住宅ローンの融資が決定されるまでには、事前審査や仮審査、本審査という審査をすべて突破しなければなりません。
ただ、これらの審査は、金融機関によって基準が異なるだけでなく、その審査基準も公に公開されているものではありません。これが意味することは、それぞれの金融機関は、「自分たちの手の内(審査基準・融資基準)を明かさない」ということです。
つまり、住宅ローンの融資を受けるために私たちは、金融機関が住宅ローンを融資しても良い状況を自ら作り出す必要があるということです。
しかしながら、初めて住宅ローンの申し込みをするあなたからすれば、住宅ローンの審査はとても気になる項目の1つであると思います。
そこでこのページでは、金融機関の「関門(かんもん)」とも言える、事前審査や仮審査などについて幅広く解説していきます。これを学ぶことで、住宅ローンの借入が行いやすくなるだけでなく、あなたにぴったりの融資先を見つけ出すことができるようになるでしょう。
目次
1.そもそも、複数の銀行で事前審査・仮審査を受けても問題ないのか
結論から申し上げると、複数の銀行で事前審査を受けることは問題ありません。融資先を決めるのは、あなたの自由だからです。
たとえば、私たちが何かの物を購入しようと相見積もりをとったり、就職活動をする上で複数の企業に応募したりするイメージと同じです。事前審査に申し込むことは、基本的にこれらと同様であると考えて差し支えありません。
いわゆる「すべり止め」といった事前対策です。具体的には、事前審査を突破することができた複数の銀行から、本当に住宅ローンの申し込みを行いたいところを絞り込んでいく流れとなります。
なお、1つ誤解の無いように解説させていただきますが、仮に複数の銀行の事前審査に落ちたからといって、よく聞く「ブラックリスト」に掲載されるわけではありません。住宅ローンの事前審査に落ちるということは、住宅ローンを融資する銀行側にとって懸念する要素があったからです。
その要素を分析し、改善することができなければ、住宅ローンの審査に通ることはまずもって不可能です。
1-1.複数の銀行で事前審査・仮審査を受ける場合、「同時」でもよいのか
複数の銀行から住宅ローンの事前審査と仮審査を同時に受けることは、考えようによっては可能です。
ただ、決しておすすめできるものではありません。これは、「本命の銀行を決めていない表れであるから」です。
実際のところ、金融機関では住宅ローンの「仮審査」に申し込んだことを把握することができる仕組みとなっています。そのため、複数の銀行に「仮審査」を申し込むことは、時として信用面でマイナスに取られてしまう懸念が生じます。
住宅ローンの「事前審査」と「仮審査」は全くの別物であると。
- 事前審査:複数まとめて行っても問題ありません
- 仮審査:複数まとめて行うことはできる限り避けるようにして下さい
いわゆるネット銀行では、事前審査と仮審査を同時に行うことができるほか、複数の銀行に対して事前審査をまとめて申し込みができる仕組みも構築されています。
住宅ローンの申し込みを低金利のネット銀行から行いたいと考えている方は、一括で行ってもらうことのできる事前審査を利用するのも便利です。
1-2.本審査も複数の銀行で受けても問題ないのか
住宅ローンの審査は、複数の銀行による事前審査が通ったら、実際に仮審査を申し込む銀行を絞り込みます。このとき、仮審査を複数の金融機関から突破してあったとしても、本審査の申し込みは「1つに絞る」ようにして下さい。
一般的に考えますと、住宅ローンの比較検討やすべり止めといった意味も込めて事前審査をすることはあります。
しかし最終的には、あなたが申し込みを行いたい「ベストな銀行」が決められていなければ、どこの銀行でも良いといった考えに捉えられてしまうからです。
これは、申し込みをする側にとっては、それでよいのかもしれませんが、お金を融資する銀行側としては良い印象を持ちません。自分自身の立場に置き換えてみますと、決して気持ちの良いものではないことがご理解できると思います。
最低限のマナーを守れる方は、きっと良い住宅ローンに巡り合えることでしょう。
1-3.審査通過後に断っても問題ないのか
住宅ローンの本審査が無事に通過するということは、マイホームの購入ができることを意味します。
そのため、常識的に考えると、住宅ローンの本審査が通過した後に融資を断るということは通常はありえません。
ただし、住宅ローンの本審査が決定し、実際に融資が実行される前に、債務者(借入をする人)が死亡や高度障害に陥った場合や債務者が病気で入院することになってしまったときは例外です。
偶然な出来事が起こってしまった場合、事情を話して住宅ローンの融資について断るのが無難な選択だといえるでしょう。
1-4.フラット35は複数の銀行申し込みができるのか
フラット35は、住宅ローンの返済期間中、金利がずっと一定の住宅ローンになります。
