住宅ローンは自営業へ転職しても利用できる?審査に通過するポイント

ポイント

住宅ローンは、自営業へ転職しても利用することが可能ではありますが、会社員や公務員などのように安定した収入がある方に比べて対策が必要な場合があります。

自営業などのような職業を問わず、住宅ローンの申し込みを検討しているすべての方に共通している対策もあるのは確かです。

一方、自営業者であるからこそ念入りにやっておかなければならないこともあり、「年単位」で対策を取っておくことが必要です。

そこで本記事では、自営業へ転職した方が、住宅ローンの審査に通過するためのポイントについてわかりやすく解説を進めていきます。

1.住宅ローンは自営業に転職しても利用できるが、3年間の黒字実績が望ましい

住宅ローンは、自営業へ転職しても申し込みをすることが可能ですが、目安として3年間の黒字実績があることが望ましいです。

この理由として、住宅ローン審査では「長期の住宅ローンを完済まで問題なく返済できるのか」がチェックされることになるため、審査前の時点において、

  • 自営業者として何年継続して事業を営んでいるのか
  • 継続して黒字実績があるのか
  • 突発的な理由から極度の所得の増減がないかどうか

といったことがより詳しく確認されることになるからです。

具体的には、以下の通りです。

1-1.自営業の場合、収入は「売上の額」ではなく「所得の額」で確認される

住宅ローン審査において、自営業の場合は、収入について「売上の額」ではなく「所得の額」で確認されることになります。

自営業者における収入とは「売上金額」にあたり、所得とは、ざっくり言ってしまえば「利益=儲け」にあたるのです。

住宅ローンの返済原資となるお金は、事業で生じた「利益=儲け」から出るわけでありますから、所得を審査の考えに採用することは合理的であると考えられます。

2.自営業で住宅ローンを組むために必要なこと

自営業で住宅ローンを組むために必要なことは、先に解説した「3年間の黒字実績」に加え、以下3つのポイントが大切になります。

特に、自営業者として転職しこれから住宅ローンの申し込みを検討されている方は、以下の点についてしっかりとご確認されておくことをおすすめ致します。

2-1.自営業による所得が安定している

こちらは、先に解説した内容と多少重なっている部分があるのですが、住宅ローンの審査前において、

  • 自営業者として何年継続して事業を営んでいるのか
  • 継続して黒字実績があるのか
  • 突発的な理由から極度の所得の増減がないかどうか

などが、書類や担当者との面談などによって詳しく確認されることになります。

仮に、所得金額に大きな増減があった場合は、虚偽は言うまでもなく厳禁ですが、しっかりと説明できるような対策や対応が求められることは確かです。

なお、自営業者の場合、所得を計算する上で「減価償却費」や「青色申告特別控除」によって大きく所得が減少し、節税効果が得られる場合があることから、多くの方が有効活用されていることと思います。

上記2つは、現金や預金といったいわゆる「キャッシュ」が直接支出しない項目であることから、住宅ローンの審査におきましては、通常「引き直し計算」がなされます。

参考:引き直し計算例

  • 1年間の所得金額  105万円
  • 1年間の減価償却費 30万円
  • 青色申告特別控除   65万円

この場合、確定申告書に記載される所得金額は105万円ですが、住宅ローン審査における所得金額は、減価償却費と青色申告特別控除を加算した200万円として引き直し計算され、より住宅ローンが借りやすく有利に見られることを意味します。

節税には「事業の所得を減らすための節税」と、「人的控除と呼ばれる所得控除を増加させるための節税」があります。

自営業者の場合、節税対策を取っている方も多いのが現状ですが、住宅ローンの審査に通るための対策としては、できる限り「所得金額を減らさないような対策」が必要となります。

具体的には、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入することや小規模企業共済に加入するなどで所得控除(小規模企業共済等掛金控除)を増加させながら節税をする方が、住宅ローンの審査に通過するための対策としては望ましいでしょう。

なお、自営業の方で税理士に確定申告を依頼している場合や月々の記帳代行を依頼している場合は、住宅購入についても話をした上で対策を施してもらうのも一策です。

2-2.今後における所得の見通しがついている

住宅ローンを完済までに滞ることなく返済するためには、「今後の所得の見通し」もチェックされることは言うまでもありません。

特に、

  • 売上金額が住宅ローンの審査期間を通じて極端に増減していないか
  • これによって所得金額も極端に増減していないか
  • 毎年恒常的に得られる収入や見込所得がとのくらいなのか

