン減税(控除)

住宅ローン控除のイメージ

住宅ローン減税は、すでに多くの方にとってなじみ深い制度になっています。具体的には、その年の12月31日の住宅ローン残高に応じて、同じ年に納めるべき所得税や住民税が大きく軽減されるといった制度になります。

住宅ローン減税については、同サイト内の「住宅ローン控除(減税):必要書類から確定申告の方法まとめ」に記載されているため、合わせて読んでみることをおすすめします。

5-2.すまい給付金

すまい給付金は、消費税率引上げによる住宅取得者の負担をかなりの程度緩和するために創設した制度です。消費税率8%時は収入額の目安が510万円以下の方を対象に最大30万円、10%時は収入額の目安が775万円以下の方を対象に最大50万円を給付するものです。

出典 国土交通省 すまい給付金ホームページより引用

すまい給付金の解説文を見ますと、収入制限があることがわかります。これは消費税の増税によって収入が低い世帯の負担がより増加することから、この負担軽減策としてすまい給付金の制度があるわけです。

すまい給付金の詳しい解説は、同サイト内の「収入が少ないほど多く恩恵を得られるすまい給付金とは」で分かりやすく説明しています。また、住まい給付金の受け取り方法については、「すまい給付金を受け取る方法:申請手続きと必要書類と全手順」に記載されておりますので合わせて読んでみることをおすすめします。

まとめ

本記事では、消費税の経過措置について解説しました。住宅購入において最も大切なことは、住宅の価格ではなく「住宅ローンの返済を滞ることなく実行することができるか」といったことです。

つまり、消費税が増税するからといった目先のことに捉われて住宅を購入することは間違っているのと同時に、せっかく購入した住宅を将来手放すことにもなりかねないことを、一人でも多くの人に理解していただければ幸いです。

これは、安易な購入で資金計画をしっかり立てなかった場合における「後悔は先に立つことはない」といった意味でもあります。

特に、不動産業者は消費税の増税を住宅販売のうたい文句にしているパターンが多く見受けられるため、決して顧客よりの情報発信とは言えません。

この情報発信にぶれることがないようにするためには、再度、本記事を確認して解説内容を理解することでしょう。もし、わからない場合、FPなどの専門家へアドバイスを求めることで、自己の資産を守る行動も必要になってくると考えられます。