住宅ローンの申し込みから実際に融資が実行されるまでの審査期間は、新たなローンを組むことや消費者金融や銀行系カードローンを利用したキャッシングをすることは厳禁です。
これは、仮に、住宅ローンの融資実行が決定していたとしても、その決定が白紙になってしまう可能性が生じ、結果として大きな問題を生じさせてしまうことがあるためです。
そこで本記事では、住宅ローンの審査が通った後、融資実行までのキャッシングなどが、なぜ問題になるのかについて詳しく解説を進めていきます。
目次
1.住宅ローンの融資実行前のキャッシング事例から重要な注意点を知ろう
はじめに、住宅ローンの融資実行前のキャッシング事例から重要な注意点について、ヤフー知恵袋の質問内容を見ながら確認していきましょう。
住宅ローン融資実行前の消費者金融でのキャッシングについて教えてください
住宅ローン融資実行前の消費者金融でのキャッシングについて教えてください。
現在の私の情報は下記になります。
- 36歳 会社員 男性 既婚
- 年収 800万
- 住宅ローン 4700万
本審査は問題なく分割融資の1回目の土地分は4月に融資実行済み。
2回目は12月中旬融資実行予定。
この状態で無知な私は10月末に消費者金融に契約して30万ほどキャッシングしてしまいこの行為が大きな問題であることに気付きました。
融資実行まで不安でなりません。
このキャッシングは1週間以内に完済し、解約しようと考えています。
詳しい方に教えていただきたいのですが、今後の行動を下記のいずれかで考えています。
1.不動産屋に上記を相談する。
2.銀行に正直に伝え相談する。他にするべきことなど教えていただきたいです。
また融資実行時に取消となる可能性があるなどご経験もしくはご存知の方から教えていただけると助かります。
本当に無知な自分に後悔しています。
補足
4月にローン全額に対して金消契約を完了済になります。
7月に建物のメーカーを変更したのと金額が変わったため変更申請を銀行に提出し、再度銀行からの承認をもらっています。
私が心配なのは7月から12月まで期間があいたため上記状態でも再度最終融資前に信用情報の確認を行うことがあるかになります。
ご存じの情報があれば教えてください
(ヤフー知恵袋より引用)
1-1.質問に対する内容の整理
質問内容全体を見て、質問者様は、土地を購入し、あわせて、その土地の上に建物を建築するといった、いわゆる注文住宅を購入されていることが確認できます。
そして、補足分の「7月に建物のメーカーを変更したのと金額が変わったため変更申請を銀行に提出し、再度銀行からの承認をもらっています。」といったことより、質問者様の信用を再確認していますよね。
このため、住宅ローンを融資する金融機関側としては、7月までの信用状態では、住宅ローンを融資しても問題がないと判断したことも確認できます。
では、住宅ローンの融資実行前のキャッシング事例から重要な注意点とは、どの部分にあるのでしょう?
1-2.質問に対するFPの解説
今回の質問に対して重要な問題となってくるのは、「10月末に消費者金融に契約して30万ほどキャッシングしてしまいこの行為が大きな問題であることに気付きました」という部分です。
質問者様が懸念している「私が心配なのは7月から12月まで期間があいたため上記状態でも再度最終融資前に信用情報の確認を行うことがあるかになります」という部分が、正に懸念と合致します。
金融機関は、12月に2回目の融資をする前に再度、「信用情報に変化がないか」「融資しても問題がないか」を確認するのです。
この時、10月に消費者金融と新規契約をして、30万円を借りた履歴が個人信用情報に残ることになります。
7月時点での個人信用情報(融資が決定している状態)とは異なっており、再度融資の審査をする必要性が金融機関側で生じるのだとお考え下さい。
そのため、この事実をそのまま金融機関に対して放置しておくことは、信用といった面において良い心証を与えないことは確かです。
したがって、不動産屋に相談するのではなく、住宅ローンの融資を決定した金融機関に対して速やかに相談することが極めて重要です。
1-3.30万円をキャッシングしたことから考えられる懸念
30万円という大金をキャッシングした理由が、質問内容には記載されていなかったため、理由はわかりません。
ただ、少なくとも、質問者様が30万円という大金を10月時点で保有していなかったということは十分予測が成り立ちます。
なぜならば、30万円というお金があるのであれば、そもそも消費者金融と新規に契約をしてお金を借りる必要性がないからです。
また、「なぜ30万円という大金を一時的に借りる必要があったのか」、借りる理由や事情を金融機関側は明確に知りたいのも確かでしょう。
何よりも、消費者金融と契約をしたことによって、限度額いっぱいまでお金を借りなかったとしても、住宅ローンの審査項目にある返済負担率を計算する上では、キャッシング枠も借入金とみなして計算します。
年収(自営業の方の場合は平均所得金額)に占める、年間返済額(元金+利息)の割合のことをいい、「金融機関が、いくらまで貸してくれるのか」を判断するための数字です。
返済負担率は、以下の式で計算します。
(1年間の返済額÷年収)×100%
たとえば、年収500万円の方が、1年間に100万円返済する場合、(100万円÷500万円)×100%=返済負担率は20%となります。
金融機関等では、借入条件(融資条件)として、返済負担率の上限を設定しています。
仮に、返済負担率に懸念があったとすれば、大きな問題にもなり兼ねません。
1-4.住宅ローンの融資実行前のキャッシング事例から学ぶ重要な注意点とは
今回の質問から学ぶ重要な注意点は、住宅ローンの融資実行前における信用取引(キャッシングや新たなローンの借入)によって、住宅ローンの融資が白紙になる危険性が生じるところにあります。