こういったことが、確定申告書や青色申告決算書などといった書類や担当者との面談などによって詳しく確認されます。

実際に申し込んだ住宅ローンの借入金額と所得に対して「完済まで問題がない」と判断されることによって住宅ローンの審査に通過することになりますが、自営業は「所得が安定していない」とはいえ、ある程度、毎年得られるであろうといった金額は提示された書類から判断することは可能です。

2-3.ある程度まとまった頭金を用意できる

こちらは、自営業者に限ったことではありませんが、ある程度まとまった頭金(自己資金)を用意することができていれば、より住宅ローンの審査に通過しやすくなることは確実です。

特に、会社員や公務員などとは異なって、収入が安定していないと見られる自営業者であるからこそ、頭金が多く用意できれば、より住宅ローンの融資がしやすいのはどの金融機関も同じです。

一昔前までは、頭金について「借入金額に対して2割が必要」と言われてきましたが、現在では、住宅ローンを取り扱っているほとんどの金融機関でこの条件を撤廃しており、住宅ローンの審査で問題が無ければ、購入価格の全額が融資される、いわゆる「フルローン」も可能になっています。

また、併せて、現在では頭金を有していることによって、住宅ローンの金利が引き下げられるサービスを多くの金融機関で実施しているため、より低い金利で住宅ローンの融資を受けたい場合は、頭金の用意が必須になります。

住宅ローンの申し込みにあたり、頭金の考え方は、「必ず用意しなければならなかったお金」から「ご自身が有利に住宅ローンを借りる場合に必要なお金」といった、そもそもの性質が変わっていることを理解しておくことが必要です。

そのため、「◯万円くらいの頭金を用意できると良い」といった考え方は、現在、住宅ローンを借りる上で適切な考え方とは言えないのです。

あくまでも、ご自身がお得になるように、かつ住宅ローンの審査に通過しやすくなるようにするために頭金があるものと認識しておくことが大切です。

参考までに、長期固定金利の住宅ローンのフラット35では、頭金の有無によって以下のような金利差を設けています。

ARUHI団信

出典:ARUHI 住宅ローン金利一覧(2018年3月実行金利)より引用

たとえば、3,000万円の借入を返済期間35年で検討している場合で頭金が1割にあたる300万円を準備できている場合の金利は「年1.360%」、頭金が準備できておらずフルローンにする場合は「年1.800%」と大きく異なっていることが確認できます。

ちなみに、上記の返済条件を「ボーナス払いなし」「元利均等返済」で行った場合の違いは以下の通りです。

比較内容頭金1割あり頭金なし
1ヶ月の返済金額89,811円96,327円
35年間の総返済金額37,720,992円40,457,513円

頭金を用意しておくことは、金利が低くなることによって「総返済金額が抑えられる」だけでなく、「住宅ローンの審査に通りやすくなる」といった一石二鳥の効果が得られるため、できる限り用意できていることが望ましいでしょう。

3.自営業で住宅ローンを利用するなら、「フラット35」がおすすめ

住宅ローンの返済条件というものは、民間金融機関をはじめ選んだ住宅ローンの種類によって異なります。

自営業の場合、民間金融機関が取り扱っている独自の住宅ローンよりも、住宅金融支援機構が取り扱っている「フラット35」の方が、住宅ローン審査が通りやすいことは確かです。

この理由として、融資の審査基準が明確にされていることに加え、いわゆる国の制度に関係しているため、審査のハードルが高くないことが理由としてあげられます。

また、何よりもフラット35は、過去3年分ではなく、過去2年分の確定申告書の提出が求められていることから、民間金融機関に比べて審査の査定となる期間が短く、より審査に通りやすいといった理由もあります。

そのため、自営業に転職したとしても、過去2年間において黒字実績があれば、民間金融機関で住宅ローンの融資が断られてしまったとしても、フラット35では融資が受けられる可能性が十分にあることを意味します。