フラット35は、「住宅金融支援機構が金融機関と提携しているもの」と、「金融機関独自のフラット35」の2つに大きくわかれます。
フラット35と聞くとすべて同じものであると誤解をされている方がとても多いのですが、厳密にいえば、違うものである点に注意が必要です。
なお、フラット35は、複数の銀行で申し込みができます。
2.複数の銀行で事前審査・仮審査を受ける前に知っておくべき4つの注意点
ここからは、複数の銀行で事前審査や仮審査を受ける前に知っておくべき4つの注意点について詳しく解説していきます。特に3つ目と4つ目の項目は、よく読んでいただくことをおすすめします。
2-1.事前審査にはどれだけの時間がかかるのか
住宅ローンの事前審査は、銀行などによって審査にかかる日数はまちまちです。参考までに、早いところですと「当日中」、遅いところで「3日から1週間程度」といったところです。
こちらは余談ですが、事前審査を突破すると仮審査、本審査といった流れにステップアップしていきます。その際、本人確認書類や収入確認書類、不動産の確認書類など必要書類をあらかじめ準備してそれぞれの審査を受ける流れとなります。
ステップアップした審査の結果が出るまでの期間としましては、早いところです「1週間から3週間の間」、遅いところです「1ヶ月程度」かかります。
2-2.審査結果には期限があり、その間に申し込み、あるいはキャンセルを決めなければいけない
住宅ローンの審査結果が良い方向に出たとしても、無期限で有効というわけにはいきません。多くの金融機関では、審査の決定から次のステップアップまでの期限を「60日から90日程度」設けています。
いわゆる「熟慮(じゃくりょ)期間中」に、どのような選択をするのか意思決定をする必要があります。仮審査が決定した後の熟慮期間の場合は、本命の銀行を1社に絞って本審査に備えていきましょう。
仮に本審査が決定した場合は、他の銀行などに対してキャンセルの連絡を忘れずに入れるようにしましょう。
2-3.事前審査では、個人信用情報が住宅ローン審査という関門の「鍵」になる
住宅ローンの事前審査で確認される項目の1つに、個人信用情報があります。個人信用情報とは、住宅ローンを申し込んだ人の「債務状況」や「返済状況」、「金融事故情報」などといった信用情報のことをいいます。
単刀直入に申し上げて、個人信用情報に「金融事故情報」が掲載されている場合は、住宅ローンの融資は通りません。金融事故情報の一例としては、「任意整理」「個人再生」「自己破産」「代位弁済」「2ヶ月から3ヶ月を過ぎた代金の支払いやローン返済の延滞」などが、おもなものとしてあげられます。
金融事故情報を含む個人信用情報は、信用情報機関という組織が管理しています。おもに以下の3つの組織があります。
- 株式会社CIC
- 日本信用情報機構(JICC)
- 全国銀行個人信用情報センター(全銀協)
住宅ローンの申し込みを受けた銀行などは、前述した信用情報機関に対して住宅ローン申込者の個人信用情報を取り寄せます。そして、「債務状況」「返済状況」「金融事故情報」といった信用情報に問題がないか精査し確認します。
個人信用情報に問題がなければ、たとえば、次に解説する「返済負担率」などについて確認する流れになります。(すべての銀行に共通しているわけではありません)
このように、住宅ローンの事前審査では、個人信用情報が住宅ローン審査という関門の「鍵」です。個人信用情報という名の「鍵」が、金融事故などが原因で壊れていた場合、住宅ローン審査という門を開くことは決してできないことに繋がる訳です。
もし、現段階で住宅ローンに通るかどうか心配な場合、以下のコンテンツを読み進めておくことをおすすめします。
2-4.事前審査では、返済負担率が、住宅ローン審査の合否を左右する
個人信用情報の問題を突破したら、次は、「返済負担率」の問題をクリアしなければなりません。返済負担率とは、年間の返済額が年収に占める割合のことをいいます。
たとえば、年収が400万円で年間の返済が120万円だった場合、返済負担率は30%(120万円 ÷ 400万円) × 100%になります。
住宅ローンを融資する銀行側としては、貸したお金がしっかりと返済されることを最優先で求めています。そのためには、住宅ローンの返済が、債務者にとって大きな負担になっていないかどうかをしっかりと精査し確認しなければなりません。
具体的には、信用情報機関から取り寄せた個人信用情報から債務状況をまずは確認していきます。これを調べることによって、現在いくらの債務を抱えている状態で住宅ローンの申し込みをしているのか、把握することができてしまうのです。
そして、源泉徴収票や確定申告書から年収や所得といった収入の状況が確認できるため、これら2つの情報があれば「返済負担率」は、簡単に導き出すことができる訳です。
返済負担率は、これから抱える住宅ローンの年間返済金額も現在抱えている債務に加算して計算されることになります。そのため、収入に対して余裕のある返済負担率がはじき出されなければ、事前審査の時点で振るい落とされてしまうことも決して否めないでしょう。
