住宅ローンの金利を通常よりも低い利率で融資する「金利優遇」は、一定の条件を満たすことによってすべての方が受けられる仕組みになっています。
ここで言う一定の条件には、住宅ローンを取り扱っている金融機関独自の基準が設けられており、それらを満たしていることによって金利優遇を受けられることが一般的です。
では、国家公務員など、いわゆる公務員といった職業に就いている場合の金利優遇というものはあるのでしょうか?
これから解説していく本記事の内容は、どのような職業であったとしても参考になるものであるのは確かですが、職業が公務員であると仮定した上で、住宅ローンのそれぞれの取り扱いについて解説を進めていきます。
目次
1.公務員は住宅ローンの審査に通りやすいって聞くけど本当なのか?
住宅ローンの審査項目を全体的に考慮して考えていきますと、住宅ローンの審査に通りやすい職業というものは「ある」と考えられます。
そして、公務員は正に住宅ローンの審査に通りやすい職業であることは間違いありません。
本項では、なぜ「公務員は住宅ローンの審査に通りやすい」と言われているのかについて解説をし、併せて、「公務員であったとしても住宅ローンの審査に通らないことはあるのか?」といった疑問について解説を進めていきます。
1-1.なぜ、公務員は住宅ローンの審査に通りやすいと言われているのか
公務員が住宅ローンの審査に通りやすい最大の理由は、「ほぼ確実に安定した収入が得られるため」です。
給料の支給を受けているといった面では、一般の会社員の場合と同じですが、公務員は会社員と異なり「職場が倒産する懸念」といったものがありません。
つまり、自己都合退職や解雇などといった特殊事情が生じなければ、ほぼ確実に安定した収入が毎月得られるほか、夏季や冬季の賞与(ボーナス)を含めた臨時収入も確実です。
このため、住宅ローンを融資する金融機関側とすれば、住宅ローンの確実な返済が期待できるほか、貸し倒れになってしまうリスクが低くなるメリットが得られます。
このような理由があることから、公務員は一般に住宅ローンの審査に通りやすいと言われていると考えることができます。
1-2.公務員であっても、住宅ローンの審査に通らないことはあるのか?
公務員という職業に就いている場合は、住宅ローンの審査に通りやすいことは先の解説でご理解いただけたと思いますが、実際に公務員であったとしても、住宅ローンの審査に通らないことが当然ながらあります。
ここでは、公務員に限らず、すべての職業の方に対して共通して考えられる主な理由と解説を進めていきます。
1-2-1.個人信用情報に問題がある:ブラックリスト
どのような職業に就いている人であったとしても、個人信用情報に問題があった場合、住宅ローンの融資が受けられることは確実にありません。
住宅ローンを申し込んだ人の「債務状況」や「返済状況」、「金融事故情報」などといった信用情報のことをいいます。
住宅ローンの申し込みを受けた金融機関は、本人から書面やネット上で同意を得た上でこれらの履歴を確認します。
ローン返済の大幅な遅れや割賦代金の大幅な遅れなど、お金の支払いに問題があると判断されている場合は、俗に言う「ブラックリスト」としての取り扱いがなされることになります。
これは、いわゆる事前審査項目の1つとしての位置付けもあり、すべての金融機関で共通しているため、申し込む金融機関を変えたとしても、個人信用情報の内容が変わるわけではありませんので注意が必要です。
より詳しく知りたい場合、「住宅ローンの見積もりは複数の銀行で事前審査・仮申し込みが鉄則:2-3.事前審査では、個人信用情報が住宅ローン審査という関門の「鍵」になる」をご覧ください。
住宅ローンの審査において、信用情報がどれほど重要かを理解していただけるはずです。
1-2-2.他の借入が多い
住宅ローンの申し込み段階で他の借入が多い場合、現在抱えている借入金を返済しながら住宅ローンの返済も行わなくてはならないため、「確実に返済してもらえるかどうか」といった懸念が生じてしまいます。
通常、住宅ローンの融資金額は多額となるため、1ヶ月に返済する金額も多いです。
融資する側の金融機関としては、返済負担が重くなってしまうことによって生じる「貸し倒れ」を絶対に避けなければなりません。
