住宅ローンの融資を受けるためには、金融機関がそれぞれ定めている融資基準に合致し本審査に通過することが必要になります。
この時、無事に住宅ローンの審査に通過するための要件は明確に公開されているわけではありませんが、国土交通省が住宅ローンを取り扱っている金融機関に対するアンケート調査によって、大まかな部分を把握することは可能(本記事内で解説)となっています。
では、男性や女性といった性別をはじめ、年齢・独身女性・母子家庭などといった状況によって住宅ローンの審査に通りやすくなる、ならないといったことは、果たして関係するのでしょうか?
本記事では、独身女性や母子家庭などのような状況が、住宅ローンとどのような関係にあるのかについて解説を進めていきます。
目次
1.性別、年齢、独身女性や母子家庭といった条件は、住宅ローン審査に関係するのか?
結論から申し上げると、性別・年齢・独身女性や母子家庭といった条件は、住宅ローン審査に関係することは「ほぼ」ありません。
ここで「ほぼ」とした理由として、住宅ローンの審査項目の1つに「完済時年齢」といったものがあるからです。
住宅ローンを完済するまでの上限年齢が設けられていることから、時として年齢が住宅ローンの審査に抵触する場合があるといった理由があげられるためになります。
したがいまして、住宅ローンの申し込みをした年齢と住宅ローンを返済するまでの期間が先の「完済時年齢」に抵触する場合は、住宅ローンの融資が不可となります。
その一方、性別・独身女性・母子家庭といったものは、住宅ローン審査に関係することはありません。
実際に、このような理由で住宅ローンの審査に落ちたと勘違いされている方もおられるようですので、以下、参考事例として内容から考えられることを解説していきたいと思います。
1-1.参考 母子家庭の方が、住宅ローンの審査に落ちた事例から考える
質問内容
シングルマザーで住宅ローン審査で断られました。住信SBIネット銀行は、シングルマザーだと住宅ローンは無理なんでしょうか?
シングルマザーや独身女性でも組める住宅ローンはありますか?
できるだけ条件のいい金利がいいのですがムシが良すぎますか?
- 頭金50万円
- 平成25年の税込年収367万円
- 勤続年数1年
- 職種 医療事務
アパートの近くで建て売り(一建設?)を買おうと思ってました・・・。私のようなシングルマザーでも住宅ローンを組んで家を買う方法があれば教えて下さい。
出典:ヤフー不動産 教えて!住まいの先生より引用
質問から考えられる見解
はじめに、シングルマザーといった理由で住宅ローンの審査に落ちることはありません。
そのため、こちらは質問者様の大きな勘違いであり、原因は別のところにあります。
質問の内容からでは、すべてが推測できませんが、まずは「勤続年数」が審査に落ちた原因の1つと考えることもできそうです。
勤続年数1年ですと、勤務年数が浅く、「もしかしたら再度転職するかもしれない」といった懸念を少なからず抱かれる原因になると推測されます。
このように考えた時、「はたして融資したお金がしっかりと返済されるのだろうか?もしかしたら返済されないかもしれない」といった懸念を抱くことも考えられ、このような理由から金融機関は融資を拒むといったことが考えられます。
後は、情報不足のため憶測となってしまいますが、ネット銀行による審査項目の入力ミスや身の丈に合っていない借入金額や返済条件などといった理由が、住宅ローンの審査に落ちた理由と考えることもできそうです。
なお、住宅ローンの審査と勤続年数に関しては、当サイト内の以下のコンテンツで詳しく述べているため、参考にしてください。
1-2.住宅ローンの審査の重要項目 返済負担率とは
住宅ローンの審査項目には、すでに紹介した「完済時年齢」も重要な一方、「返済負担率」が、住宅ローンの審査結果に大きく左右する原因となります。
後述する返済負担率の解説につきましては、同サイト内の掲載記事から解説を引用して紹介していきます。
返済負担率とは、年収に占める年間返済金額の割合のことをいいます。
たとえば、年収500万円で返済負担率が30%であった場合、返済金額は以下のような計算式で求めることができます。
500万円×30%=150万円
