自営業の方が住宅ローン審査を受ける場合、会社員や公務員といった毎月の給料を貰っている方に比べて住宅ローン審査が比較的厳しめになるといわれます。
税金滞納についても、その1つであり、一般に、会社員や公務員の方は、毎月の給料から所得税や住民税が天引きされることになります。
そのため、税金を未納しているということはまずもって考えられません。
しかし、自営業の場合は、ご自身で納付期限までにこれらの税金を納付する形式となっています。
そのため、未納の税金が発生し、結果として税金滞納している場合も考えられます。
このような場合に、「住宅ローンの審査にどのような影響を与えるのか?」が気になりますよね。
結論としては、良い方向には働きませんが、完納していれば問題はありません。
本記事では、自営業が税金滞納している場合における住宅ローン審査の影響について、わかりやすく解説を進めていきます。
目次
1.自営業の方が、税金滞納している状態で住宅ローン審査を受けた場合の取り扱い
自営業の方が、税金滞納している状態で住宅ローン審査を受けた場合の取り扱いは、金融機関によって対応が分かれるところではあります。
通常、住宅ローンの審査に通りにくいと考えておく必要があります。
ただし、税金滞納があったとしても、住宅ローンの審査に通らないのではありません。
住宅ローンの審査に通りにくいとした理由には、未納の税金が少額であり納められる資力があること、偶発的な特殊事情によって未納となっていることなども考えられるためです。
住宅ローンの審査は、様々な審査項目を総合的に判断するものです。
そのため、税金滞納しているといった理由だけでは審査不可となるのではなく、申込者個人とのヒアリングやその他の事情を勘案して決定されるべきものであることを知っておく必要があります。
ただし、税金滞納は、最悪の場合、財産の差し押さえやその他マイナス影響に働くことは明らかであることを踏まえますと、住宅ローンの審査に極めて悪影響を及ぼすことになるのは肝に銘じておく必要があるでしょう。
1-1.自営業の方が、税金滞納しやすい種類
単に税金と言っても、税金は、国税と地方税に分けられるほか、実際には様々な種類があります。
ここでは、参考までに自営業の方が、税金滞納しやすい種類について以下、箇条書きで紹介しておきます。住宅ローンの申し込み前に完納していることが望ましいことを再度確認して、対策を講じるようにして下さい。
- 所得税(自営業の方が、事業で得た利益に対して課される国の税金)
- 消費税(事業の課税売上高が1000万円を超えている場合に課される税金)
- 法人税(会社経営している場合、会社の利益に対して課される税金)
- 住民税(自営業の方が、事業で得た利益に対して課される地方自治体の税金)
- 国民健康保険税(多くの地方自治体では、保険料ではなく税金としての性質を持っています)
- 自動車税(所有している車両に対して課される税金)
上記の税金滞納をしている場合は、民間金融機関の住宅ローンや住宅金融支援機構が取り扱っているフラット35に関わらず、住宅ローン審査が極めて通りにくくなりますのでご注意下さい。
2.税金滞納は、個人信用情報には載らないが、提出が必要な「納税証明書」からバレる
自営業の方が、ご自身が抱えている税金滞納について、住宅ローンを申し込みした金融機関に伝えなかったとしても、申し込みを受けた金融機関にはバレてしまいます。
この理由として、住宅ローンの事前審査(仮審査)が通過した後の本審査において、住宅ローン申込者の個人属性を詳しく確認するために、税務署が発行する「納税証明書」の提出が求められるためです。
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出典:国税庁・納税証明書の様式より引用
納税証明書とは、確定申告書等を提出した場合の納税額、所得金額又は未納の税額がないことを証明するための書類のことをいい、税務署が発行する公的な書類です。
この納税証明書は、「納税証明書その1」から「納税証明書その4」までの4つに分かれており、4つの納税証明書がそれぞれ証明している内容は以下の通りです。
- 納税証明書(その1)・・・納付すべき税額、納付した税額及び未納税額等の証明
