自営業の住宅ローン審査と所得や売上、収入、年収の関係性を解説

自営業の場合、住宅ローン審査は、会社員や公務員と比べて厳しい審査になることが多いとよく言われますが、これは正にその通りです。

このような取り扱いになる一番の理由は、「収入の安定性」があげられ、自営業の場合、毎年の収入の見通しが未確定であり、時には、赤字経営になるリスクや健康上の問題による債務の返済リスクも付きまとってしまうからです。

しかし、自営業であったとしても、住宅ローン審査における大切なポイントさえ押さえていれば、心配や不安を抱える必要がないことも確かです。

そこで本記事では、自営業の方が住宅ローン審査に通過するための年収におけるポイントについてわかりやすく解説を進めていきます。

1. 自営業が住宅ローン審査の鍵は「借りたい金額が収入に見合っているか」

はじめに、住宅ローン審査に通過するための大前提を解説しておきたいと思いますが、自営業などの職業を問わず、住宅ローン審査が通るかどうかは、「融資希望金額が、収入に見合っている必要」があります。

そのため、年収が200万円であろうと年収が1000万円であろうと融資希望金額が収入に見合っていなければ、住宅ローンの審査に通過することはありません。

そのため、以下のような質問は本質から大きく外れているため、注意が必要です。

  • 自営業で年収100万ですが、住宅ローン審査に通りますか?
  • 自営業で年収200万ですが、住宅ローン審査に通りますか?
  • 自営業で年収300万ですが、住宅ローン審査に通りますか?
  • 自営業で年収400万ですが、住宅ローン審査に通りますか?
  • 自営業で年収500万ですが、住宅ローン審査に通りますか?
  • 自営業で年収600万ですが、住宅ローン審査に通りますか?

住宅ローンは、年収で判断されるのではなく、「問題なく返せるかどうか」です。そのため、売上で心配をするのではなく、「あなたが借りたい金額が収入に見合っているかどうか?」を確認するようにしましょう。

2.住宅ローン審査における自営業の年収(収入)は売上ではなく所得

本記事の最重要ポイントになりますが、自営業の方が、住宅ローン審査で年収を確認される場合、「売上金額」ではなく「所得金額」で、融資の判断がされることになります。

後程、詳細な解説を加えさせていただきますが、自営業の方が住宅ローン審査で見られる1年間の年収とは、以下、確定申告書イメージ図の⑨で囲われた部分になります。

確定申告書

所得金額とは、自営業の方にとってみますと「利益=儲け」にあたり、住宅ローンの返済資金は、事業で得た利益から生じることを踏まえますと当然の融資判断であることは間違いありません。

2-1.住宅ローン審査で判断される自営業の正確な年収確認方法とは

前項では、確定申告書のイメージ図を下に、自営業の方が住宅ローン審査で見られる年収とは「所得金額」である旨を解説しました。

しかし、住宅ローン審査で判断される自営業の正確な年収といった意味で考えた時、実のところ、前項で解説した所得金額は正確な年収金額にはあたりません。

具体的に住宅ローン審査で判断される自営業の正確な年収確認方法は、以下の通りです。

出典:国税庁・平成29年分・青色申告決算書(一般用)の書き方より引用

出典:国税庁・平成29年分・青色申告決算書(一般用)の書き方より引用

住宅ローン審査で判断される自営業の正確な年収とは、赤枠で囲っている「差引金額」にあたり、先に解説した確定申告書の所得金額とは、専従者給与や青色申告特別控除額などを差し引いた所得金額(上記イメージ図では、3,452,636円)のことを指します。

なお、上記損益計算書では、減価償却費が1,452,684円計上されていることも確認でき、この金額は、住宅ローン審査時に加算して判断されることになるため、この方の場合ですと、1年間の所得金額は、6,765,000円(5,312,316円+1,452,684円)として判断されることになります。

ちなみに、「利子割引料」があるということは、借入金があることを意味し、この借入金の内容が事業の設備投資にかかるものである場合は、返済元金を差引金額から控除するなどの措置がなされますので、6,765,000円として見られるといった保証は定かではありません。

