家を買う・建てる際の贈与税の非課税は住宅ローンにいくら影響する?

家を新築で建てる場合や中古で買う際に、住宅ローンを申し込んで買う方がほとんどです。住宅ローンは、長期間に渡って返済しなければならない「借金」にあたりますが、お金を借りるということは、安定した収入や信用を得ることが絶対条件になります。

住宅ローンは、必ず通るものではないからこそ、お金を貸してもらえるための事前対策が必要となる時もあります。この事前対策を実際に行うことは、住宅ローンが通りやすくなる結果に結びつき易くなります。

実際のところ、事前対策には、さまざまな方法があるのですが、本記事ではその中の1つである「贈与」を利用した方法について解説していきます。おそらく、「贈与」と聞くと「自分は使えない」「関係ない」といったイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

しかし、頭ごなしに贈与を否定する前に、本記事を最後まで目通しいただくことで、住宅ローンにおける事前対策の知恵を自然と得られる結果につながることでしょう。

1.家を買う・建てる際に関係する贈与とは

贈与とは、ざっくり解説すると「人から人へお金や物が無償で移ること」をいいます。

家を買う場合や新築の住宅を建てる際に関係する贈与には、「家を買うための資金援助」や「両親や祖父母の名義で買った家や新築で建てた家を無償であげる場合」などが考えられます。

本記事では、家を買ったり建てたりする際に考えられるこの2つの贈与を念頭において、解説を進めていきます。

2.贈与が住宅ローンを通りやすくするための理由

贈与が住宅ローンを通りやすくするための理由としてあげられるのは、「返済負担率」の関係が大きいためです。返済負担率とは、年収に占める年間の借入金返済割合を表しており、数字が低い程、住宅ローンが通りやすくなります。

 

現時点で理解できていない場合、以下の記事をご覧ください。住宅ローンを無理なく返済していくためには、絶対に必要な知識になるため、ここで押さえておきましょう。

住宅ローンの毎月々の返済金額平均と年収に見合う返済負担率とは

2017.02.22

たとえば、住宅ローンを2,500万円、固定金利1.5%、元利均等返済、返済期間35年という条件で融資を受けた場合、1ヶ月の返済金額は「76,546円」になります。

この条件を例に、それぞれの年収に応じた返済負担率の関係を表すと以下の通りになります。

年収年間返済金額返済負担率
300万円918,55230.61%
400万円22.96%
500万円18.37%

返済負担率の計算例は、以下の通りです。

(918,552 ÷ 3,000,000) × 100% ≒ 30.61%

金融機関によって住宅ローンの融資条件が異なりますが、おそらくこの融資条件で申し込んだとしても、年収300万円の方であれば審査に通るのが若干難しくなると予測されます。(単独申し込みの場合)

実際の家計状況を見なければ断定できない部分もありますが、仮に融資が実行されたとしても、返済負担率が30%を超えている場合、月々の生活がかなり窮屈になってしまうことも予測できます。

ここからが、本題となりますが、仮に両親から100万円、祖父母から100万円の資金援助を受けたとして同じように返済負担率を考えてみます。住宅ローンの金額は、2,500万円から200万円を差し引いた2,300万円で済むことになります。

年収年間返済金額返済負担率
300万円845,06428.16%
400万円21.12%
500万円16.90%

200万円の贈与を受けたことによって、1ヶ月の返済金額が「70,422円」となり、贈与を受ける前(76,546円)よりも1ヶ月の返済金額が「6,124円」少なくなりました。

何よりも重要なポイントは、年収300万円の場合、返済負担率が贈与を受けたことによって28.16%と割合が低くなったところにあります。これによって住宅ローンを融資する金融機関側の信用を、以前よりも得られやすくなると考えられます。

このような理由から、こちらの融資条件の場合、年収が300万円であったとしても住宅ローンの審査に通る可能性が高くなることにつながり、贈与が住宅ローンを通りやすくするための理由と言えるわけです。