- 納税証明書(その2)・・・所得金額の証明(個人は申告所得税又は申告所得税及復興特別所得税に係る所得金額、法人は法人税に係る所得金額です。)
- 納税証明書(その3)・・・未納の税額がないことの証明(税目を指定した「その3の2」(申告所得税及復興特別所得税と消費税及地方消費税)や「その3の3」(法人税と消費税及地方消費税)の証明もあります。)
- 納税証明書(その4)・・・証明を受けようとする期間に、滞納処分を受けたことがないことの証明
出典:国税庁・[手続名]納税証明書の交付請求手続より引用
税金滞納があることを確認するための納税証明書は、「納税証明書(その1)」および「納税証明書(その3)」であることが確認できます。
これらの納税証明書を提出することによって、納税証明書が発行されるまでの税金滞納の有無がわかることになります。
また、「納税証明書(その4)」は、証明を受けようとする期間に、税金の滞納処分を受けたことがないことを税務署が証明する書類となります。
そのため、現在は税金滞納が無くても、過去に税金滞納があったことについてどのように融資判断するのかは、金融機関や他の審査項目との判断によってケース・バイ・ケースで分かれるポイントとも言えそうです。
こちらにつきましては、次項の「3.自営業の方が、税金滞納しても「未納」がなければ、住宅ローン審査に通る可能性はあるのか?」で、多くの金融機関が求めている住宅ローンの審査提出書類から考えられることを解説します。
3.自営業の方が、税金滞納しても「未納」がなければ、住宅ローン審査に通る可能性はあるのか?
まず、結論から申し上げると、自営業の方が、税金滞納しても「未納」がなければ、住宅ローン審査に通る可能性はあります。
この理由は、住宅ローン審査において多くの金融機関では、納税証明書の提出について、「納税証明書その1」「納税証明書その2」の2つを求めている場合が多く、「納税証明書その4」の提出を求めていない理由があるためです。
仮に、住宅ローンの申し込みを受けた金融機関が、過去の税金滞納履歴を住宅ローン審査に重視するのであれば、「納税証明書(その4)」の提出を求めるはずです。
つまり、多くの金融機関が「納税証明書(その4)」の提出を求めていないということは、住宅ローンの本審査において過去に税金の滞納があったことを重視しているのではなく、住宅ローンの申し込み時点で、税金滞納があるのか、ないのかを重視していると考えることができます。
このような理由から、自営業の方が、税金滞納しても「未納」がなければ、「住宅ローン審査に通る可能性はあるのか?」といった疑問に対する答えを以下にまとめます。
- 短期間の税金滞納であったとしても納付済みであれば、住宅ローン審査に通る可能性は高い
- 過去に税金滞納があっても納付がすべて完了しているならば、住宅ローン審査に通る可能性は高い
あくまでも「可能性は高い」とした理由には、住宅ローン審査をする金融機関や住宅ローン申込者の個人属性はすべて異なります。
そのため、一概に自営業の方が、過去に税金滞納があっても住宅ローン審査に通ると言い切ってしまうのは正確な情報とは言えないと感じているためです。
住宅ローンの審査において、申し込みを受けた金融機関は、より厳密な住宅ローン審査を行うために追加で必要書類の提出を求めることがあり、仮に、「納税証明書(その4)」の提出を求めた場合は、過去の税金滞納も重視していると考えることができます。
4.自営業の方が、税金をクレジットカード払いで行う場合の重要な注意点
住宅ローンの審査において、住宅ローン申込者や連帯債務者の個人信用情報と呼ばれる信用情報に著しい問題がある場合や大きな懸念がある場合は、残念ながらどこの金融機関においても住宅ローン審査に通ることはありません。
たとえば、現在では、税金の納付をご自身が保有しているクレジットカードから納付することも可能となっております。
この場合、クレジットカード会社が一旦、納めるべき税金を立て替え払いし、その立て替えられたお金をクレジットカード代金の引き落とし日にお金が引き落とされて決済される仕組みになっています。
そのため、仮に、クレジットカード代金が引き落とし日に無事決済されなかった場合は、税務署に対して納めるべき税金は納められているものの、クレジットカード会社との信用情報に問題が発生することになります。