150万円÷12ヶ月=125,000円年収500万円の人が返済負担率30%以内に抑えるには、1ヶ月あたり125,000円以内の返済に留めておく必要があるといった見方になります。
明確に明示されておりませんが、実際のところ、住宅ローンを取り扱っている多くの金融機関では、返済負担率の割合を「35%以内」に設定しているところが多いようです。
ただし、一般に返済負担率が30%や35%程度で推移しますと、長期に渡る住宅ローンの返済が相当窮屈になるのは確かです。
この辺は、住宅ローンを融資する側の金融機関も十分承知しているところであり、住宅ローン申込者のその他の審査項目や状況を総合的に判断した上で融資が決定されるべきものになります。
年収別で異なる借入可能額に関しては、「住宅ローン審査に関わる年収情報まとめ」にてそれぞれ解説させていただいております。
1-2.重要なのは「住宅ローンを無理なく返済できるかどうか」
性別・独身女性・母子家庭といった条件は、住宅ローン審査に影響を与えることはありません。
住宅ローンの融資を受ける方のすべてに共通して言える重要項目に「無理なく住宅ローンを返済できるかどうか」といった考え方があります。
先に解説した返済負担率につきましても、無理なく住宅ローンを返済できる金額になっていることで、自ずと返済負担率も住宅ローン審査に十分通過するような数値になっていることが一般的です。
ご自身の懐具合を改めて確認し、「自分たちが1ヶ月あたりいくらまでであれば無理なく住宅ローンを返済していくことができるのか」しっかりと考えてみることがとても重要になります。
1-3.住宅ローンの審査項目を知り、対策をしておくことが重要
これまで「完済時年齢」や「返済負担率」といった住宅ローンの審査に重要な影響を及ぼす審査項目について解説をさせていただきました。
何よりも、住宅ローンの審査項目にはどのようなものがあるのかを知り、その対策を住宅ローンの申し込み前から取っておくことが重要です。
ちなみに、国道交通省が公開している「平成28年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」によると、本記事で解説した「完済時年齢」は、住宅ローンの融資を行う際に考慮する項目の「第1位」にあたり、「返済負担率」は「第3位」という結果になっていました。
おそらく多くの皆さまは、「『第2位』って何?」と思われている方がほとんどだと思いますが、第2位は「健康状態」でした。
くどいようですが、住宅ローンの審査に無事通過し融資を受けるためには、住宅ローンの審査項目を知り、対策をしておくことが重要になります。
以下、同サイト内で掲載されている審査基準にかかる10項目をお読みになっていただくことで、住宅ローンの審査項目から対策方法をはじめ、どのようなことに注意しなければならないのかといったことも解説しておりますので参考までに目通しいただくことをおすすめ致します。
2.独身女性や母子家庭の方に対する住宅ローン融資への懸念とは
独身女性や母子家庭の方に対する住宅ローン融資への懸念として考えられることは、結婚や出産といったライフイベントの変化や病気や事故による収入の低下が主なものとして考えられます。
これらの懸念は、独身女性や母子家庭の方に限ったことではないと考えられます。
一方で、基本的にどちらの状況におかれましても、1人の収入で住宅ローンの返済をしなければならないといった事情があります。
これを踏まえますと、万が一のリスクヘッジ対策を取っておかなければ、時として周りの親族や子どもたちの人生にも大きな悪影響を及ぼしてしまいます。
このような状況下で住宅購入される場合は、これらの懸念をよく自分自身で理解した上で印鑑を押す心構えが必要だと言えるでしょう。
3.独身女性や母子家庭の方でも審査に通りやすくする方法
住宅ローンに対する懸念を大まかに紹介したことで、それでも住宅購入を決意した独身女性や母子家庭の方に対して、ここでは住宅ローンの審査に通りやすくなるための方法について考えられるものをいくつか紹介していきたいと思います。
実用性のあるものから、実用性に乏しいと考えられるものまで幅広く紹介していきますので、まずは幅広く情報を吸収して頂き、その中で良いと考えられるものを参考とされることをおすすめ致します。