仮に、質問者様のように、住宅ローンの本審査が通過し、融資実行前に消費者金融との新規契約をして借入を新たに行ったことによって、融資実行が白紙になった場合、当然のことながら住宅購入ができないことにつながります。
それだけに関わらず、不動産業者からは、損害賠償請求がなされてしまう可能性が否めません。
なぜならば、不動産業者は、金融機関の住宅ローンの融資が決定されたことによって契約を履行します。
そこで仮に、住宅ローンの融資が通過しなかった場合は、契約を白紙撤回する特約条項を付していることが通常だからです。
住宅ローンの本審査が通過した理由から、住宅建築工事の着手に至っているわけです。
質問者の過失によって融資が受けられなかったとしても、契約を履行している不動産業者とすれば、代金を回収する必要性が当然に生じることになります。
そのため、不動産業者とすればタダ働きの回避策として、損害賠償請求を求めることが十分に考えられるというわけです。
いかに、住宅ローンの融資実行前における信用取引が危険が含んでいるか、よく学ぶことができたのではないでしょうか。
2.キャッシング以外で融資実行になるまでに気を付けなければならないこと
これまでの解説より、住宅ローンの申し込みから実際に融資実行になるまでには、
- 新たなローンを組むこと
- 消費者金融や銀行系カードローンを利用したキャッシングをすること
これらは厳禁であることがご理解できたと思います。
ただ、実際のところ、住宅ローンの申し込みから実際に融資実行になるまでの重要な注意点は、これだけではありません。
そこで本項では、そのほか注意すべき特に主だったものについて、それぞれ個別に解説を進めていきます。
2-1.転職したことによって融資実行が白紙
住宅ローンの融資を受けるためには、安定した収入のあることが求められます。
そしてそれを判断するためには、収入や所得の金額はもちろんですが、勤務実績や開業実績といった年数も考慮されるとお考え下さい。
つまり、住宅ローンの申し込みから融資実行がされるまでの間に、もしも、転職をしてしまいますと、「安定した収入が得られる」といった信用が大きく無くなってしまうのです。
結果として、本来融資が決定していたものが白紙撤回になってしまう危険性があります。
そのため、住宅ローンの申し込みから融資がすべて実行になるまでの間に転職をすることは、厳禁です。
2-2.入院や事故などが原因で団体信用生命保険に加入できず、融資実行が白紙撤回
住宅ローンの融資を受けるためには、健康状態が良好であることが求められます。
これは、団体信用生命保険に加入するために必要なことになります。
仮に、住宅ローンの申し込みから融資実行がされるまでの間に、入院や事故などが原因で団体信用生命保険に加入することができない場合を考えてみましょう。
結果として、融資実行が白紙撤回になってしまう危険性があることから注意が必要です。
なお、民間金融機関が取り扱っている住宅ローンでは、団体信用生命保険の加入が義務付けられています。
その一方、フラット35の場合、加入は任意です。このため、こちらを選んで住宅ローンの融資を受けるといった選択肢も少なからずあることも、知っておきたいポイントです。
2-3.頭金を入れる予定が大きく変わったことにより融資実行が白紙撤回
住宅ローンの申し込みにおいて、頭金を入れる予定である方が、
- 融資実行までに頭金が準備できていない
- 当初、確認された頭金が大きく減少した
これらの場合などは、融資条件に大きく抵触する恐れがあります。
こちらも、融資実行が白紙撤回になる原因になり兼ねません。
そのため、頭金を入れる予定がある場合は、あらかじめ金融機関から確認された頭金を減らさない対応が必要です。
それと同時に、融資実行になるまでの間は、キープしておくように努めておく必要があるとお考え下さい。
3.住宅ローンを収入合算で申し込む場合は、収入合算者も注意が必要
ここまで解説した内容は、住宅ローンの申込者に限った話ではありません。
仮に、住宅ローンを収入合算で申し込んだ場合は、主債務者と連帯債務者(連帯保証人)のいずれも注意しておく必要があります。
特に、「収入合算をしなければ住宅ローンの融資が難しい」場合、主債務者もしくは連帯債務者(連帯保証人)のいずれにこれまで解説したような問題が生じている場合は、やはり融資実行が白紙撤回になる危険性が生じることにつながります。
4.住宅ローンの融資実行がすべて完了した後は、キャッシングをしても問題ない
住宅ローンの審査がすべて通過し、実際に住宅ローンの融資実行がすべて完了しますと、後は、金融機関から後程送付される返済予定表にしたがって毎月住宅ローンの返済を滞りなく行っていく必要があります。
「住宅ローンの融資実行がすべて完了する」ということは、金融機関との間で金銭消費貸借契約が「すべて完了した」ことを表します。
今後、キャッシングや自動車ローンなどといった信用取引を新たに契約したとしても、差し支えはありません。
ただし、住宅ローンの返済が長い間に渡って滞った場合は、注意が必要です。
購入した住宅が競売にかけられて住む場所を失い、借金だけが残るといった最悪の事態になることが想定されます。
その辺もしっかりと理解した上で、計画的なキャッシングやローンを組むことが賢明でしょう。
まとめ
住宅ローンの申し込みから実際に融資が実行されるまでの期間は、以下は厳禁です。
- 新たなローンを組む
- 消費者金融や銀行系カードローンを利用したキャッシングをする
住宅ローンの申し込みから融資実行までには、長い時間と手間がかかるほか、目に見えづらいお金も発生します。
ご自身の安易な行動や不注意で、取り返しのつかなくなるようなことだけは、絶対に避けなければなりません。
住宅ローンの融資実行がすべて完了するまでは、気が抜けないと肝に銘じておきましょう。
信用取引だけに関わらず、普段の生活にも気を配っておくぐらいの心構えがとても大切です。