この結果、住宅ローンの申し込みを受けた金融機関が必ず確認する個人信用情報には、「クレジットカードを利用した代金がしっかりと決済されなかった」という履歴が残ってしまいます。
その結果、住宅ローン審査においてマイナスの影響を与えてしまうことに繋がります。
基本的に、税金の納付や税金滞納履歴は個人信用情報に載らないものの、税金の納付をクレジットカード払いにして、かつ、クレジットカード代金が決済されなかった場合には、個人信用情報に履歴が残るため注意が必要です。
個人信用情報の履歴は、住宅ローンの融資がなされる、融資がなされないといった結果に直接大きな影響を及ぼすことになりますので、クレジットカード払いで支払うべき代金を滞納すると、住宅ローンの審査落ちは、ほぼ確実と言っても過言ではないでしょう。
5.住宅ローンの申し込みは、無理なく返済できる経済状態になってから行うのが基本
「1-1.自営業の方が、税金滞納しやすい種類」で紹介させていただきましたが、自営業の方が納めるべき税金の中でも、特に、消費税や国民健康保険税は、自営業の方にとって大きな負担となり得る税金であると考えられます。
消費税は、自営業の所得金額に関係することなく、課税売上高が1,000万円を超えていることによって、納税義務が発生するものになる国民健康保険税は、所得金額や家族構成によって、その負担が極めて大きなものとなります。
課税売上高が1000万円を超えていない自営業の方は、消費税を納める義務が発生しない免税事業者となります。
しかし、国民健康保険税は、少なくとも大きな負担となることが考えられ、住宅ローンの申し込みを行う前に、毎月の返済について余裕をもって返済できる状態になってから住宅ローンを利用すべきことはたしかです。
具体的には、以下の項目は概算でも結構ですので最低限確認しておきたいところです。
- 毎月の住宅ローン返済
- 毎年納付する固定資産税や都市計画税
- 毎年納付する国民健康保険税
- 国民年金保険料の納付金額
これらを考慮した結果、厳しいということであれば、少なくとも経済的に無理のある状態とも言えます。
そのため、住宅ローンの申し込みは、これらを無理なく支払える経済状態になってから行うのが良いでしょう。
まとめ
自営業で税金を滞納している場合、住宅ローン審査において悪影響を与えることになるのはたしかです。
しかしながら、住宅ローン審査までに税金滞納していたものをすべて完納していれば問題がないと考えられます。
そのため、少なくとも住宅ローンの本審査時に提出が求められる納税証明書に、未納の税額が載っていない納税証明書を提出できるような対策を取っておく必要があります。
自営業は、会社員や公務員と異なり、税金をご自身で納付しなければならない特徴があります。
そのため、日々のお金の管理や計画性が問われることになり、住宅ローンの返済において、滞りない返済を求めている金融機関にとって、税金滞納の有無は非常に重視されるべき問題であるとも考えられます。
住宅ローンの返済計画を考える上でも、税金の納付と住宅ローンの返済は、切っても切り離すことができない問題になって来ます。
そのため、住宅ローンの申し込みをする以前に、この辺について、しっかりと余裕の持ったお金の管理ができるのかどうかについても詳細に確認しておきたいものです。
自営業・個人事業主の方はフラット35が審査に通りやすくておすすめ
自営業の場合、会社員や公務員に比べて審査が通りづらいです。売上によって収入が変動するため、「不安定」という見方をされるからです。
ただし、フラット35(全期間固定金利)であれば話は別です。
民間金融機関の住宅ローンの場合、多くは「年収400万円以上で、安定した収入がある状態でなければ、そもそも申し込みすらできない」といった縛りがありますが、フラット35では、そのような収入に対する審査基準は一切ないからです。
さらに、通常は3年程度必要な過去の業績も、フラット35であれば、半年や1年の業績さえあれば審査への申し込みが可能です。
そのため、フラット35は自営業・個人事業主の方であっても審査に通りやすく、ほとんどの経営者がこれで住宅ローンを組んでいます。
以下に、自営業・個人事業主の方にお勧めのフラット35ランキングがありますので、参考にしていただけますと幸いです。