そのため、住宅ローン完済までの長期間に渡って返済が常に円滑に行われる状況でなければ、住宅ローンの審査に通ることはないと考えることができます。
1-2-3.収入に対する返済負担率が高すぎる
住宅ローンの審査項目の1つに「返済負担率」というものがあり、要は、身の丈にあった借入ではないと判断された場合は、職業に関わらず、住宅ローンの審査に通過することはありません。
収入に対する借入金の返済を割合で示した指標であり、住宅ローンを取り扱っているそれぞれの金融機関では、返済負担率の上限を設定しています。
返済負担率を考えて住宅ローンを借入しないと、たとえ審査を通過しても支払いが厳しくなります。
最悪の場合は破産してしまう可能性もあるため、以下のコンテンツを見て、返済負担率の重要さをここでおさえておきましょう。
1-2-4.健康状態に問題がある
民間金融機関が取り扱っている住宅ローンの融資条件には、「団体信用生命保険に加入できる健康状態であること」があります。
保険の対象となる人(被保険者と言います)が死亡した場合や高度障害に陥った場合に、団体信用生命保険の保険金で残っている住宅ローン債務を返済するための生命保険のことを言います。
団体信用生命保険に住宅ローン債務者が加入していることによって、万が一の場合に、保険金と住宅ローンの残債が相殺されることになるため、金融機関側としては、貸し倒れリスクを避けられことに繋がります。
このような理由から、担保を確保するといった意味におきましても、団体信用生命保険に加入できない健康状態の人に対して融資は行わないものとしています。
住宅ローンは、団体信用生命保険に加入できる健康状態が求められます。そのため、以下のコンテンツを確認して、条件をクリアしているかどうかをチェックしておきましょう。
2.公務員だけに適用される金利優遇は存在するのか?
結論から申し上げて、公務員だけに適用される金利優遇というものは明確には存在しません。
ここで「明確には存在しません」とした理由として、住宅ローンを融資するそれぞれの金融機関によって金利優遇の基準を明確に公開していないことがあげられます。
多くの金融機関では、住宅購入のための自己資金にあたる「頭金」が多くあることによって金利優遇を設けているほか、給与振込口座の設定や公共料金の引き落とし口座設定など、金融機関が独自で定めている基準を複数満たしていることによって金利優遇を受けられる場合もあります。
また、現在(平成29年9月)では、建築した住宅や購入した住宅が国などで定めた優良住宅の場合に金利優遇が適用されるケースもあります。
このような特殊事情を考慮しますと、仮に公務員だけに適用される金利優遇というものは明確には存在しないとしても、ケース・バイ・ケースで存在する場合やその時だけ特別に金融機関側が作ることもできると考えても決しておかしなことではありません。
あくまでも融資条件を決定するのは、住宅ローンの申し込みを受けた金融機関側であることを踏まえますと、金利優遇の基準を第三者へあからさまに公開するわけにもいきませんから、結局のところ明確に公開された金利優遇しか私たちは知る術がないと思われます。
3.公務員は住宅ローンをいくらまで借りられるのか
住宅ローンは、言うまでもなく職業などによって借入できる金額が決まっているわけではなく、あくまでも住宅ローンを申し込んだ方の収入や年齢など、さまざまな基本情報や状況が審査されて決定するものになります。
特に、年収は住宅ローンの審査に直接関わってきます。そのため、「住宅ローン審査に関わる年収情報まとめ」を確認して、「あなたの年収では、いくら借入できるのか?」を確認しておくことを強くオススメいたします。
なお、住宅ローン審査と年収について、実際に公務員の方で住宅ローンを検討している方が抱いている疑問と考えられる見解について以下、紹介していきますので、参考にしてみて下さい。
質問内容
住宅ローン3600万円は無謀ですか?? 地方公務員33歳、専業主婦の妻と3歳と0歳の子供二人。
年収680万通常は年間150万ほど貯金できています。現在の家賃は駐車場代込みで6万円くらいです。
新築の建て売り住宅を購入しようと考えており、価格は4100万円。
売り主なので手数料はなし、諸費用が200万円。手元に700万円ほどあるので諸費用を除いた500万円を頭金にして残り3600万円のローンを組もうと思いますが無謀だとおもいますか??
