住宅ローンの審査において、消費者金融からの借入は「審査にマイナスの影響を及ぼす」と言われます。
確かにこれは、正しい事実であることに変わりありません。
しかし、正確には、住宅ローンの申し込み時や審査時の”現況において”、消費者金融からの借入があるかどうかが大きなポイントになります。
あわせて、住宅ローンの申し込みを受けた金融機関によって、住宅ローンを融資するか、融資しないかといった与信判断(相手先の財務状況などに基づき、融資の可否を判断すること)が異なります。
このため、「消費者金融からの借入」と「住宅ローンの審査」を一概に結び付けて判断することはできません。
そこで本記事では、消費者金融で借入経験がある場合、消費者金融の「解約」や「借入の完済をした後」において、住宅ローンの審査にどのような影響があるのかについて解説を進めていきます。
目次
1.消費者金融からの借入経験は、住宅ローン審査に影響はない
はじめに、本記事の結論からお伝えしますが、消費者金融からの借入経験があったとしても、消費者金融との解約をしており、借金が無い状態であれば、住宅ローン審査に影響を与えることはありません。
ただし、住宅ローンを融資する金融機関側としますと、仮に、住宅ローンを融資して毎月の返済が滞りなく行われることを当然に求めているわけです。
このため最低でも、あらかじめ、住宅ローンの申し込み前などに消費者金融との契約を解約し、「お金を借入できない状態」になっていることが望ましいのは確かです。
1-1.消費者金融との借入契約を解約した場合は、いつ解約したかがポイント
消費者金融との借入契約を解約した場合は、いつ解約したかが住宅ローンの審査をされる上で大きなポイントになります。
具体的には、借入契約を解約してから5年間は、消費者金融との借入契約があった履歴が個人信用情報に残ります。
このため、住宅ローンの申し込みや審査を受ける直前に解約をした場合は、少々注意が必要です。
特に、複数の消費者金融との借入契約を一度に解約したり、保有している大量のクレジットカードを一度にまとめて解約したりした場合は気をつけなくてはいけません。
逆に、何か大きな事情があったのかと勘繰られてしまう場合や、「個人信用情報には載らない他のところからの借入なのでは」と、あらぬ疑いや懸念を抱かれてしまう場合もあるからです。
そのため、消費者金融との借入契約の解約やクレジットカードの解約は、ただ解約をすれば良いといったことではなく、計画的に行うことがとても大切になります。
ただし、解約をしている前提となりますが、消費者金融との借入契約やクレジットカードのキャッシングなどの利用履歴について、過去に借入金の返済に対する延滞を繰り返してきたような事実が無ければ、住宅ローンの審査にマイナスの作用を及ぼすことはまずもって考えにくいでしょう。
2.消費者金融からの借入を完済した後でも、住宅ローンの審査に影響は生じる
前項では、消費者金融との借入契約の解約と住宅ローン審査の関係性について解説をしました。
しかし、消費者金融からの借入を完済した後の住宅ローン審査は、大きく事情が異なります。
消費者金融との借入契約を解約することによって、今後お金を借りることはできません。
しかしその一方で、消費者金融からの借入を完済した後であったとしても、引き続き、いつでもお金を借りられるといった特徴があるためです。
そのため、住宅ローンの審査対策のために、消費者金融からの借入を一時的に完済した後でも、住宅ローンの審査に影響は生じることになります。
2-1.消費者金融からの借入が完済していても生じる住宅ローン審査の影響とは
たとえば、住宅ローンの申し込み時や審査時において、「消費者金融から借入しているお金が無い状態」や「借入していたお金を完済していた」と想定します。