3.住宅ローンが通りやすくなるための賢い贈与とは

贈与が住宅ローンを通りやすくするための効果が分かったところで、本項では、実際に住宅ローンが通りやすくなるための賢い贈与の方法についていくつか解説していきます。

あらかじめ申し添えておきますが、贈与を利用して住宅ローンの申し込みを考えている方は、できる限り申し込みを行う前にファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーをはじめとした専門家へより詳しい内容を確認してから贈与の実行をすることを強く推奨致します。

3-1.贈与税がかからない範囲で資金援助する

家を買うために、「両親や祖父母から一度に大きな金額の資金援助を、受けられれば何も問題がない」と思ってしまいそうですが、贈与税の関係があることを確実に押さえた上で贈与をしなければなりません。

この贈与税は、原則として「1月1日から12月31日までの1年間」に110万円を超えた贈与を受けた場合、贈与を受けた人が納めなければならない税金になります。

したがいまして、前項の返済負担率の解説で示した例の場合、両親と祖父母からそれぞれ100万円ずつ合計で200万円の贈与を受けていることから、原則として贈与税を納めなければならない義務が発生してしまいます。

実際の対策方法として、住宅ローンを1人の信用で借りる「単独名義」にするのか、夫婦で共に借りる「共有名義」にするのかによって贈与の対策が異なります。

たとえば、自分と配偶者にそれぞれ100万円を贈与する形式であれば、贈与税を納めなくとも200万円というお金を税負担なしで移転することも可能です。

この場合、贈与税の申告をする必要もなく、あらかじめ贈与契約書を作成して資金を援助することで足りるため、手続きが簡単で実行しやすい方法といえます。

3-2.贈与税の非課税制度を活用する

実は、贈与税には「非課税制度」が設けられており、家を買う場合における贈与税の非課税制度に「住宅取得等資金の贈与税の非課税」というものがあります。

まずは、国税庁のホームページから概要を一部引用して紹介します。

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平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります

出典:国税庁・直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税より一部引用

上記の概要の要点を、分かりやすく箇条書きでまとめます。

  • 平成27年1月1日から平成33年12月31日までの期間限定です
  • 血のつながった父母や祖父母などからの贈与である必要があります
  • 自分たちが住む家を買うためのお金である必要があります
  • 新築住宅購入・中古住宅購入・リフォーム費用といった目的である必要があります
  • 非課税の特例を受ける旨を記載した贈与税の申告をするなど、数々の要件をすべて満たしている必要があります

参考:初心者でも理解できる住宅の購入で必ず発生する4つの税金・贈与税

この非課税制度を利用することで、ある程度まとまった金額のお金を一度に資金援助をすることができるメリットが得られます。

ただし、贈与税の申告をするなど、専門家である税理士の協力が必要不可欠です。

当然、税理士に対する報酬が費用として必要になることから、この非課税制度のメリットを十分に受けられるか確認してから実行する必要があるといえます。実際の手続きを取ることはできませんが、ファイナンシャルプランナーに総合的なアドバイスを求める方法も一策です。

3-3.相続時精算課税制度を活用する

相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)とは、親族間の贈与について一律2,500万円までは贈与税がかからず、2,500万円を超えた部分につきましては、一律20%の税率の贈与税がかかるといった仕組みの制度です。

先に解説した「住宅取得等資金の贈与税の非課税」制度には、贈与が非課税になる金額に上限があありました。たとえば、十分な住宅資金を一度に贈与したいと考えている人にとってみますと、適切な方法とはいえない場合もあります。

そのため、贈与税を納めないように対策を施して、さらに多額の住宅取得資金を贈与したい場合、相続時精算課税制度が極めて有効になる場合もあります。

なお、相続時精算課税制度を利用する場合におきましても、住宅取得等資金の贈与税の非課税と同じように、贈与税の申告を申告期限までに税務署へ行わなければなりません。

また、相続時精算課税制度を利用するための要件をすべて満たさなければならないのはいうまでもありません。また、一度、税務署へ届出をした場合、ずっと同制度を続けなければならない重要な注意点もあります。