2-1-1.補足:なぜ、複雑な戻入計算をする必要があるのか

自営業の場合、先に解説したような複雑な戻入計算をする必要がある理由として「現金支出が伴っているか、いないか?」が大きなポイントになるためです。

住宅ローンの返済は、毎月指定口座から決められた日に引き落としがかかることになりますが、これは「現金支出が伴っている」ことを意味し、その返済原資は、「利益=所得」です。

ただし、所得金額を減少させる効果がある「減価償却費」「青色申告特別控除額」は、「現金支出が伴わない」ことから、これらの金額を所得金額へ加算しなければ、事業で得た本来の余裕資金が計算されないことになるわけです。

また、自営業の場合、家族に対して給料を支払っている場合も考えられ、いわゆる「専従者給与」は、現金支出が伴っている場合であったとしても、同一世帯内で受け取るものであるといった意味合いから、減価償却費や青色申告特別控除額と同様に、所得金額へ加算する対応をします。

このような複雑な戻入計算がなされることによって、自営業の方の収入をしっかりと把握し、その上で住宅ローン審査を適正に行っているのが通常ですが、融資担当者のスキルや経験年数が浅い担当者が事前審査に対応した場合には、この辺をしっかりと加味されないことがあるのも現状なのです。

3.自営業の住宅ローン審査には「所得の高さ」だけでなく「返済比率」と「安定性」も大切

一般に、会社員や公務員といった給料を貰っている方の場合ですと年収によって収入判断されますが、自営業の場合は、これまでの解説の通り「所得金額」で判断されることになるため、基準が異なります。

また、職業を問わず、住宅ローンの審査では所得の高さに加えて返済比率と事業の安定性も大切であり、事業の安定性につきましては、概ね、直近3年間の黒字決算であれば問題ないでしょう。

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3-1.住宅ローンを提供する金融機関は、自営業者の所得をどう考える?

住宅ローンを提供する金融機関によって、自営業者の所得の考え方が異なり、通常、「事業3期分で1番低い所得で判断する場合」と「事業3期分を合算して平均した金額で判断する場合」という2つのパターンに分かれる傾向があります。

とはいえ、どちらの基準で住宅ローンの審査が判断されるかにつきましては、明示されておりませんので、どちらの審査であったとしても、問題なく対応してもらえるような状況を作り出していることが大切です。

また、自営業の場合、安定して黒字経営を確保できていることに加え、流行に左右される不安定な業種ではないかなども審査に問われることもあります。

仮に、過去3年間を通じて赤字の年があった場合であったとしても、その赤字の原因が特殊な事情がある場合や赤字の年を除いて審査を加味した時に黒字で、かつ、直近も黒字経営であるということであれば、前向きに検討してもらえる可能性は否定することはできないでしょう。

あくまでも、住宅ローンを申し込みした金融機関の判断になりますので、この辺は、不透明な事項であることは確かですが、赤字経営の年があったからといって、必ずしも住宅ローン審査にマイナスの影響を与えてしまうとは限らない点も知っておいて損はないと考えることができます。

4.自営業で住宅ローン審査に通るには、「フラット35」を利用するべき

自営業で住宅ローンの審査に通るためには、これまで解説した所得が大きく関係することは確かですが、民間金融機関が取り扱っている住宅ローンに比べて、住宅金融支援機構が取り扱っているフラット35の方が、審査に通りやすい住宅ローンであることも確かです。

フラット35は、長期固定金利の住宅ローンで、金利が低い変動金利はありませんが、より確実に住宅ローンの融資を受けたいと考えている自営業の方や所得が低くて民間金融機関の住宅ローン審査に通過できなかったという自営業の方にとってみると利用しやすい住宅ローンであるといえます。

4-1.自営業が、フラット35で店舗付住宅を購入する際の注意点

自営業と単に言っても様々な業種が存在し、中には、自宅兼店舗や自宅兼事務所を購入したいと希望されている方も大勢おられると推測されます。

こちらは参考情報となりますが、仮に、自営業の方でフラット35を利用して店舗付住宅を購入する際には、あらかじめ気を付けておかなければならない注意点がありますので、以下、フラット35のサイトから引用して紹介、解説しておきます。

Q.一部分を店舗や事務所として利用するような住宅(内部で行き来できるもの)は融資の対象になりますか。

A.次の1から4までのすべての条件にあてはまる場合は、融資の対象となります。ただし、融資の対象は住宅部分(店舗や事務所の部分は除く。)の建設費または購入価額以内に限ります。