しかし、この場合においても、消費者金融との間で借入契約が継続していると、住宅ローンの審査に重要な影響を与える審査項目に対してデメリットが生じてしまいます。
その審査項目とは、返済負担率のことを指します。
これから融資を受ける住宅ローンにおいて、1年間の返済額を含めた借入金などの「年間返済金額」が、「年収」に対してどの程度の負担割合なのかといったものです。
具体的な返済負担率の計算例は、以下の通りです。
- 年収:400万円
- 住宅ローンの年間返済金額:120万円
- その他の借入金はない
(120万円÷400万円)×100%=30%
年収400万円の方で住宅ローンの年間返済金額が120万円(毎月の返済金額が10万円)の場合、返済負担率が30%と計算されます。この割合が高ければ高いほど、住宅ローンの審査が不利になってしまうのです。
なお、返済負担率が30%を超えているような場合ですと、住宅ローンの審査が厳しくなってしまいます。それだけでなく、毎月住宅ローンを滞りなく返済していくのも厳しくなってくることが十分予測されます。
2-1-1.消費者金融やキャッシングで借りられる金額は、返済負担率の計算に含まれる
仮に、消費者金融からの借入が完済している場合でも、大きなデメリットが考えられます。それは、消費者金融やクレジットカードのキャッシングで借りられる金額は、返済負担率の計算に含まれることです。
これは、住宅ローンを取り扱っている多くの金融機関で、借入の有無に関わらずカードローンや当初の借入契約で義務付けられている「毎月返済額の最低金額」を基準に、返済負担率をみなし計算しているためです。
このことを、ミニマムペイメントと言います。
そのため、消費者金融からの借入を完済して借入が無かったとしても、返済負担率の計算をする上で不利な計算をされてしまう点に注意が必要です。
これは、消費者金融だけに限らず、キャッシング機能がついたクレジットカードを多数保有している場合も同様です。
このような状況下にある場合は、住宅ローンの申し込み前にあらかじめ計画的にカードを解約したり、キャッシング機能を廃止したりする対策を取ることが大切になります。
3.消費者金融の借金完済と解約後の住宅ローンの相談事例から考える
ここまで、消費者金融で借入経験がある場合、「消費者金融の解約や借入の完済をした後に、住宅ローンの審査にどのような影響があるのか」について解説を進めてきました。
第3項では、消費者金融の借金完済と解約後の住宅ローンの相談事例から、具体的に考えてみたいと思います。
消費者金融の借金完済・解約後の住宅ローンについて。
昨年主人が消費者金融に借金があることが判明
三社は親の借金の肩代わり、一社は友人への名義貸し…合計140万円以上ありました。
うちで立て替え、昨年の八月に全て完済しました。が、友人へ名義貸ししていた分の取引記録を取り寄せてみたところ、何度も遅延が有りました…。(主人は返済状況を把握してませんでした…)
他の質問を拝見したところ、消費者金融から過去に借り入れがあっても、完済・解約で無事故なら住宅ローンが組めるとの回答がありました。
ということは、住宅ローンは主人名義で組めないですよね…。
今貯蓄は私名義で200万円ほどあります。
これを主人名義の貯蓄にしたら住宅ローン審査を通る可能性がありますか?やはり事故情報が記載されなくなるまで、最低五年は待たなくてはいけないのでしょうか…。
補足
延滞は5日以内のものが10回程度でした。
住宅購入は今すぐではなく、だいたい1~3年後を考えています。
私は今専業主婦ですが、年内には仕事を始める予定です。
勤続一年を過ぎてから私名義で住宅ローンを組むことも考えています…みなさんならどうしますか?