このような理由から、相続時精算課税制度や住宅取得資金の非課税制度など、贈与の相談は税理士や専門ファイナンシャルプランナーへまずは相談することを強く推奨致します。

4.両親や祖父母から「お金を借りる」方法も効果的

住宅ローンの申し込みにあたり、貯金や頭金が多いことに越したことはありません。両親や祖父母から資金援助を受けられないのであれば、一時的な借入も視野に入れてみると効果的です。

住宅ローンや自動車ローンの返済とは異なり、親族間でのお金の借入で最もメリットが得られる点は、返済の猶予が効くところにあります。

つまり、返済が遅れたとしても、双方の話し合いがまとまっていれば、融通を利かせてもらえることになるため、極めて有効な方法であることは間違いありません。

また、両親や祖父母としては、「子どもが家を買うのに対して協力をしてあげたい」と思いつつも、資金援助をするのは少々難しいと心の中で感じている方もおそらく多いことでしょう。

そのような場合に、資金援助に代えて「住宅取得資金の貸付」にすることで、貸したお金は返ってくるだけでなく、家を買うための協力をしてあげていることにもつながります。

なお、住宅取得資金の貸付を行う際は、たとえ親子であったとしても「契約書を作成」し「双方署名および捺印」し「印紙を貼付し割印する」ことを忘れないようにして下さい。

5.贈与を実行する際の注意点

家を買う際における贈与を実行する際の注意点は、さまざまありますが、ここでは実際に建てた家を贈与で取得した場合の注意点を一例として紹介します。

5-1.不動産の名義変更は、贈与のサインになる場合も

子どもが家を買う場合や新築住宅を新たに建てる場合に考えられる贈与には、「住宅取得資金の援助」や「不動産そのものの贈与」が考えられます。

特に不動産そのものの贈与を行った場合、贈与契約書の作成はもちろんですが、不動産の名義変更を行うために「贈与による所有権移転登記」という手続きを法務局で行います。

この登記手続きを行った後の情報は、法務局だけに留まらず、税務署や市町村の固定資産税課などにもその情報が届くことになります。

つまり、不動産の贈与があった事実をそれぞれの機関が知ることになるわけです。

仮に贈与税がかかるということであれば、贈与税の申告を税務署へ行い贈与税を納めなければなりません。基本的に税務署が把握していなかったということは絶対にあり得ないからこそ、専門家である税理士やファイナンシャルプランナーとの贈与の事前対策が必要になるのです。

5-2.贈与で取得した不動産には「不動産取得税」がかかる

贈与で取得した不動産の情報は、法務局から市町村の固定資産税課へ伝わり、市町村では「不動産取得税」という税金を贈与によって不動産を取得した人に対して課す流れとなります。

不動産取得税とは、その名の通り、不動産を取得した場合に一度だけかかる地方税であり、贈与や不動産業者との売買の場合は、不動産取得税がかかる対象となります。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

不動産取得税の概要から計算方法、軽減税率が分かる9項目

2016.05.04

まとめ

本記事では、両親や祖父母からの資金援助や名義変更を含む贈与に関する内容を解説させていただきました。改めて本記事の要点を以下、箇条書きでまとめます。

  • 贈与は、住宅ローンを通りやすくなるための対策方法として効果的
  • 贈与税がかからない範囲で資金援助する方法は、簡単で効果的
  • 贈与税の非課税制度を活用することで、ある程度まとまったお金を贈与できる
  • 相続時精算課税制度を活用することで、2,500万円まで非課税で贈与ができる
  • 贈与が期待できない時は、両親や祖父母から「お金を借りる」方法も効果的
  • 贈与を実行する際の注意点はさまざま。贈与は、専門家へ必ず相談してから実行しよう

家を買う目的や新築の住宅を建てる目的で贈与を利用する場合、最初に考えなければならないことは、贈与税の計算の仕方を理解することではなく、贈与税がかからない対策を知るところにあります。

状況によって最適な贈与の方法が異なるだけでなく、ケース・バイ・ケースで賢く贈与を使い分ける専門知識が必要となる場合も多々あるのが現実です。

贈与の金額によっても使い分ける必要があることから、くどいようですが、贈与金額の多少に関わらず専門家へ相談するところから始めてみて下さい。