補足
少し補足させていただきます。特殊な公務員なのでローンの審査は通ると思っています。
頭金の額も年齢も違うので単純な比較はできませんが、後輩は金利変動で当初0.95、7千万まで貸しますと銀行から言われたそうです。
たしかに無駄な出費が多く、趣味に月に3万程掛かかっているのですが、引っ越せば1万円位に抑えられる計算+会社から住宅手当てが月8千5百円出ます。
今の家賃6万 + 2万5千円じゃ厳しいでしょうか??
出典:ヤフー知恵袋 住宅ローン3600万円は無謀ですか??より引用
質問に対する見解
「1-2.公務員であっても、住宅ローンの審査に通らないことはあるのか?」で解説した諸々の項目に問題がなければ、住宅ローンの申し込みは何ら問題ないと考えることができそうです。
ただし、1つ気になる点としては、自己資金の活用の仕方です。
手元にある700万円を諸費用200万円と頭金500万円にあててしまうことは、偶発的に発生したリスクに対応する資金がないと推測されることから、これは正しい資金の充て方とは言えません。
あくまでも一例ですが、たとえば平成29年8月にフラット35で住宅ローンを借入するものとし、500万円のうち410万円を頭金に入れ、90万円を手元に残していくイメージで住宅ローンを考えてみます。
- 借入金額:3,690万円(4,100万円-410万円)
- 固定金利:0.82%(住信SBIネット銀行 フラット35 借入割合9割以下 35年
を参考)
- 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし)
- 返済期間:35年
上記の返済条件にあてはめて計算しますと、1ヶ月あたりの返済金額は「101,096円」となります。
「今の家賃6万+2万5千円じゃ厳しいでしょうか??」といった質問から、1ヶ月あたり85,000円までの返済に抑えたいといった希望が読み取れます。
そのため、1ヶ月の返済金額を減らすためには、
- 金利が低い変動金利を選ぶ
- 頭金を増額する
- 両親などからの資金援助を受ける
- 借入金額を減らす
などの対策が求められると考えられます。
ちなみに変動金利0.444%で計算すると、1ヶ月あたりの返済金額は94,876円となることから、1ヶ月あたり85,000円の返済金額に収めるためには借入金額など基本的な部分を再度検討していく必要性があると思われます。
4.公務員にオススメの住宅ローンはあるのか?
「3.公務員は住宅ローンをいくらまで借りられるのか」の解説と重複するところもありますが、基本的に公務員にオススメの住宅ローンといったものもありません。
前項で解説した見解の通り、それぞれの世帯における収入と支出の状況をはじめとした基本情報や希望を考慮してはじめて住宅ローンのシミュレーションや合理的な見解を導き出すことができるため、おすすめの住宅ローンを伝えて終えられる程、住宅ローン選びは簡単なものではないのです。
そのため、少なくとも専門家と呼ばれているFPや住宅ローンアドバイザーといった方の見解をもとに、自分たちに合致した住宅ローンを探したり最後まで余裕を持って返済することができる返済計画を立てたりすることも一策です。
いずれにしましても、住宅ローンの借入は最終的に自己責任となりますので、自分たちが「確実に大丈夫だ」と思える返済金額が望ましいことは確かでしょう。
まとめ
公務員という職業に就いていることによって、一般的に住宅ローンの融資が受けやすいものの、公務員だからといった理由で金利優遇されるといったことはないことが本記事の内容からご理解いただけたと思います。
住宅ローンを検討する上で大切なことは、ヤフー知恵袋の質問に対しての見解のように、自分の置かれている状況と希望を精査した上でシミュレーションを行い、このまま住宅ローンの申し込みを進めても良いか否かを自己判断していくことです。
確実な住宅ローンの返済をしたいと考えている方がすべてであると思いますので、できる限りより詳細な部分まで確認し、「確実に返していける」といった確信を得てから住宅ローンの審査に臨んでいただきたいものです。
本記事では、公務員を例にして解説致しましたが、これは公務員に関わらずすべての職業の方に対して言えることでもあり。
これから住宅購入される多くの方々に対しての参考となっていただければと思っています。