1. 住宅部分の床面積が全体の1/2以上であること
2. 店舗・事務所は申込本人または同居者が生計を営むために自己使用するもの(賃貸するものは除く。)であること
3. 「住宅部分」と「店舗や事務所部分」との間が壁、建具などで区画されており、原則として相互に行き来できる建て方であること
4. 「住宅部分」と「店舗や事務所部分」を一つの建物として登記(一体登記)できること

出典:フラット35・ご利用条件について・Q.一部分を店舗や事務所として利用するような住宅(内部で行き来できるもの)は融資の対象になりますかより引用

たとえば、飲食業や理美容業、事務所といった店舗や事務所を構えて自営業を行っている方で、自宅兼店舗や自宅兼事務所をフラット35で購入する場合、原則として「店舗や事務所の部分は融資の対象外」となっていることが確認できます。

こちらは、フラット35を取り扱っている金融機関や担当者と話をした上で判断されることになるため、ケース・バイ・ケースで取り扱いが変化することも考えられますが、自宅兼店舗や自宅兼事務所をフラット35で購入する場合は、思ったような借入ができない可能性もありますので注意が必要です。

4-2.自営業が、店舗付住宅を購入する際における住宅ローン審査の注意点

住宅ローンの審査項目の1つに「担保価値」という審査項目があるのですが、自営業の方が、店舗付住宅を購入した場合の担保価値は、基本的に処分性にやや難があるため、低く見積もられると考えられます。

この理由として、世の中の大部分の方は、会社員などのように企業へ勤務する方が多く、店舗付住宅を購入してリフォームすると仮定した場合、大幅な改装費用も増してしまうことも考えられ、併せて、そのような物件を好んで購入するといった需要があまりないと考えられるためです。

つまり、店舗付住宅というものは、自営業などのように事業を営んでいる方を前提としている建物であるため、一般的な住宅とは仕様が異なることから、広く多くの方に対する需要を満たせている物件ではないため、担保価値が下がってしまうと考えられるわけです。

5.自営業の所得金額と住宅ローン審査に通過する借入金額に基準はありません

住宅ローンの審査とは、申込者の年収や所得はもちろん、様々な審査項目があり、それらの審査項目を総合的に判断して決定されるものになります。

そのため、たとえば、自営業の所得金額と住宅ローン審査に通過する借入金額に基準といったものは存在せず、以下のような情報に対してまったくの信憑性はありませんので注意が必要です。

  • 自営業・年収100万円の場合、新築物件は購入不可。中古住宅なら可能性あり
  • 自営業・年収200万円も、購入できるのは中古住宅がメイン
  • 自営業で年収300万円の場合、頭金を用意すれば地方の一戸建てを買える可能性あり
  • 自営業・年収400万円は新築物件を検討できるライン。◯万円の住宅なら買える可能性あり
  • 年収500万円あれば、自営業でも◯〜◯万円の新築物件を購入可能
  • 自営業で年収600万円の場合、頭金を用意して余裕のある返済を

インターネットサイトには、正しい情報や誤っている情報が混在しているため、時としてユーザーが不利益を被る可能性が否めませんが、先に申し上げましたように、年収や所得のみで購入できる目安の住宅は判断することができませんので、くれぐれもそのような情報に惑わされないような注意が必要です。

まとめ

本記事では、自営業の方が住宅ローン審査に通過するための年収におけるポイントについてわかりやすく解説を進めさせていただきました。

本記事の要点について、箇条書きで以下へまとめます

  • 住宅ローン審査における自営業の収入は、青色申告損益計算書の「差引金額」で判断される
  • 減価償却費がある場合は、差引金額に加算される
  • 利子割引料が、事業における設備投資である場合は、返済元金が差引金額から差し引かれる
  • 自営業の所得金額と住宅ローン審査に通過する借入金額に基準はない
  • 自宅兼店舗や自宅兼事務所を購入する場合は、細かい注意点がある

自営業の場合は、会社員や公務員とは異なり、複雑な引き直し計算があるため、具体的にどのようになるのかわからない方や希望借入金額とこれまでの申告書の内容から住宅ローンが借入可能なのかどうかを知るためには、FPなどの専門家へ一度詳しく相談されてみることをおすすめ致します。