つまり、住宅ローンの事前審査前に余裕を持って臨まなければ、まず審査を通過できないということです。
そのため、心当たりがある場合、現在抱えている債務を完済したり、両親や祖父母などから資金援助を受ける体制を整えたりするのを最優先に考える必要があります。
そして、現在抱えている債務の完済ができる目途を合理的に立てておく対策をしておくことで、住宅ローン審査の合否を左右することにもつながるのです。住宅ローンにおける返済負担率は重要であるため、現段階で理解できていない場合、以下のコンテンツもあわせ読みしておくようにしましょう。
3.複数の銀行で事前審査・仮審査を行う3つのメリット
最後に、複数の銀行で事前審査や仮審査を行う3つのメリットについてそれぞれ解説していきます。「住宅ローンの直接申し込み」、あるいは「インターネット申し込み」のどちらを選ぶのかについても、あわせて思い描きながら読み進めていただければと思います。
3-1.納得のいく金利・利息の商品を自分自身で選択できるようになる
複数の銀行で事前審査や仮審査を行う1つ目のメリットとして、納得のいく金利・利息の商品を自分自身で選択できるようになることがあげられます。
特に、インターネットを利用したネット銀行から住宅ローンの融資を検討されている方であれば、簡単な必要事項を入力するだけで、一括で融資可能な金融機関がアップされ融資条件も確認できます。そのため、とても便利です。
銀行などへ直接行って申し込む場合は、都度、足を運んで住宅ローンの説明を受けながら担当者の事前確認などを受ける流れとなります。
たとえば、担当者に不安や不満がある場合は、担当者を変えてもらうことや支店を変更して相談するなどの対策も必要でしょう。あくまでもこれは、「その銀行の住宅ローンを希望している」という前提での対応方法になります。
3-2.住宅ローンの事前審査から融資実行までの時間を短縮できる
複数の銀行で事前審査や仮審査を行う2つ目のメリットとして、住宅ローンの事前審査から融資実行までの時間を短縮できることがあげられます。
いわゆる「すべり止め」は、再度、銀行と住宅ローンの内容を調べて申し込むといった時間と労力を考えますと、極めて効率的です。ポイントは、あくまでも下調べをした上でいくつか候補を絞って行うところにあります。
あまり多すぎる場合は、かえって逆効果になることを肝に銘じて、程々に意識するように心掛けましょう。
3-3.住宅ローンの審査基準が金融機関によって違うため選べる対象が広がる
複数の銀行で事前審査や仮審査を行う3つ目のメリットとして、住宅ローンの審査基準が金融機関によって違うため、選べる対象が広がることがあげられます。
たとえば、複数の銀行に住宅ローンの事前審査を申し込んですべて突破した場合は何も問題がありません。
ただ、一部の銀行のみ事前審査が突破したり、すべての銀行の事前審査に突破できなかったりした場合などは、それぞれによって今後の対応が変わってきます。
事前審査の基準は、金融機関によって異なります。そのため、複数の銀行に住宅ローンの事前審査を申し込むということは、結果的に前項で解説した「すべり止め」につながる効果が期待できるのです。
複数の銀行で事前・仮審査を受ける際のポイント
複数の銀行で事前・仮審査を受ける際のポイントを幅広く紹介、解説させていただきました。住宅ローンの関門である「事前審査」と「仮審査」を複数の金融機関から突破する知恵は身につけることができたでしょうか。
改めて本記事で紹介、解説した主な要点についてまとめます。
- 複数の銀行で事前審査の申し込みは、積極的に活用する
- 複数の銀行で仮審査の申し込みは、できる限り厳選して1社に絞る
- 住宅ローンの事前審査では、個人信用情報が突破の鍵になる
- 住宅ローンの事前審査では、返済負担率も突破に左右する
- 住宅ローンの審査基準は、金融機関によって違うため、すべてが融資不可とは限らない
本記事の内容を十分に活かしていただき、住宅ローンの審査対策としてお役立ていただければ幸いです。
気になった銀行は積極的に仮審査申し込みをしてみよう
このページで解説させていただいた通り、住宅ローンは複数の銀行に申し込んでも問題はありません。
「事前審査」「仮審査」という制度を有効活用して、少しでも気になる銀行には積極的に申し込んでいきましょう。
- 審査に落ちたから……
- あっちの銀行も気になっている……
と思っても、毎回ゼロから書類を用意して、その都度審査の結果を数週間も待っていては非効率過ぎる上に、契約に間に合わない可能性も出てきます。
担当者がつくので、金利はもちろん、その他補償内容も直接聞けるようになるため、複数の銀行の特徴を明確にして住宅ローンを決めていきましょう。
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