3-1.相談内容を踏まえたFPの見解
相談内容より、残念ながらご主人様の名義で住宅ローンの融資を受けることはできません。
この理由は、友人への名義貸しによって生じた借入金の返済遅延による事故歴が残っているためです。質問者の方が相談内容に記載しているように、ご主人の個人信用情報の履歴に事故歴が抹消されるのを待つ必要があります。
また、住宅購入について、質問者様が就業して、「ご自身の名義で住宅ローンを組むことを考えている」ようですが、住宅ローンの審査では、勤続年数も大きく関係しています。
実際のところ、相談内容には、どのような職業で、どのような待遇なのかについて記載されていないため判断ができかねます。
しかし、就業してから1年後や2年後に住宅購入するのは、かなり厳しいことが予測されます。
また、パートや派遣社員、契約社員といった待遇よりも正社員である方が望ましいことは言うまでもありません。
質問者様の場合は、これから夫婦共働きになります。
このため、
- ご主人様の個人信用情報がきれいな状態になり、かつ
- 質問者様の勤続年数がある程度実績があるようになってから
収入合算して住宅ローンを申し込まれるのが得策だと思われます。
夫婦共働きで収入合算をすると、住宅ローンの審査に通りやすくなります。そのほか、希望借入金額が増えるメリットや収入合算の仕方によっては、夫婦がそれぞれ住宅ローン控除を受けられるなどの特典もあります。
そのため、住宅ローンの申し込みをするまでの年単位の期間を十分に活用しましょう。
この期間に、「理想の住宅購入をするためには、具体的にどのようにしていったら良いのか」、住宅購入計画や住宅ローンの返済計画をしっかりと立てて備えるのが望ましいでしょう。
4.住宅ローンの審査は、申込者の誠実さも重要!うそや偽りは厳禁
消費者金融からの借入やクレジットカードのキャッシングなどは、住宅ローンの審査にマイナスに働きそうと考えるあまり、うそや偽りの申し込みや回答をすることはかえって逆効果です。
このこと、住宅ローンの具体的な審査項目には記載されていません。
とは言うものの、住宅ローンを取り扱っているどの金融機関におかれましても、申込者の借入動機や誠実さなどの個人属性について見られていることも知っておく必要があります。
住宅ローンの申し込みを受けた金融機関は、住宅ローンの申込者本人の同意を得て「個人信用情報」を必ず確認することになっています。
しかし、この「個人信用情報」と「申込者本人が伝えた内容や回答」とが著しく乖離する場合は、誠実さに欠けると判断されてもおかしくはありません。
そのため、消費者金融からの借入やクレジットカードのキャッシングなどについて、住宅ローンの担当者に尋ねられた場合は、正しく回答することが大切です。あいまいな場合やわからない場合は、その旨をはっきりと伝えるように心掛けましょう。
5.消費者金融の問題が気になる方は、事前に個人信用情報を取り寄せて確認しましょう
住宅ローンの審査は、数をこなせばあたる程、簡単なものではありません。
そのため、たとえば、消費者金融やキャッシングについて心配な方は、あらかじめ住宅ローンの申し込みをする前に、ご自身の個人信用情報を取り寄せて確認してみましょう。
個人信用情報は、住宅ローンの審査などにおいて必ず確認されるものになります。
このため、あらかじめご自身の個人信用情報を確認し、「問題がない」ことを確認できれば、より住宅ローンの融資に近づけることは確かです。
逆に、個人信用情報を取り寄せて確認した結果、何かしらの問題が生じている場合は、対策を練ったり、対策を実行したりする必要性が生じます。
懸念事項がある状態で住宅ローンの審査に臨んだとしても、うまくいくことは難しいでしょう。
そのため、このような場合は、時として「FP」や「住宅ローンアドバイザー」といった専門家の見解やアドバイスを聞いてみるのも良い対策方法の1つです。
こちらについての詳細は、以下の記事を参考にしていただけますと幸いです。
まとめ
本記事では、消費者金融で借入経験がある場合、消費者金融の解約や借入の完済をした後において住宅ローンの審査にどのような影響があるのかについて解説をさせていただきました。
要点は以下の通りです。
- 状況 住宅ローン審査に対する影響
- 消費者金融で借入経験がある場合 なし
- 消費者金融の借入契約を解約している場合 なし
- 消費者金融の借入を完済した場合 あり
住宅ローンの審査においては、基本的に現況判断されることになります。このため、過去に著しい返済の遅延や事故歴が無い場合は、住宅ローンの審査に対する影響は生じません。
また、消費者金融からの借入を完済しているだけでは、住宅ローンの審査が不利に働く部分が大きくなります。
このため、保有しているキャッシング機能付きのクレジットカードも考慮しながら、計画的に解約するように心掛けたいものです。