住宅購入は焦って行うべきものではありませんが、できる限り早く、かつ確実に住宅ローンの融資を受けたい場合には、フラット35を選んでみるのも一策でしょう。

4.住宅ローンへ申し込むときに用意するべきもの

住宅ローンは、事前審査(仮審査)と本審査といった段階的な審査があることから、まずは、事前審査(仮審査)を通過しなければ、住宅ローンの審査に通過したとは言い切れません。

そのため、こちらにつきましては、住宅ローンの申し込みをする金融機関に対して問い合わせて確認することが確実な方法であることは確かですが、ここでは、事前審査に必要となる書類について大まかに紹介しておきます。

4-1.収入や所得が確認できる確定申告書の控え(過去2年分もしくは3年分)

住宅ローンの申し込みを行う金融機関の指示に従って、過去2年分もしくは過去3年分の確定申告書の控えを持参することで足ります。

青色申告者の場合は、青色申告決算書も確定申告書と共にセットで持参することが望ましいでしょう。

4-2.身分証明書

運転免許証や健康保険証など、公的な書類でご自身の身分を証明するもので足ります。

4-3.その他

住宅ローンの事前審査(仮審査)が通過し、本審査へ進める場合は、引き続き金融機関が指定した必要書類を準備し、審査に臨むようにして下さい。

なお、参考までにフラット35で本審査を受ける場合に必要となる書類を以下、箇条書きで紹介しておきます。(すでに解説したものと重複しているものもあります)

  • 運転免許証
  • 健康保険証
  • 住民票(原本)
  • 納税証明書(原本)
  • 土地の登記事項全部証明書(原本)
  • 建物の登記事項全部証明書(原本)
  • 対象敷地の前面道路および公道までの登記簿謄本(原本)
  • 物件の売買契約書(写し)
  • 物件の重要事項説明書(写し)
  • 現在借入がある場合の返済予定表や明細票(写し)

上記のほか、金融機関の指示に従って、必要な書類を都度、用意するようにして下さい。

5.個人信用情報やクレジットカードの多数保有には注意

自営業者へ転職したことによって、十分な収入や所得があったとしても、個人信用情報に問題がある場合やクレジットカードの多数保有といったことが原因で住宅ローンの審査に通らない場合もあることは確かです。

住宅ローンの審査に無事通過するには、このような細かな部分にまで気をつかわなければなりません。

特に個人信用情報につきましては、傷が付いてしまいますと元に戻るまでには多くの時間が必要となるため、住宅ローンの申し込みを何年後かに控えている場合は、借入金や割賦代金の返済遅延には特に気を付けるように心掛けておきたいものです。

まとめ

本記事では、自営業へ転職した方が、住宅ローンの審査に通過するためのポイントについてわかりやすく解説を進めさせていただきました。

自営業へ転職した方が住宅ローンを組むためには、少なくとも2年や3年の事業実績に加え、所得金額が発生しているといった黒字経営であることがどうしても求められます。

自営業者は、会社員や公務員と違って大きなお金を得られる可能性も多々ある一方で、将来まで収入が安定している保証はないことは確かですので、将来の返済計画をしっかりと立てながら無理のない住宅ローンの借入を行うことが大切です。

そのためにも、頭金を用意することで、返済する金額を減らす工夫や借入金額を抑える工夫など、各々の工夫も併せて考え、対策を取っておくことも忘れないようにしましょう。

自営業・個人事業主の方はフラット35が審査に通りやすくておすすめ

自営業の場合、会社員や公務員に比べて審査が通りづらいです。売上によって収入が変動するため、「不安定」という見方をされるからです。

ただし、フラット35(全期間固定金利)であれば話は別です。

民間金融機関の住宅ローンの場合、多くは「年収400万円以上で、安定した収入がある状態でなければ、そもそも申し込みすらできない」といった縛りがありますが、フラット35では、そのような収入に対する審査基準は一切ないからです。

さらに、通常は3年程度必要な過去の業績も、フラット35であれば、半年や1年の業績さえあれば審査への申し込みが可能です。

そのため、フラット35は自営業・個人事業主の方であっても審査に通りやすく、ほとんどの経営者がこれで住宅ローンを組んでいます。

以下に、自営業・個人事業主の方にお勧めのフラット35ランキングがありますので、参考にしていただけますと幸いです。

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