3-1.住宅購入の自己資金にあたる頭金を十分に用意しておく
住宅購入の自己資金にあたる頭金が十分にあるということは、その分、住宅ローンの借入金額が少なくなることになります。
結果として返済負担率が軽減され、住宅ローンの審査に通りやすくなることに繋がります。
こちらは、独身女性や母子家庭の方といった状況は無関係ではあるものの、住宅ローンの審査に通りやすくなる基本中の基本ということで、記述をさせていただきました。
3-2.親から支援してもらう
すべての方がそうではありませんが、独身女性や母子家庭といった状況下では、お金に余裕を持っている場合が多いとは言い切れない場合も決して少なくありません。
このような中で意を決して住宅購入を行うのであれば、時には親から支援してもらうという方法もあるでしょう。
あくまでも、親が支援できる経済力があることや親からの理解が得られなければ実現しないことを踏まえますと、少々ハードルが高いと考えることもできそうです。
3-3.親子リレーや親と収入合算をする
こちらは極めてレアケースになると思われますが、たとえば、実家を改装して両親と親子リレーや親と収入合算をするといった選択肢もあるでしょう。
独身を貫き通すといった女性の覚悟を決めた場合、選択肢の1つとして考えることもできますが、仮に再婚した場合や両親が債務を抱えて他界した場合に、「住宅ローンの返済負担にかかるリスクをどのように分散するのか」といったことを考えておく必要性があると思われます。
ただ、一般的に考えますと、住宅ローンの返済負担を1人で抱えるよりは両親を含めた2人や3人で分散した方が負担は軽くなります。
このため、住宅ローンの返済期間中に無理のない余裕を持った返済が続けられる可能性があるといったメリットは大きなプラスになるとも考えることができるでしょう。
親子リレーローンに関してさらに詳しく知りたい場合、以下の記事にも目を通しておきましょう。
4.参考 独身女性や母子家庭の方にオススメな住宅ローン
本記事の最後に参考として、独身女性や母子家庭の方にオススメな住宅ローンを2つ紹介していきますが.
いずれも、「女性専用の住宅ローン」といった位置付けで、内容確認されることをおすすめ致します。
4-1.りそな銀行

出典:りそな銀行 ローン金利 女性向け住宅ローンより引用
上記は、りそな銀行でフラット35を利用した場合に適用される女性向け住宅ローンの融資手数料一覧表(平成29年9月現在)になります。
内容を比較検討したところ、金利そのものに上下の変化はないものの、女性が主たる債務者になる場合は、男性が主たる債務者になる場合よりも融資手数料がAタイプおよびBタイプのどちらも優遇されていることが確認できました。
4-2.三菱東京UFJ銀行
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出典:三菱東京UFJ銀行 ご利用の特典 「優遇」がうれしい!より引用
三菱東京UFJ銀行では、金利優遇が1年間と限定的ではあるものの、出産前から出産後のようなお金が入り用な時期に金利優遇される点は、女性にとって大きなメリットであると言えるでしょう。
こちらは、ご案内にも書かれておりますように、窓口やコールセンターに直接、詳細を確認されることをおすすめ致します。
まとめ
本記事では、独身女性や母子家庭などのような状況が、住宅ローンとどのような関係にあるのかについて解説を進めさせていただきました。
本記事の結論では、独身女性や母子家庭などのような状況においても住宅ローンの審査に不利になるようなことはないと結論付けました。
これに対して、他の情報サイトでは、そのようなこともあるといった対照的な見解を示されているところもあることは紛れもない事実です。
このようなことのほか、それぞれの金融機関が明確に基準等を明示しているわけではないといった理由から、どっちが正しいといったことは言い切れません。
ただ、いずれにしましても、独身女性や母子家庭といった状況にある方でも住宅ローンの審査に通過し融資を受けられていることは確かです。
そのため、置かれている状況で判断するのではなく、住宅ローンの審査基準に総合的に合致しているか、していないかで判断されるのが最も合理的な考え方であると本記事では結論付けたいと思います。